第五話 下 交差する町 ~東州ジェール、南州ケッセン
交通の要所 南州ケッセン
爆発事件に巻き込まれた一行の行方は?
第五話 下
交差する町 ~東州ジェール、南州ケッセン
翌日も快晴だ。ケッセン駅のホームに、煙を吐いて西州からの列車が滑り込む。どっと吐き出される乗客の中に黒づくめの人影があった。腰までのマントをまとう。顔を隠すフードを更に深く、手袋をはめた手で引っ張った。ルーカだ。かかとの分厚いエンジニアブーツが少しだけ背を高く見せている。これも闇の色だ。左右をきょろきょろと見渡し、軽く舌打ちした。
続いて汽車が到着する。しばしの停車時間の合間に、せわしなく荷物や人が行き来する。さらに西へ向かい、南州の州都ゲルシュニアウプを経由して連邦首都クロイツベルクへ向かう路線だ。
東西横断鉄道ケッセン駅は、グリンクラフト連邦の物流の中枢地点だ。駅舎には灰色で愛想のない角ばった建物が隣接している。以前は倉庫と事務所に使われていたそうだが、現在は南州と西州合同軍の出先機関だ。入り口には小さなプレートが掲げられていた。『検疫所』とある。
濃い緑の制服に身を包んだ青年も、今しも車両から降り立った所だ。。少し紅潮した頬は少年らしい丸みを残している。彼はきょろきょろとあたりを見渡す。すぐに目的を見つけて小走りになった。
検疫所へ入る。玄関近くは吹き抜けだ。高い壁に取り付けられた窓からは、光が溢れていた。広いカウンターがあり、電球は煌々とかがやく。仕切りのないフロアは解放感があった。青年はネクタイを締め直す。受付の前に立つ。見事な金髪の女性が爪にマニキュアを施していた。何事かと見上げる前で直立不動だ。
「明日付をもちまして南西合同軍・ケッセン支部に配属との拝命を受け、本日は書類を持参しまして...」
「誰?」
彼女はひらひら手を振った。めんどくさそうにさえぎり、彼の差し出した封筒を受け取る。背後の『未処理』とラベルの付いた棚に投げるように入れた。青年の顔は真赤になった。
「トビアス・ミレン曹長であります!」
「あーはいはい。聞いてるわよ、統括のところね。私はキーラ・カッツェ曹長」
彼女は指を一杯に伸ばした。トビアスと同じ色の制服着用なのだから軍人のはずだ。おざなりに敬礼する。その身分にはあるまじき真赤な爪に息を吹きかける。これこそが武器のように光った。胸元のボタンは三番目まではずれている。中身がこぼれそうだ。
「全くいい迷惑よねえ。北の連続テロ事件でこっちまで大騒ぎよ」
「は」
「人員を増やせだの、荷物の検査を厳しくしろだの。それで増員かぁ。あ、身分証見せて」
マニキュアは乾いたらしい。椅子に座ったままくるりと背を向けた。背後の棚から書類を探してカウンターに乗せる。トビアスの身分証にはちらりと視線をやっただけだ。
「はい、どうぞ。二階の詰め所に行ってみたら?」
「は、はい!」
敬礼をしてから受け取るが、彼女は返礼をしなかった。それよりも爪が気にかかるらしい。もう目を伏せていた。
詰め所のドアは少し開いていた。ノックしようとした途端に大きく開く。背の高い男がトビアスを見下ろした。
「誰?」
「明日をもちまして」
「だから誰?」
「...トビアス・ミレンと...」
「あー! 配属の奴か」
彼はぽんと手を打った。
「俺はフランツ・マイヤー。階級は少尉だ。よろしく。ん? 統括の下だな。そりゃ御苦労さん」
「トーカツ? 何でありますか」
「あれ? 聞いてないか? お前、統括の直属だろうが。大変だぞ。まあ、とにかく一緒に来い。これから報告書を出しに行くから」
フランツは大股に歩き始めた。小柄なトビアスは着いていくのが精いっぱいだ。
「アディートの端っこ...ケッセンの近くでテロがあったのは知ってるか?」
「はい」
「犯行声明は複数出ているが、確定できてないとさ」
「知っているであります」
首だけ振り返る。フランツの口元が歪んでいるのは笑いをこらえているようでもあった。
「お前、言葉遣いがちょっとおかしいよ?」
「そうでありますか」
「あんまり緊張するなよ」
「お言葉ですが、少将閣下の元へ直属の拝命を賜りまして」
「あぁ? 知ってるんだろうが」
「はい、天下のコネ...あ、いいえ! 何でもありません!」
