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11 いじめられちゃえ

イチャイチャしてるだけ


隣国から帰ってきた2人の様子があまりに違うので、国王はじめ彼らの周りの人々は大層驚いた。



たとえば、フリージアがわがままを言えば、呼ばれなくともどこからかシルフがやってくる。

そしてフリージアを叱る。


ここまでは同じであるのだが。



彼女を叱ったあと、シルフは「フリージアを見張る」と称して、そのまま執務室に連れて行ってしまうのだ。


しかもぴったりくっついて、耳元でなにやら囁き合いながら。

それは紛れもなく、仲良し夫婦のイチャイチャだった。


侍女使用人一同は、そんな2人をいつも白目を剥きながら見送るのだった。



ーーシルフは薄々気付いていた。

妃がわがままを言う時は、自分の執務が溜まっていて休む暇もない時が多いこと。


それを彼女が心配していること。

そして恐らく寂しく感じていること。


(嬉しくないはずがない)


シルフは膝の上のフリージアに問いかける。


彼女を膝の上に乗せるまでに大体一悶着あるのだが、勝敗は見てわかる通りである。


「ねえフリージア、まだあなたから聞いてないな」


「なにを?」


「僕のこと好きって」


「バカ」


「はいはい、フリージアがバカって言う時は照れてるときですもんね」


「……王子はすぐそうやって」


「あ、また王子って言いましたね」


「……あ」


「はい、どうぞ」


「しなきゃだめ?」


「してくれなきゃ執務に戻れません」


フリージアが顔を真っ赤にして、シルフの唇に自分のそれを重ねる。


そんなフリージアを見て、シルフは見悶えるのだった。


(……かわいすぎる)



執務室でもイチャイチャする2人に、側近は白目を剥いて口から砂を吐いていた。




***


いつのまにか交流が盛んになった隣国からは、時折アズハル王がわざわざシルフをおちょくりにやってくるようになった。



「お前、まだ好きって言ってもらえないんだろ?」


「余計なお世話です」


「難儀なものだな」


「フリージア、あなたのせいで私はいじめられています」


「いじめられちゃえ」


「……あとから覚えててくださいね」


「ネチネチする男はめんどくえなあ」


「ほっといてください。振られたくせに」


「お前、なんで知ってる」


「………………」


「見てたのか!?」


「執念深すぎだろ」


「……何の事です」



***


楽しくやっているか、という父からの手紙で、フリージアは婚約するときのことをふと思い返してみた。


最初の婚約者が浮気して、その弟が婚約者になって、初めはマジありえないと思っていた。


「そういえば、ジェームズ殿下ってもう結婚したの?」


「まさか。身分はともかく、あの方は王妃教育を受ける気もないらしく、とても兄上の妃になれる状況ではありません。兄も一緒になって遊び回っているせいで、次期国王のお鉢が僕に回ってきそうで。勘弁してほしいですね」


「へえー。存在空気過ぎて忘れてた」


「忘れていいですよ」


「でも、結婚相手が兄の方じゃなくて、シルフで本当に良かった」


「たとえ兄でもあなたは渡せませんね」


「…………」


「こんなに好きになると思ってもいませんでした」



シルフは時たま、こういうキザなセリフを臆面もなく言う。

そのたびに、フリージアはドキマギしていた。

本人は無意識のようだから、余計タチが悪い。


だからたまに、仕返しをしたくなる。


「あ!UFO!」


「またそんな古典的な……仕方ないけど引っかかって上げましょ……む」


唇に触れた柔らかさに、シルフは堪らない気持ちになる。


「不意打ち成功」


「……」


「ちょっと!?シルフ…っ」



してやったりと微笑む、多少お転婆が過ぎる妃を、静かにできるのはシルフ王子だけ、とお城では専らの噂になっていたのだった。



【完】


なんでこんなベッタベタな展開になったの分からない。これで完結です。

ありがとうございました。

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