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ダンジョンだじょーん(仮)  作者: ヒゲ面の男


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61 初ダンジョン制覇

 畑毛ダンジョン


 1階層へと足を運ぶ、今日はみんな少し緊張してるね。

 無理もない、これからダンジョンボスと戦うんだ。


「ダンジョンボスが誰かに倒されてたらどうするの?」

「100階層ならすぐ復活するらしいよ?時間かかるのは400階層以上からだって」


 そうなんだ、知らなかった。

 おじさんの話でそんな事を聞いたから勘違いしてたな。

 400層からか、あたし達にはまだまだ遠い話だ。


「休日なのに人少ないっすね。ここも不人気ダンジョンなんすか?」

「熱海が特別多いんだよね。東京からも新幹線で30分だし、横浜からもたくさん来てる」


 程良い階層で都心からも近い熱海。

 実は日本一人気のあるダンジョンらしい。

 有馬あたりも人気だけど訪れる者は熱海の方が多い。


「東京なら奥多摩に行けばいいのにね」

「「あれは東京じゃない」」


 奥多摩の皆さんごめんなさい。

 クオンは心の中でそう思った。


「伊豆は人口の割にダンジョン多すぎるんだよね。まあ私達にとっては嬉しい事だけど」

「本当にそうだよね、これからいろんなダンジョンに潜れるかと思うとワクワクするよ」

「熱海最高って事すね。パイセン別府から引っ越してきて正解だったんじゃないすか?」


 エレナは地元愛が強い。ヤンキーにありがちなアレかな。

 あたしもつまんない街だと思っていたけど、ダンジョンに潜るようになってから認識が変わってきた。

 冒険者にとっては立地に恵まれ、他のダンジョンへのアクセスも良い。

 熱海に生まれて良かったかも。


「行こうと思えば箱根900にも行けるし、確かに良い場所だよ熱海は」

「湯河原も500だよ?伊東500、伊豆高原600もあるし、200、300、400ダンジョンもあるし滅茶苦茶恵まれてるよね」

「熱海の時代が来たって事っすね。長かったなぁ」


 いや、40年前から状況は変わってないんだけどね。

 でもエレナが満足そうだから黙っておくか。

 16歳なのに熱海を背負ってるとは知らなかった。

 そんな感じで50階層の小ボスをまず倒した。


「ふう、ここまで1時間半か」

「クオンちゃん、時間計ってるの?」

「うん、これから伊豆の100階層回るとして、移動時間も考えてプラン練らないと」


 そうだね、土日の日帰りでどこまで行けるか。

 土日なら泊りでも良いのかな?でもあんまり親に心配かけるのもな。

 夏休みに我儘聞いてもらう予定だし、なるべく今は日帰りで済ませたい。


「熱海で100階層は何時間くらいかかってたっけ?」

「4時間かからないくらいだね」

「ウチらの放課後はいつもそんだけ時間使ってんだよね」


 実際は現在120階層くらいまで潜ってるから5時間くらい潜ってる。

 16時くらいから潜り始めて21時まで、深く潜れるようになってきた分最近は家に帰るのが遅くなってる。

 強くなるほどに親には心配かけちゃうんだよね。


「時間的にあたし達って今の階層が限界だよね?」

「強くなればもっと早く進めるよ?師匠は100階層まで1時間半って言ってた」

「サーチの精霊もいるからっすよ。おじ様の基準で考えたらウチら怪我するっすよ」

「チョイスがあればいいんだけどね」


 チョイスかぁ、高階層ダンジョンでしか手に入らないという特殊魔法。

 行った事のある階層に飛んでいける便利な魔法だ。

 ネットのオークションで売られてるの見たけど億超えてた。

 とてもじゃないけど手が届かない。


「毎回一から潜らなきゃいけないってのがネックっすよね」

「チョイスが無い場合はやっぱり泊りがけでセーフティエリア拠点にして潜った方が効率良いんだろうね」

「そんなの学生の内は無理だよー」

「ウチは出来るんだけどな」

「エレナは親に反抗したいからでしょ?」

「反抗出来るのも今だけなの!大学入ったら流石にウチも落ち着くんじゃないかな」


 どーだろ?あたし達って成長してるのかな?