「いいの、いいの。ここの仕事は物資の流通を円滑に行うだけだから天下のコネ少将でも務まるわけで。統括の階級は少将だけど、席が空いてたからってバロー伯が押しこんだだけ、デスクワークばっかりで戦闘経験はろくになし」
「昇進するだけの実績があられたのではありませんか?」
「バロー伯爵の甥っ子って以外に? さあね」
二人は階段を上がった。廊下の突き当たりにドアがある。そこに近づくにつれて甘い匂いが強くなった。
「この匂いは何でありますか?」
「だから統括の下は大変だって話だよ」
ノックする。倉庫だったとは思えない壁が目に飛びこむ。白い地に小花が咲き乱れ、カーテンはドレープたっぷりの薄紫色だ。しかもフリルがひらひらしている。おそらくは高級なクリスタルガラスをふんだんに使ったシャンデリアが輝く。部屋の大部分をテーブルが占めていた。脚と縁の部分は過多なほどの装飾が施されて、レースのセンタークロスが乗っていた。テーブルがあまりに大きい為に、真ん中にちょこんと敷いてあるだけだ。
甘い香りはまさにここからだ。銀色の皿には色とりどりのマカロンとクッキー、さらには一口サイズのパイやケーキ。さながらスイーツのバイキング会場である。テーブルの向こう側で背中を向けていた男が椅子ごと振り返った。敬礼をしたフランツが言葉を発する前にいう。
「そろそろホワイトアスパラの季節だぞ。でもあれはお菓子にならない。サトウダイコンの植え付けも始まる頃だな。肥料が東からも届いている」
そこで初めてトビアスに顔を向けた。
「誰だ? 見かけない奴だな」
「トビアス・ミレン曹長であります。明日付で配属となりますので書類を届けに参上いたしましたです」
「感心な子だ。出身はどこだ?」
「南州のゲルシュニアウプであります」
「州都か。ああ、あそこの中央駅の前にパン屋があったな。シュニッツェルが絶品だった。そもそもゲルシュニアウプ郊外はイチゴの産地だろう? スイーツが充実している町だ。最近は北からサトウダイコンのシロップの入荷が少なくなっているが、あれは美味しいぞ。しつこくなくて、ホットケーキにかけるだけでは勿体ないよ。東から運ばれてくる砂糖よりも...」
しばらく甘味のうんちくが続きそうだ。圧倒されているトビアスに代わり、フランツが止めた。
「統括! 甘いもんの話だけで、もうお腹いっぱいですから」
「と、統括って、あの」
トビアスは口をぱくぱくさせている。スイーツの群れの向こうにすわっているのは、まだ三十才になるかならないかの若者だ。しかし階級章には星が並んでいる。
「ああ、私が天下のコネ少将であるところのヒューゴ・ヒンメルだ。この辺り一帯の支部を統括している。君も統括と呼ぶがいい」
フランツが呆れた声を出した。
「自分で言っちゃいますか」
「うん。みんな言っている事さ。いまさら」
ヒューゴは皿の一つを二人に押しやった。
「試してごらん。南州産の小麦と、東州産のゴマの相性がこれまたなんとも絶妙なハーモニーのクッキーで」
「いいえ! さっきもいただいて、喉まで甘いんですよ」
フランツはテーブル沿いに歩き、書類を手渡した。
「アディートの報告書が上がりました。現場が北州なので詳細は不明なのですが、州境の検問所を越えて搬送された怪我人や避難者から聞き取りをしました。爆発の原因と犯人は不明です」
「ふうん。犯行声明は...聞いた事のない団体ばかりだ。『楽園創世の委員会』からも出ているんだね?」
「本部は否定しています」
「へえ。別の団体が委員会を騙るっていうのもアリだね。すると、どこが本命かな?」
「どれもガセくさいですよ! マイン橋に始まる連続テロの特徴ですね。犯行母体が特定できないんですよ。ソフィアは石炭も出ますけど、軍事的には重要拠点ではありません。なぜ狙われたのか。未確認の情報があるのかもしれないです。でもキルヒェガルテンやアディートを狙う理由がわかりません。田舎町ですよ?」
二つの町には軍の関連施設はない。農業や商業地域で、どちらかといえば鄙びた雰囲気だ。これまで内戦の戦場とはなっていない。どちらの陣営にとっても攻撃する利点が無かった。
「あの周辺には、西州からは手を出していないはずだが。無差別なのかなあ? ああ、でもアディートは南北路線が通っていたか」
