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〜TUES DAY〜  作者: †姫kan†
4/19

手料理

大人の恋愛小説です。

けしてエロくないです。

悠は運転席へ乗り込むと

少し低い音を立てて車のエンジンをかけた。


スピーカーからは、

ゆったりとした洋楽が流れはじめる。


私達の乗った車は

行き先も決まらないまま

ゆっくりと進む。


隣を見れば、運転する悠の姿…


窓のところに肘置きのように右腕を置き

左手でハンドルを操作してる。


横から見ても綺麗な顔立ち。

吸い込まれそうな瞳。

サラサラして柔らかそうな少し茶色い髪の毛。


短髪とロン毛の間くらいで

横の髪が後に流すようにセットされてる。


アイコンの写真より少し伸びてるかな。


IT会社に勤めていて、

こんなに素敵にスーツを着こなす悠は、

世の中の女の人みんなが

理想とするような人だと思う。


そして…物腰柔らかで優しくて……


一言で言ったら、

少女漫画や昔話に出てくる

“王子様”のようだった。


って言い過ぎかな?



「ちょっと真由、聞いてる?」



煙草に火をつけながら、悠が言う。


悠が想像よりも遥かに素敵な人だったから、

興奮しすぎて夢見心地になっていた。



「ご、ごめん。なんだっけ?」



うまく笑いながらごまかした。

はず……



「どこ行こうかって話!

真由全然聞いてないんだもん」



煙草を吸う仕草も様になってて

すごくカッコイイ。



「ごめんね。ちょっとボーっとしてたよ…

どうしよっか…悠に任せるよ」



そう言ったけど、

初めてだし…本当は

どうしたらいいのか、わからない私。


分からないって言えない私は

悠にゆだねる事にした。



「ボーッとって…なんか可愛いな。

とりあえず腹へったよな。

前にLINEで料理得意って言ってたから

真由の手料理食いたい!

って、いきなりすぎる?」



さっきまで、

大人の男性って感じだったのに

突然子供のような笑顔で言い出した。

これがギャップ萌ってやつ?



「うん!じゃあ作ろっか!何か食べたいのある?」



初めての悠とのデート?が

私の手作り料理って……

これって普通?


兎に角、気合い入れて作らなくちゃ!


料理だけはできるから、よかったな…

ちぃちゃい頃から教えてくれてた

ママに感謝!


食べる物を初めから決めていたかのように

悠は即答する。



「オムライスがいい!

俺、オムライス昔っから大好きなんだ。」



無邪気な笑顔で話す悠。

ふと、目が合って二人で笑った。



「じゃあ、オムライスに決定!

そういえばどこで作るの?」


「俺の家はまずい?

でも冷蔵庫の中たいしたのないし、

二人で買い物して」



悠の家に…!?

ど、どうしよう。

色々、急展開。


また緊張しちゃってるよ私…

しかも二人で買い物って、

カップルみたいじゃん。



「ううん、悠の家で大丈夫。

家行って大丈夫なの?

二人で買い物とか、恋人同士みたいだね」



つい、思ったことを口にしちゃった…


買い物くらいで恋人みたいって

変に思われたかな?

私のバカ…


そんな私の思いとは違い。



「大丈夫大丈夫!

一人暮らしだから、散らかってるけど。

周りから見れば、そうだろうな。あはは」



悠の返事は普通だった。



それから私達は24時間やってるスーパーに

向かう事になった。


オムライスの材料を一通り買い、再び車に乗り込むと

そのまま悠の家へ向かった。


車内は今日初めて会った

二人とは思えないくらい話が盛り上がり、

最初のギクシャクした雰囲気はなくなっていた。



え?

こんな所に住んでるの?


