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オクスタシアとアルカ1

私の中に“私”が在る。君の中に“私“が有る。……いつか、君は”私“になる。


これは、オクスタシアが囮となり、エンマたちと別れた直後の物語である。


「……さあ、始めようか。アルカ」


オクスタシアは冷ややかな声を上げ、愛用の杖を地面に突いた。

その瞬間、ドーム内の湿った空気が一変する。重圧。彼女を中心に、物理法則を無視した重力の奔流が渦を巻き始めた。


「あはっ! 今度こそ! オクを、オクスタシアを、私のものにするッ!」


目の前のアルカは、裂けたような口元に不気味な笑みを張り付かせている。

その執着に満ちた眼差しに、オクスタシアは内心で舌をチッと鳴らす。

……何が面白いんだか、こいつは


アルカ。人間時代は「世界一の詐欺師」としてその名を馳せた男。

この地獄において、悪魔の能力は生前の罪に直結する。彼の能力は『他者との契約』。

契約により他者と自分自身をしばり互いにルールを守らなければいけない状態にする。もちろん契約には互いの同意が必要となる。

そして最も特筆するところは契約次第で契約者の能力、魔力を扱うことができるということ。

他者の能力を使えるということは、彼の手数は無限大。

真正面から倒すのは至難の業だが私の目的は、あくまで時間稼ぎだ。エンマを先へ進ませることが目的であり、彼を殺す必要はない。


「……まずはお手並み拝見、と行こうか」


オクスタシアは一気に上空へと浮上し、アルカの軍勢を見下ろした。

……こうして見ると相当の数いるな。

アルカの周りにいる兵の数は、千を優に超えている。


「…」


オクスタシアは杖を掲げ、魔力を一気に練り上げた。

周囲の空間がぐにゃりと歪み、彼女の前方に漆黒の球体が出現する。半径1メートルにも満たない球体だ。


「墜ちろ」


杖を大きく振り下ろし、球体をアルカの頭上へと解き放つ。

……まずは、雑兵の数を減らす。


球体が地面に激突する直前でピタッと静止する。

一体何が起こるんだ、と兵たちが武器を構えた瞬間、その球体から猛烈な引力が発生した。


「う、うわあああああッ!?」


「吸い込まれる……ッ! 身体が……ッ!」


兵たちは絶叫し、地面に這いつくばって耐えようとする。

オクスタシアが杖を一振りすると、球体は地面を爆速でえぐりながら、阿鼻叫喚の兵たちを呑み込み始めた。地面の雪、建造物の残骸、悪魔の肉体……。

あらゆるものを吸い込み、どんどん球体に張り付いていく。黒い球体は急速に巨大化していきたった数秒地面を転がっただけで、それは半径15メートルを超える、禍々しい瓦礫の塊へと成長していた。


「あははははッ! いきなりやることがドギツイな、オク!」


迫りくる巨大な瓦礫の球体を前に、アルカは依然として余裕を崩さない。

彼は足元に転がっていた兵の一人に触れ、愉しげにつぶやいた。


「――『ボルグ』」


瞬間、触れられた兵の肉体が、骨肉をきしませながらグニグニと変形を始めた。

それは一瞬にして、生物の形を失い、一本の禍々しい槍へと姿を変えた。

アルカは迷いなくその槍を手に取り、突進してくる巨大な球体へと向けた。


――刹那、槍の先端が光速で伸び、球体を芯まで貫いた。

同時に、球体の発生させていた引力が霧散する。吸い付けられていた瓦礫や兵たちの死体が、一気に崩れ落ちた。

伸びた槍は、何事もなかったかのように元の大きさに戻っている。


……なるほど。あいつ、私の対策をある程度済ませてきているな

さっきの球体は引力を持ちありとあらゆるものをかき集める性能があり私がよく使う技でもある。止める条件は球体の破壊。しかしさっきのようにあらゆるものを吸い込む性質のため球体の大きさは計り知れないものになるためそもそもの破壊が難しい。