「被害は小さいんですよ。電気系統がイカれただけ。人的被害だって軽症者が数人。むしろこの間の田舎町の方がひどいですよ。真っ赤な爆発がケッセンからも見えたそうです」
「そうなんだよねえ。だんだん南下しているのはどうしてだい?」
殆ど人ごとのような調子だ。
「知りませんよ!」
「とにかくいやだねえ、戦闘は。せっかく休戦状態なのに、またかき回そうって奴らがいるわけか。お菓子もゆっくり食べられやしないよ」
ヒューゴはまずクッキーを手にする。それから置いたままの書類をめくった。
「怪我人については出きる限り速やかに通したな?」
やっと責任者らしい言葉が出た。
「はい。あー、でも」
「うん? 現場で何かモメたかい? 州の往来を厳しくしろって言われたってねえ。怪我人を通さなかったら南州から反発を食らうでしょ」
州境を越えて通勤・通学者が多い地域だ。通行は完全に封鎖できない。
「通しましたが、ティーガ族らしき子供がいたんです」
「なに?」
「初めて見ました。髪も目も銀色です。同行者ともども怪我をしていたので、そのまま病院行きです。監視は付けています。で、一緒にいた連中ともども身元を確認中と。その子だけでも身柄の確保をしますか?」
「そうだね」
手が止まる。口はもぐもぐ動いたままだ。唇をぬぐい、頬杖をついた。紙をじっと見つめる。
「トビアス!」
いきなり声をかけられてトビアスは飛び上がった。
「何でありますか」
「食べてごらんって。美味しいから」
ぼそっとフランツが呟いた。
「みんな太るんだよな...」
小さな声だったが、ヒューゴはしっかりと聞いていた。頬杖をついて少し口を尖らせる。
「私は太っていない。君もだ」
「統括が肥えたって自業自得でしょうが。俺がどれだけ脂肪を増やさないようにしているのか分かっているんですか!」
「ふうん。じゃあもっと体を動かして来てもらおうかな? 彼を」
とトビアスを示す。
「連れて行くといいよ。明日からの仕事の説明を兼ねて」
「了解」
二人は敬礼をしてから甘い部屋を出た。トビアスの両肩からがくっと力が抜ける。
フランツの口元が微妙に歪んでいる。笑いをこらえているようでもあった。ぽんぽん、と後輩の肩を叩く。
「どこへ行くでありますか?」
「まずはセルファース病院。あの子供を確保に行く。お、その前に一つ片付けないと。何だかもめてるそうだ」
検疫所を出るとすぐに駅だ。操車場には車両が並んでいる。木造の倉庫が線路に沿って建てられていた。貨物列車用のホームだ。到着した貨物はコンテナごと保管されるか、ここの倉庫に保管される。先ほどジェールから到着した貨物車両はこちらに引きこまれた線路にいた。既に扉が開いていた。つなぎを着た人は駅の係員らしい。木箱が一つだけホームに降ろされた。黒々と印刷されているのは『チェステ製作所』。さらに百合が組み合わさった模様の焼き印が押されている。
軍の制服を着ているのが検疫官だ。腕章をしている。書類ばさみを持ち、駅員と話していた。そこへ幼い女児連れの若い女性が懸命に何かを訴えている。
検疫官はフランツに気が付くと敬礼をした。
「お疲れ様です」
「おう」
フランツはトビアスを示した。
「新入り。明日から統括付きだとさ」
検疫官は見るからに気の毒そうな顔になった。
「それはそれは...。まあ苦労は若いうちにしておいた方がいいよ」
トビアスはこわばった顔で頷いた。お菓子責め以外にも何かあるのか不安を覚える。
「こちらのお嬢さんは?」
駅員が答える前に彼女が口を開いた。
「私はエレノア・チェステ。この貨物の発送元で勤務しています。荷物の行き先が間違わないように伝えに来たんです」
彼女の頬は赤かった。晴天のせいばかりではなさそうだ。
ちょっと背中を屈めて、フランツは書類ばさみを覗きこんだ。腰に手を当てる。
「ジェールからの荷物だな。中身は手りゅう弾とダイナマイト。銃器類もあり、と。伝票は全て西州行きになっている」
「その通りです」
駅員が頷く。書類を指で軽く叩いた。エレノアは首を振る。
「全部? 違う。注文書通りなら十箱は北州宛てのはずなんです」
「じゃあそれを見せて」
「ありません」
またエレノアは首を振った。昨日、注文書を見ただけだ。持ち出す事は出来なかったし、考えもしなかった。
フランクも首を振った。
(彼女は配送担当者なのかな? 宛先を間違えてあわてて追いかけて来た?)