 体は強くなってるけど精神は変わっているのだろうか。

 毎日飽きもせずに同じ事を繰り返してるだけ。

 なのに楽しくてしょうがない。ちょっと自分達は異常なんじゃないか?と思う事もある。


「ランナーズハイってあるじゃない?あたし達ってそれなのかな?」

「かも知れないね。妙な高揚感を感じる事ある」

「今日もそれがあるはずっすよ?ダンジョンボスを倒せば…」


 また新たなステージへとあたし達は上れるのか。

 やばい、胸がドキドキしてきた。

 自然に歩く速度が速くなってしまう。


「ルシル、早いよ?」

「ルシルって時々バーサーカーみたいになるっすよね」

「悪口言ったでしょ?エレナは帰り道バイクでこけちゃえ」

「すでにコケてるんだよね。中古バイクでも初めてのキズは悲しかったな」

「あはは、あたしもバイクにキズつけたら泣いちゃいそう」

「避けられないって聞くけどね。みんな一度はコケるって」

「パイセンのアドベンチャーは絶対危険だと思うっすよ?シート高すぎますって」

「私、足長いから両足かかとまで地面に着いたよ?」

「ぐぬぬ」


 スタイル抜群のクオンちゃん、羨ましい。

 カミナと同じくらいじゃない?身長も足の長さも。


「カミナには敵わないよ、顔まで完璧じゃん」

「クオンちゃんも可愛いよ?」

「いいよ、そういう女の馴れ合いは、顔はルシルの方が上って自分で思ってるし」

「ええ?あたしそんなに可愛くないよ?」

「ルシル、それは嫌みになるからマジでやめといた方が良いよ」

「そうだよ?うちらはアンタが天然って解ってるから良いんだけどさ。実際告白とかよくされるでしょ?」

「うん、しょっちゅうだね。ゴブリンのくせにしつこいんだよね」

「同じ人に告白されてるって事?」

「わかんない、ゴブリンの個体差なんて見分けつかないよ」

「「………」」


 ルシルは天然ギャルだ。二人はあらためてそう思った。


「男がゴブリンに見えてるなんてね」

「兄弟多いんでしょ?家族はどう見えてるの?」

「家族はもちろん見分けつくよ?エレナはあたしを何だと思ってるの?」

「(ウチが悪いんか?)だって男がゴブリンに見えてるなら攻撃しちゃいそうじゃん」

「あはは、身長で一応は見分け出来てるよ」


 本物のゴブリンはちっちゃいからね。

 ダンジョンの中で男の冒険者に出会った時は攻撃しそうになった事はあるけど。


「あ、最近はおじさんもオークに見えなくなってきたよ?お腹が引っ込んだからかな」

「ええ?師匠遂に昇格したの?」

「おじ様、やっと人間になれたんすね」


 なぜか二人が感動してる。何かあったのかな。


「おっと、そろそろ敵が強くなってきたね」

「そだね、話さず真面目にやろっか?」

「ウチらもすっかりベテランみたいな立ち回りっすね」


 ダンジョン潜り始めてから1年1か月、ほぼ毎日潜ってるからね。

 あいつらいっつも居るって陰口叩かれるくらいだ。他から見てもベテランになってるんだと思う。

 16歳でベテランか、ちょっと恥ずかしいかもしれない。

 そんな感じで99階層まで来た。


「さーて、準備は良い?」

「ポーション飲んどこ。万全で行きたい」

「ダンジョンボスはグレムリンっすよね?予習はしてきたけど強いんすかね」


 初めて戦う敵はどうしても緊張してしまう。

 どんな敵なんだろうね?強いのかな?どんな攻撃をしてくるのかな?


「ルシル、緊張って言うよりワクワクしてるように見えるよ」

「え?どんな顔してるのあたし」

「笑ってるもんね、だからバーサーカーみたいに見えるんだよ」


 ええ?気づかなかったな。

 戦闘狂のバーサーカー?このあたしが?

 想像すると怖いんだけど、まるでサイコパスみたいじゃないの。


「ルシルは良い子なんだけどね」

「ねえ」

「なんなの?二人して」


 二人は納得の顔をしている。

 こっちは納得いかない。なんなのよ、いったい。


「もう怒ったからね。グレムリンにあたってやる」

「はいはい、頑張ろうね」

「頼りにしてるからね、ルシル」


 畑毛ダンジョンボスエリア グレムリンの間


 ボスにしては小さい。邪悪な顔で動きは速そう。

 え?なんか投げてきた。なにあれ?取り合えず逃げよう。


 ボカーーン


 しゅ、手榴弾だ。爆発はそれほど大きくないけど手榴弾を投げてきた。

 想像以上に近代的な戦い方をしてきた。


「ルシル、予習してなかったの?」

「したつもりだったけど、見逃したのかな」


 グレムリンが何かを取り出す。あれは、銃に見えるけど。


 ダーーン


「いった!滅茶苦茶痛いよ?」

「人間の持ってる銃と同じくらいの威力らしいよ」

「ええ?じゃあなんであたし死なないの?」

「ウチらもレベル140だからね、直撃でも死ぬことは無いよ」


 そ、そうなの?そんなに丈夫なんだ?あたし達の体。

 でもあんまり食らいたくないな。痛いのは嫌だ。

 当たった場所赤くなってそう。それですんでるのが不思議だけど。

 また銃を構えた、取り合えず避けないと。


 エレナが弓を放つ、銃を構えていたグレムリンが撃つのをやめて飛びのく。

 そこへクオンちゃんは斬りかかる。吹っ飛ぶグレムリン。

 結構ダメージ与えたかも?あたしも行かなきゃ。


 グリムリンが逃げ回る。近接攻撃は無いの?

