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ハルの暴走

「ちょっと…待ってよデュポン!」

あれからデュポンに手を引かれひたすら歩き続けている。


「なんでヴァルを置いてったの?!」


「…」

僕の問いかけにデュポンは苦い顔をし口を開かないでいた。

無理やりデュポンの手を振りはらい立ち止まった。


「教えてくれ、何を隠してるの?」


「…」

デュポンもあきらめたのかしぶしぶ、苦い顔をしながらデュポンは口を開いた。


「ヴァルは僕たちを逃がすためにあの場に残ったんだ」


「逃がすためって、じゃあヴァルは…」


「ギネーベと戦っている」


「で、でも!ヴァルは大王候補筆頭なんでしょ。ギネーベくらいなら…」

デュポンの顔を見て何かを悟った。


「ヴァルはもう虚無になっているんだ」


「虚無ってことはもう」

死んでいる…しかしついこの間話したときは平然としていつも通りだった。とてもじゃないが信じられない


「信じられなさそうだが、これはヴァル本人から聞いたことだ」


「てことは…ヴァルはもう…」


「…死んでいるかもしれない」


「じゃじゃあ!!す、すぐに戻らないと!!」

「行ってどうするんだよ。僕たちがいたところでむしろ足を引っ張るだけじゃないか」


「それでもまださよならも言ってないのに。こんな形でおわかれなんて!」

戻ろうとするとすぐ前にデュポンが立ちはだかった。


「ごめんけど、戻ることは僕が許さない。ヴァルから頼まれたんだ。」


「どいてよ、第一デュポンはそれでいいの!?」


「いいわけないだろ…」

ぎりぎり聞こえるほどの小さい声でデュポンはそうつぶやいた。


「どいてよ。僕一人でも行く」


「…それでも戻るっていうなら僕も力づくで止めるよ」

デュポンの目の色が不意に変わり、本気で言っていることが分かった。しかし僕も引くわけにはいかない。互いに数秒ほどにらみ合った。


「…ほんとはこんな事したくなかったんだけど…」

ぼそっとデュポンがぎりぎり聞こえるくらいの声でつぶやいた。

そのとたん、ばたんとデュポンの足が崩れ地に落ちた。

よく見ると目を閉じている。一瞬何が起こっているか分からなかったが前にも同じようなことがあったことを思い出してしまう。

デュポンの口がにやりと大きく口角が上がり立ち上がった。


「黒ポン…」


「はいはーい、呼ばれて搭乗黒ポンですよ~。」


「なるほどね…チキン野郎は私にハルを止めてほしいのか」

まさかデュポンが自発的に黒ポンとしての人格を出すのは予想外だった。あれだけ嫌がっていたのに出したということにデュポンの僕を通さないという強い意志が伝わった。

…それでも僕は

「…」

にやにやと不気味な笑みを浮かべる黒ポンに臆さずじっとにらみつける。


「通させてもらうよ」

戦闘態勢へと入りいつ始まっても大丈夫なようにした。正直言って勝てるきはしない。でもここで退くわけにはいかない。

空中にスッとギロチンが現れ黒ポンががしっとつかんだ。


「じゃあやろうか…」

ギロチンの刃をそっとこっちに向ける。

…くる!


「なんてね♪」

ガシャンと持っていたギロチンが地に落ちた


「…え?」

いきなりのことに全身の力が一気に抜けた


「いや…戦わないさ。」


「で、でもデュポンが…」


「俺がデュポンの言うことをそんな簡単に聞くかよ。そりゃもちろんハルにそこまでの決意がなければ問答無用で止めてたけどな」


「…じゃあいってもいいの?」


「あぁいくといいさ。ほれ、さっさと行かないと手遅れになるぞ」


「じゃ…じゃあ」

呆気ない形で通ることができ困惑しつつ先へと足を運んだ。

振り返ると、黒ポンが元気よく手を振っていた。


黒ポンはハルが行ったのを確認しそっと上を見上げる。

「わりーな。デュポン。ありゃ止めちゃだめだ。」


■■■


「はぁはあぁはぁはぁ」

少しでも早く着くために全力で走る。そして着いたらどうするか

を考える。

僕が行ったところでヴァルの役に立てないのはわかってる。ならどうするか…全く考えずに飛び出してきたため一から考える。


「たぶん。ここら辺だったはず…」


必死にあたりを見渡し、ヴァルを探す。しかしそこまで時間はかからずそれらしい集団を見つけた。そっと近づき様子をうかがおうとするとすぐにヴァルは見つかった。


「は?」


これが最初に出た僕の言葉だった。


「ん?お前は…アルヴァトスの隣にいた…新入りのほうか」

周囲にいる悪魔をかき分けギネーベが間からでてきた。そしてにこっと僕に微笑みかけてきた。だれが見てもかなり上機嫌だった。


「わざわざそっちから来てくれるなんてね」


「……」


「あぁこれ?」

ギネーベがヴァルの頭をそっと持ち上げ僕の前に見せた。


「大変だったよ、ここまで時間がとられるとは思わなかった」


「……死んだの?」


「そう殺した。」


「……」


「怒ってる?」


「……」


「というか、もう一人のギロチンの子はどうしたの?」


「……」


「おいおい何か言ってくれないとわからないぞ」


「………………」


そっとギネーベの手がうつむいてる僕の顎をつかみ無理やり上を向かせた。


「なんだその顔は。憎悪?悲しみ?全部がぐちゃぐちゃになってる顔」

パンと素早くギネーベの手を振りほどいた。自然と拳に力が入る。


「反抗的だな。まさか……戦うつもりか?この状態で」

僕たちの周りに別の悪魔たちがすこしずつ囲んでいく。


「まぁいいや。ゆっくりということを聞かせていけばいいか。王としてそれくらいの器の広さは必要だからな」


「…………」


ギネーベは僕に背を向き歩きだした。それと同時に周りに集まった悪魔が僕の元へ近づいてくる。


「悪く思うなよ」


ぐしゃ、体がえぐれる音が響き、悲鳴が流れた。しかしその悲鳴は僕からなったものではなかった。


■■■

追記ここからはハルの後を気づかれないよう追いかけていったデュポンの記録である。

ハルは突如、まがまがしいオーラを発し恐竜のような化物へと変わった。ものの数秒で周囲にいた悪魔を一掃。その後増援が来るも惨殺。ギネーベも抵抗するもアルヴァトスとの闘いの疲労もあってかあっけなくバラバラの肉片にされていた。生死は不明である。

化物へとなり果てたハルだけがそこに立ちすくんでおり元に戻ることはなかった。


その後ハルは第三層門番レコリフ・ルビー従える3体の大将軍のうち2体を単独で殲滅。

2週間ほどたった今もなお破壊活動を続けている。


色々と忙しく1週間ぶりの投降となってしまいました。今回はいろいろと大変な回でしたね。次回はようやくエンマ視点の話になります。もしかするとこの「エンマ大王は死んだ」は7月行くか行かないくらいで完結できそうです、

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