ちょっと高級そうな大きいマンションの駐車場に入り

車がゆっくりと止まる。


どうやら、着いたみたい。



「よしっ到着!行くか!」



凄く綺麗なエントランスを通って

エレベーターに乗った。


こんな素敵な所に

悠は一人で住んでるんだ。


私の家からも、そう遠くない場所だった。


部屋に向かう最中も、悠は私を気遣ってくれて



「寒くないか?」



と、優しく声をかけてくれる。


そんな悠の姿にも

いよいよ悠の部屋に着くことにも

胸のドキドキが止まらない。



「うん、大丈夫だよ。

それより荷物、1つ持つよ!」



悠の手には

仕事用であろう黒いビジネスバックと

さっき買い物した袋、大小の2つが持たれてた。


それなのに悠は

気にしなくていいと言って

私には持たせてくれなかった。


11階建てのマンションで

悠の部屋は9階にあった。


エレベーターを降りると、

右に曲がって1つ目のドアの前で

悠は鍵を開け家の扉を開く。



「どうぞ。散らかってるけど上がって」



うわぁー、凄く広い玄関。

物がほとんど置かれてなくて

靴1つすらない。

玄関の左側に大きな鏡の扉の

シューズボックス。

この中に靴がキチンとしまわれてるのが

容易に想像できてしまう。

こんなに玄関が綺麗なのに

部屋が散らかってるわけがない。


うちの家とは大違い。


悠の家に来たはいいが、

初めてだし、凄く綺麗だし

どうしていいかパニックになるよ…。



「お邪魔します」



そう言って、自分の靴を脱ぐ。

ブーツを履いてきた自分に後悔…。

ちょっともたついて時間がかかったのに

悠は嫌な顔ひとつ見せずに

笑顔で待っててくれた。



「遅くてごめんね」



そう言う私に、

さっきの荷物の時のように。



「そんな、気にしなくていいの!」



と言うと、

軽く頭をポンっと撫でた。


常に優しく包み込むような悠に

自然と心を開いてしまう。


玄関をあがって2mくらい廊下を進む。

その途中に扉が3枚あった。

トイレやお風呂、後は寝室かな?

突き当たりの4枚目の扉を開くと

LDKが顔を出す。


やっぱり綺麗じゃん!


黒で統一された家具。

壁の白さが際立っていた。

無駄な物がなくてモデルルームの様。


50インチ位ありそうな大きなテレビと

大きなソファーが目立つ。


ソファの前には焦げ茶色のラグが敷かれて

その上に白いガラステーブル。


家具の中でテーブルだけが白く

それがまたオシャレに見える。


テーブルの上に何冊かの雑誌が置かれてて

1冊は開いたまま置いてあった。


この雑誌だけで散らかってると言うなら

私の部屋なんて物だらけで見せられない。



「凄い綺麗!全然、散らかってないし

ビックリしちゃった」


「何もないだけだろ。

何か飲む?って言ってもコーヒーか

お茶ぐらいしかないけど…」



悠がコップを出しながら、聞いてきた。


私はキッチンが気になって

悠のいるカウンターキッチンに入った。



「お茶がいい!悠、お腹空いてるでしょう?

すぐ作っちゃう!キッチン借りまーす。」


「じゃ、ここ置いとくから飲んで。

おう!頼んだ!真由料理長」



おちゃらけて敬礼をしながら言う悠を

可愛いと思ってしまった。


さっそく私はオムライスを作り始める。


腕まくりして手を洗ってると

その間に、私の脱いだコートを

ハンガーに掛けてくれていた。


買ってきた食材を手早く切って

時短の為に買った

レンチンするだけのご飯を温める。


わからない物があると、

悠にどこにあるのかを聞きながら

調理を進める。


具材を炒め、ケチャップを投入。


知ってる?

