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慧の絶望

死んだ。意識がなくなった。その瞬間、僕はあることにすぐに気づいた。

「「僕の名前はハルだ…。いつのまにか完全に宵風隼になってた。」」

ハルとしての自覚が完全になくなっていた。

宵風隼として過ごした記憶はしっかり残っているが今は完全にハルとしての自分を持てている。

……というかまだ僕は戻れてないのか

かれこれこの世界でかるく1年弱は立っている。だがそれよりも僕の死因がこんな形で知ることになるとは思いもしなかった。

……というか今これはどういった状況だ?

目のまえにはある街並みを歩いている光景が広がっていた。しかし僕があるいているわけじゃない。

すると突如見知った声が聞こえる。


「隼はもういない」

間違いない、姉さんの声だ。

もしかしてこの光景……まさか僕は今、姉さんの意識のなかにいる?!


■■■


隼は死んだ。


必死に作った特効薬は隼には届くことはなかった。私はただ戦争を終わらせて隼を助けるために作ったはずだった。しかし戦争に利用され多くの死傷者をだし感染症で死んだ人もたくさんいる。


とぼとぼと家に帰った。


「ただいま…」

おかえりが返ってくることはなく私の声は空しく消えた。

もうこの家には私一人しかいない。その事実が頭を強く揺さぶる。


何もする気が起こらない。すぐ近くにあったリモコンを適当にとりテレビをつける。


『今回、○○ウイルスは宵風慧博士によって完全に無毒な特攻薬が作られ大きな被害を生む前に対処することができました。』


『すごいですよね、今のところ薬による死者は全くでておりません。こんな短い期間でよく作れたなと思います。』


『宵風慧博士はほかにも〇〇病の解決をしたり、様々な功績をだしており近頃ノーベル賞を手にされるそうです。宵風慧博士はまだ27歳であるため、この東アジア連邦では歳少年ということにっ』


プツン

耐えられずそこでテレビをきった。

国も研究所のみんなも私を英雄のようにたたえている。


「弟すらも助けられないで英雄?ふざけるなよ」

するとピピピピと家の電話がなる。

ゆっくりと立ち上がり受話器を手に取る。


『こんばんは、政府の○○です。そちら宵風慧様で間違いないでしょうか。ノーベル賞の件の授与式について…』

電話をすぐさま切りその場に投げ捨てた。


「何がノーベル賞だよ。そんなもんよりも返せよ…私の弟を、隼を返せよ。くそが…」

行き場のない怒りが胸を強く締め付ける。

そこからはひたすら無気力な生活が続いた。スマホからは同僚や親から電話がひっきりなしになっていたため連絡アプリ消した。時々、玄関からインターフォンの音が聞こえてくるがすべてしかとした。食料は通販を使い置き配にした。


そして家から一切出ず3か月が過ぎた。この3か月間いろいろなことを考えた。これからのこと以外にも隼をよみがえらせる方法はないのかも模索した。宗教についても手を出したが、馬鹿らしくなり辞めた。


そして久しぶりに家の外に出ることにした。理由はなんとなく。

時間は立っても街並みほとんど変わず笑顔が溢れていた。


「あの人さ…もしかして」

「間違いない写真と同じだ」

ひそひそと声が聞こえ嫌な予感がした。

その場から離れようとしたが一歩遅かった。

夫婦らしき二人が私の元へと駆け足で詰め寄ってきた。


「あの!もしかして宵風慧博士ですか?」


「…違います」


「え、えっとでも…」


「…」

咄嗟に否定したが信じられていない様だ。


「あ、あの!あなたの薬のおかげで本当に助かりました。私の家族はあなたがいたから今を生きています。本当にありがとうございました!」

すると足元に小さな子供がいるのにきづいた。


「ほら、お姉さんにありがとうって」


「?えっとありがとう」

舌足らずながらも幼児は私にお礼をした。


すると少し周りがさわがしくなった。

「おい、もしかしてあれが宵風慧?」


「え、本物?」

とりあえず私はそこから逃げるようにその場を離れた。近くにあった適当に座れる場所にいき腰を下ろしさっきの夫婦たちを思い出す。


あの家族は私のおかげで生きている。それだけじゃない。今日であった人たちも私がいなければ死んでいたかもしれない。


街を歩いているときに見た人々の幸せそうな顔を思い出した。


…今この世界にある笑顔、幸せ、命は私のおかげで存在のしているのかもしれない。


そう思うと私は…….すごく…“気持ち悪くなった”。


「あは、はは」

乾いた笑いが勝手に出てくる。

……何を考えてんだ私は。


数週間がたったころ私はノーベル賞の授与式にでていた。元々出るつもりはなかったがずっと電話やインターホンが鳴り続けるためさすがに出ることにした。

一通り授与式を終えさっさと帰ろうとしたとき


「宵風慧博士ですね、お初にお目にかかります」


「……えっと?」


「あぁ、私は〇〇省の大臣を務めておるものです」


「……」

言われたところで特にぴんとはこなかった。


「今回はあなたのおかげで戦争に勝ったのも同然でした。今ある命も全部あなたのおかげで存在できています。だから国民のの代わりに本当にありがとうございました。」


それを聞いて呆然としてしまう。

……何を言っているんだこいつは。お前らがもっと早く特効薬を渡していれば隼は助かっていた。私は戦争のために作ったわけじゃない、お前らのために作ったわけじゃない。


「……とんでもありません」

怒りを殺した。今はとにかくひたすらにこの場所から離れたかった。


その後すぐに帰宅した。

絶望した。私が救った世界に。救って“しまった“世界に。

一体何のために生きていたのか何のために今まで頑張ってきたのか。何がしたかったのか。すべてがわからなくなり、曖昧になっていく。


数十時間がたちようやく考えがまとまった。


「私は今からこの世界を滅ぼす。」


数日がたち世界は一気に阿鼻叫喚の嵐に襲われた。

あらゆる場所から炎が立ち上がり、人々は血を吐き出しその場でのたうちまわっている。


そんな混乱の中私もひっそりと命を落とした。


そうして物の数か月で世界が滅びた。

■■■

一連の状況を姉さんの視点からみて僕は恐怖し吐きそうになる。


「はぁ……はぁ……これが姉さんの……エンマの罪」


エンマの罪……それは“地球を滅ぼした罪”である。


とりあえずこれで地球での話は一旦終わりですね。久しぶりのエンマ視点の話でした。そろそろ本編でもエンマを出したいですがまだ時間がかかりそうです。

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