 あ、ナイフを取り出した。でも腕も短いしあまり脅威ではないな。

 あたしの二刀流をナイフで受けようとするが、受けきれず吹っ飛ぶ。

 そこへクオンちゃんとエレナの追撃。また結構なダメージを与えたはずだ。

 グレムリンの銃乱射。やけくそだ、狙いが無茶苦茶だ。


「いった!無茶苦茶痛い!」

「パイセン大丈…いって!!」


 狙いは無茶苦茶だが数が多い、どうしよ近づけないね。

 あ、弾切れ起こしたみたい、モンスターでも弾切れあるんだ?

 取り合えずチャンス、三人でグレムリンに突っ込む。

 残念、飛びあがって逃げていった。


「二人とも逃げて!」


 え?うわ!手榴弾を置いて逃げてっいたのか!


 ドカーーン


 いった!少し食らっちゃった!

 直撃だったらヤバかったかも、いやらしい攻撃をしてくるなぁ。

 次の瞬間また手榴弾が転がってくる。

 わああ、逃げないと!


 エレナが手榴弾を蹴り返した。おお、大胆な事をするね。

 狙いはぴったり、グレムリンに向かって手榴弾が飛んでいく。

 グレムリンがビックリした後、手榴弾が直撃した。


 ボカーーーン


 煙の中、グレムリンの体が硬直した後、崩れ落ちた。

 ドロップ品が出てくる。倒したの?凄いよエレナ。


「そんなに強くなかったっすね」

「うん、一発食らったけど血も出なかった」

「…(あたし2発食らっちゃった)」


 でも確かに、痛かったけど怪我をするほどでは無かったな。

 推奨レベル越えてるからかな?越えてないと怪我しちゃうんだろうね。

 それより攻撃方法にびっくりしちゃった。現代的な戦い方をするモンスターもいるんだね。


「そんな事よりドロップ品!魔法書とかスキル書は無い?」

「見た感じないっすねー。なかなか出るもんじゃないとは聞いてるけど」

「でもさすがダンジョンボス。熱海の100層中ボスよりドロップは豪華だね」

「ここまで来た甲斐があったよ」


 部屋の中を見渡す。下に降りる階段がない。

 ここがこのダンジョンの終着点という事だ。

 じわじわとその事実を実感してくる。


「あたし達、一つのダンジョンを制覇したんだね」

「うん、こんなに早くこの日が来るとは」

「あれ?パイセン泣いてるんすか?」


 いつもクールなクオンちゃんが涙目だ。

 恥ずかしいのかあっち向いちゃった。


「まだまだこれからっすよ。熱海から始まるウチらの全国制覇物語」

「あはは、今なら不可能じゃない気がするよ」


 一つの成果をつかみ取り、何でも出来るような気持ちになってる。

 おじさんが見たら油断するなとたしなめられるだろう。


「あ、時間計ってるの忘れてた。大体制覇まで4時間くらいかな」

「今日の場合は移動含め約5時間って事だね」

「伊豆で一番遠いダンジョンは下賀茂か松崎っすよね?どっちもバイクで2時間くらい?」

「往復4時間、ダンジョン4時間、結構きついかもね」

「松崎は300層だから当分先じゃない?」

「そうだね…あ、取り合えず出よっか」


 制覇の余韻が名残惜しいけどそろそろ出よう。

 浅いダンジョンだ。すぐに他の人が来るかもしれない。場所を譲ろう。


 ダンジョンから出ていらないドロップ品を換金する。

 換金所の人の目の色が変わる。あたし達がボス倒したって解るんだろうね。

 こんなに若い子達が?って顔をされた。

 なるほど、これが制覇をするという事なのか。


「ねえ、ダンジョンの前で三人で自撮りしないっすか?」

「ああ、初制覇の証?」


 昔は横断幕広げて写真撮ったらしいね。

 今は写真に字が書ける時代、形は変わってしまった。


「エレナ自撮り棒なんて持ってたんだ?」

「チビには結構便利でね」


 慣れた手つきでスマホをセットしてタイマー撮影。

 画像送ってよ、あたしも大事にしたい。


 背景のダンジョンを背に、満面の笑顔の三人の女の子達。

 ダンジョン初制覇☆の文字を入れ、保存しておく。

 この画像は多分一生消さない。

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