オムライスってご飯を入れる前に

ケチャップを入れると上手に出来るんだよ。


最後にご飯を入れてチキンライスが完成する。


悠はテレビを見たり、

たまに気になって

キッチンの様子を見にきた。


リビングとキッチンを何度も行ったり来たり。


そんな悠が可愛らしい…



「誰かがうちで料理してるのなんか

初めてだから、すげぇ新鮮。

なんか、いいな…」



私にとって、

今日は初めてだらけで

でも悠は慣れてるかの様に

全てエスコートしてくれてて。


そんな悠の口から出た[初めて]に

嬉しくなって表情が和らぐ。



「なんだよ~」



その様子を見た悠が、気になって聞いてきた。



「なんでもないよーだ!もうすぐできるよっ!」



悠に理由を言える訳が無い。


少しふてくされながらリビングに戻る。

そういう所がまた可愛い…



「悠!できたよー!!」



そぉ言うと、すぐに悠がキッチンに

飛込んできた。


悠は満面の笑みで



「すっげー!美味そう」


「美味そうじゃなくて、美味いの!なんてっ」



作ってよかったなぁ。

って、素直にそう思う。



「テーブルに持ってって早く食べよっ」



そんな、何気ないやりとりだけど

私はドラマのワンシーンを見ているかのような

錯覚にとらわれた。


なんだか、すっごく幸せな気分。


私と悠は一緒に料理を運んだ。


サラダとオムライスを並べて

悠が箸とスプーンを用意してくれた。



『いただきまーす』


2人で手を合わせて合掌。

悠が先に食べるのを見てた。


不安げに悠の顔を覗くと…



「んっーめー!真由、本当に料理うまいのな」



大胆に口にオムライスをほうばりながら

満足そうに言った。


私はホッと肩をなでおろし



「よかった。。」



本音をポロっともらしてから

オムライスを口に運んだ。

悠はお腹がよっぽどすいていたのか

すぐにペロリとたいらげた。


凄く美味しそうに

食べてくれるから嬉しくて…


自然と顔がニヤけてしまう。



「ごちそうさま!本当にうまかった~。

真由、ありがとな。」



そう言うと悠は、

私の頭を軽くポンっと撫でる。


そんな悠の行動に胸が高鳴った。


悠はよく頭を撫でる。

照れくさいけど、なんだか嬉しい。


でも、なぜだろう…

心は満たされて幸せなのに…

この時間に終わりがきてしまうことに

心の痛みを感じる…


今まで味わった事のない不思議な感覚に

少し戸惑いを感じた。


悠が食べ終わって少しして私も食べ終えた。



一緒に食器をさげて、悠はリビングへ。

私はすぐに洗い物をした。


悠はそのままでいいって言ってくれたんだけど

買い物の時、悠は私の出したお金を受け取らず

ご馳走になったからと私の意見を通した。


洗い物をしていると、

悠がテレビを見ながら話かけてきた。



「それ終わったら、酒でも飲まない?

真由、お酒飲める?」



お酒か…

あまり飲めないけど、ちょっとだけなら。



「うん、飲もう!あんまり強くないけど」



返事をして

まだ途中だった洗い物をさっさと済ませた。


洗い物OK!!


キッチンを後に、悠がいるリビングに行った。



「終わったよ~!!」


「ありがとう。洗い物までしてもらって悪いな。

シャンパンかワインしかないんだけど…どっちにする?」



シャンパンかワイン!!?


そんなに凄いお酒が悠の家にはあるの?

そんなの飲んだ事ないよ!


初めて飲んだビールは苦くて

それ以降、飲むことはなかった。

以降は甘いカルテルとかサワーしか

飲んだことないよ。


凄いな…

大人だな…

本当、別世界の人みたい。



「甘めで飲みやすいの……がいいです」



ワインもシャンパンも…

私には未知の世界。

知識だって何もない。

思わず敬語になっちゃう。



「んじゃー…ワインにするか!!

甘口の白ワインなら飲みやすいと思うし」


「う、うん。」



私の返事を聞くと

ワイングラスを2つと、白ワインを持ってきた。


なれた手つきでコルクを抜き

ワインをグラスにそそぐ悠。


今日、何回目思っただろう。

カッコイイなぁって思いながら

ポケーっと眺めてた。


ワインを注ぎ終えると。



「ちょっと部屋着になってきていいかな?