「早く降りておいでよ、オク。僕はいつだって、準備万端だよ? …来ないなら――『ラング・バウ』」


アルカが指を鳴らした瞬間、オクスタシアの鼓膜を、凄まじい轟音が貫いた。

上空。

振り返ると、そこにはあり得ない光景があった。

一機の“飛行機”が、雲を切り裂き、爆速で自分目掛けて突っ込んできている。


「ちょっ!!」


咄嗟に、自身の周囲をまとっている重力のバリアを、前方の一点へと集中させる。

轟音。

飛行機は、私のわずか10メートル手前で、見えない重力の壁に阻まれた。


トンッ。


背後に、気配。

振り返るよりも速く、アルカが私のすぐ後ろまで迫っていた。

すぐにさっきの槍を向けている。


「チッ……!!」


重力障壁の出力をさらに上げ、背後から伸びてくる槍を、かろうじて止める。

これにより、オクスタシアは前方の飛行機と、背後の槍に挟まれる形となった。

完全に止められているわけではない。バリアがきしみだし、飛行機と槍は、少しずつ、だが確実に、彼女のもとへと近づいていた。


……挟み撃ちはまずいか


「はぁ……」


オクスタシアは深く一呼吸し、静かに手を合わせた。

そして――アルカの背後、数メートル離れた位置にワープした。


私が消失した瞬間、バリアによって抑え込まれていた飛行機が、反対側にいたアルカに向けて解放された。

爆音。

アルカの身体に飛行機が激突し、凄まじい爆発とともに大量の煙が舞い上がった。


………なるほど、確かにあれができれば私のバリアを超えることはできる。


ワープすることで回避はできたが、オクスタシアはこの技を多用したくない。

ワープの仕組みは簡単に言うと「時空を歪め、数メートル先へと自分の現在地の座標をずらす」移動法だ。

移動先の座標を瞬時に計算しなくてはならないし、計算を誤れば、身体の一部だけが元の場所に取り残され、重傷を負うリスクがある。


「……これは、加減している場合じゃないか」


オクスタシアは、自身の頬を縫い付けている糸に手を当てた。


私には殺人衝動がある。今までちょくちょく解放しなんとか日常に支障を出さないようにしていた。解放する時間は毎回10分程度に抑えている。その10分間だけならなんとか自分の自我をもちつつ解放することができる。しかし長時間続けるともう元の自分には戻れないかもしれないからだ。


……いや。本当にダメだった時のために、取っておこう。


顔から手を離し、下方の煙へと目をやる。

その瞬間、煙の中からアルカの槍が、カクカクと不規則に、直角に折れ曲がりながら、オクスタシアを追尾して飛んできた。


すんでのところで槍を回避する。だが、避けたはずの槍は、再びカクカクと軌道を曲げ、オクスタシアのもとへ襲いかかってきた。

「しつこいですね…」


オクスタシアは槍に向かい、重力の衝撃波を数発叩き込んで軌道を逸らす。

その隙に地上へと舞い戻った。

アルカを覆っていた煙が一気に晴れる。そこには――依然として、余裕の表情を浮かべるアルカが立っていた。


……ばかな。飛行機と正面衝突したはずだというのに、無傷だと?


アルカの身体には、見える限り、一切の外傷がなかった。


その後、バキンッ! と音を立てて、彼が持つ槍が砕け散る。

兵士の限界を超えたのだ。


「あーあ、もう限界か。まぁ、替えはいくらでもあるからいいんだけどね。それより……」


アルカが、オクスタシアをじっと見つめてくる。


「解放しないの? その、頬の糸」


「……しませんよ。する必要が、ありませんから」


「ふふ……。まぁ、いいや。でも、早くしないと、本当に死んじゃうよ?」


狂気じみた、底知れないまなざしでオクスタシアを見下ろしていた。

アルカが手をかざすと、魔力のこもった光弾が飛んでくる。私は重力の壁でそれを打ち落とした。


次の瞬間、上空にアルカの姿はなく、彼女の目の前へと移動していた。


「――『ザイン』」


言葉とともに、アルカの手のひらから魔力が形成され、槍が鋭い剣へと姿を変えた。

オクスタシアは後方に飛び、剣を回避。杖から重力の斬撃を放ち、アルカの身体を切り刻んだ。


ボロボロ。


アルカの肉体はバラバラに裂かれた――が。

血が噴き出した瞬間、その血が傷口へと逆流し、一瞬にして傷が再生された。


……まじか、どういうからくりだ? 完全に切ったぞ


斬撃を飛ばし続けるも、彼が苦悶の表情を浮かべる様子はない。再生は一瞬。

アルカは怯む様子なく、再生した手で剣を振りかざしてくる。

オクスタシアは重力の斬撃を剣に集中させ、木っ端微塵にした。

アルカの一撃は素振りに終わった。

その隙を逃さず、杖に大量の魔力を集中させる。


……これだけ込めれば、さすがに傷の一つくらいはできるはず。というかできてほしい。


杖を直接、アルカの脳天に振り下ろした。

ドォン!

杖はアルカの頭に直撃。さすがに彼もよろけ、頭部から大量の血が溢れ出る。


……もう一撃!


再び杖を振りかざす。


「残念……――『ボルグ』」


アルカのその言葉とともに、オクスタシアの背後にいた悪魔が、その形を歪めた。


……!!


「あぁあああッ!」


悪魔が一瞬で禍々しい槍へと姿を変え、光速で伸びる。

……でも、伸びる先にはアルカがいる。どうするつもりだ。


オクスタシアは杖を止めることなく、アルカに向けた。

しかし、私の予想は簡単に裏切られた。

伸びた槍は、躊躇なくアルカの脳天を貫通した。


「は……!?」


貫通した槍は、勢いを落とさず、オクスタシアの顔面の直前まで迫っていた。


「くそっ!!」


使っていなかった左手で、なんとか槍を掴む。


「ぐぅううっ!!」


掴んだ状態のまま、槍は伸び続け、その凄まじい勢いとともにオクスタシアは大きく吹き飛ばされた。

壁に激突し、瓦礫に埋もれる。


「……はぁ。そういうこともできるのか」


オクスタシアは、服についた埃を払いながら、スッと立ち上がった。

激突の直前バリアを張れたため、怪我はない。

距離を開けたアルカを見ると――さっきの負っていたはずの傷が、跡形もなく消えていた。


……一撃で、再生の隙さえ与えず消し飛せば、なんとかいくか?


正直なところ、今のところ私には、彼を倒せるビジョンが全く見えなかった。


「困ってるみたいだね……。でも、これからもっと大変なことになるかも」


アルカは、不敵に笑っていた。


「ん?」


オクスタシアは、自分の足元に異変があることに気付く。

地面を触ると――そこには、微かな魔力の痕跡があった。

…これは魔法陣か?それもかなり大規模の


「気づいたか。……もう遅いけれど」


その瞬間、オクスタシアの周囲が一気に青い光に包まれた。


オクスタシアの話はあと1,2話くらい続けたら3層の話に入ろうかなと思ってます

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