スーツだと居心地が悪くて(笑)」


「うん!待ってるね!」



確にそうだよね。

いつもならきっと、すぐに着替えてるだろうし。


私だって、バイトから帰ったら

一目散に部屋着に着替えちゃうもん。


私が居るから、

言い出しにくかったのかな?


悠は着替える為に寝室へ行った。


悠を待ってる間

頭の中であの事を考えていた。


このまま

嘘をついたままでいいのか…


もし、本当の事を話たとしても、

悠が今までみたいに接してくれるのか…


私の頭の中は、

悠についた嘘でいっぱい。


嘘なんかつかなければ良かったって思いと

嘘をつかなかったら、今日という日が

来なかったんじゃないかって思いが重なる。



「お待たせ~!んじゃ、飲むか」



悠が戻ってきて、思考を止める。

今は忘れて、今日を楽しもう。


悠の部屋着は黒のスウェットだった。

服でこんなに、印象が変わるんだ!

なんて思ったり。


スーツ姿の悠とスウェット姿の悠。


雰囲気が全然違って、また少しドキドキする。



『かんぱい』



乾杯をして、初めてのワインを口にする。

白ぶどうのジュースは飲んだことあるけど

そんな味じゃなくて、

なんだか大人の味って感じ。


でも本当に甘くて飲みやすい。


悠はいつも、こんなオシャレなお酒を

飲んでるのかな…!?



「どう?飲める?」



悠が優しく聞いてくれた。



「うん、甘くて飲みやすいよ!」



私の言葉を聞いて安心したかのように

悠は胸を撫で下ろしていた。


それから私と悠は、

ワインと冷蔵庫にあったチーズをつまみながら、

たわいもない会話をしていた。


悠はお酒を飲むペースが早い。


次から次へと、ワインが口へ運ばれる。


空になったグラスにまたすぐワインをそそぐ。


そんな悠の姿を見ていると、

“年上の男”って改めて感じさせられた。


私はお酒があまり得意じゃないから

ゆっくりとワインの味を楽みながら飲んでた。

もちろん悠との会話も。


私が、やっと一杯目を飲み終える頃、

悠はワインのビンを空にしていた。


飲むの早いっ。



「トイレ借りていいかな?」



悠にトイレを案内してもらって、

私はトイレに入る。


少し酔ったかな?


トイレをすませてリビングに戻ると

悠がテーブルに伏せていた。


どうやら、眠っちゃったみたい。


仕事で疲れてるもんね。


ソファーに置いてあった

毛布をそっと悠にかけた。


悠の無防備な寝顔が可愛い。


つい、数時間前に初めて会って……

車から降りてきた悠は、

紳士的で王子様みたいだった。


手料理が食べたいと言った悠は、

子供っぽく無邪気な笑顔を見せた。


スウェットに着替えた悠は、

私のお兄ちゃんと被って

少し距離が近付いた気がした。


たった一日…


ううん、ほんの数時間だけど

色んな悠を見て、

これからもっともっと

色んな悠を見てみたい!!


そんな風に思った。


悠寝ちゃったし、どうしよ?

そろそろ帰ろうかな?


勝手に帰ったら心配すると思い、

置き手紙を残す事にした。


うーんと……

悠の部屋のどこにペンと紙があるか

わからないな。


あ、確か鞄の中に手帳と、ボールペンが…

あった、あった。


手帳を1ページ切り取って、それに書いた。


━━━━━━━━━━━━━

悠へ


今日は悠に会えて凄く楽しかった。

疲れて寝ちゃったみたいだから、帰ります。


今日は本当にありがとう。

ゆっくり休んでね。


お邪魔しました。


真由

━━━━━━━━━━━━━


これでよし!


テーブルに手紙を残して、

電気を消して、

帰り際に悠の顔を覗きこんだ。


…やっぱり寝顔、可愛い!


カチャンっ。

なるべく音がたたないように

玄関を開けた。



「お邪魔しました」



声になっていないような

小さな声で言い部屋を出た。

10年前にエブリスタのサイトで

完結した作品です。

表現などを修正してまた更新します。



色々な人に届きますように。

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