そんな推測が頭に浮かぶ。しかし物証がなければ、勝手にここで行き先を代えられない。伝票通りにするだけだ。
「すまんね、ここでは何ともできない。そっちのお嬢さんも飽きているようだ。お帰りはあちら」
「...姪です...」
エレノアはがっくり肩を落とした。傍らの少女が手を握る。
「ねえ、ご用は済んだの? じゃあ動物園に連れて行ってくれるのよね?」
「えっ、ええ」
取引には誠実さが必要だ。長く付き合う相手なら尚更だ。それはチェステ家に限らない。商いを行う者なら思う事だ。エレノアは注文書通りに荷物を動かすべきだと思った。それでいてもたってもいられずにジェールへ来たのだ。兄に心配は掛けたくないし、発送の手伝いもしている。ただしフィニーニに気づかれずに出かける必要があった。それでルチアを借りたのだ。怪我をしたので、気晴らしに出かけようと。昨日の件もあってビアンはルチアと共に送り出してくれた。しかしエレノアの願いは叶わない。二人は立ち去った。
フランクは改めて検疫官と駅員に向き直った。
「これで問題解決か?」
「いいえ」
検疫官は木箱を示す。『チェステ製作所』とあった。さらに百合をかたどった紋章のスタンプもある。
「ほら、バロー伯爵の紋章が入っているでしょ? 軍の発注品なんですって。チェックなしで通すようにって同行した連中に言われちゃって。そんな指令は来てますか?」
「いいや。でも軍用ならいいだろう」
フランツは体を伸ばして首をかしげた。
実際、木箱には危険物を示すマークが付いている。火気厳禁の印字もあった。内容物は書いていない。木箱には持ち手用に少し隙間があいている。フランツはしゃがんでそこから中を覗いた。茶色の紙しか見えない。
「油紙? ダイナマイトか?」
トビアスが尋ねる。
「よろしいでありますか? 一つ質問がございます」
言葉づかいが丁寧過ぎる。笑っていいものか、その場が固まる。トビアスは大まじめだ。
「州は違えど同じ国でありますよね? なにゆえ検疫などと称して荷物の検査をするでありますか?」
「ああ、そりゃあれだ...同一国だからこそ税関なんて呼べない。便宜的に検疫って言っているだけだ」
フランツは頭を掻いた。
「東から来た品物が、どれだけ北州に流れるのか確認する為だよ。ここを通って流通があるからな」
ケッセンを経由して物資が北へ流通していく。その品目や量を把握しておけば、北州軍の経済や軍備の状況がつかめる。
「マイン橋が破壊された上に、レルヒ橋は封鎖だろう? 北州もそろそろ危ないかもなあ」
「東州は西南軍についたのでありますか?」
「さあな」
場違いなほど大きな笑い声が響いた。停車中の車両からだ。三人の男が下りて来る。荷物と一緒に乗って来た面々だ。一人が酒瓶を持っていた。足元がおぼつかない。ホームに下りて、酒瓶をひっくり返す。まだ中身が入っていた。匂いが立ち込める。委員会で荷造りをした男たちだ。煙草をくわえる者もいた。服装はそれぞれだ。全体的に灰色っぽい服装だが、胸元のボタンは開き、寛いだ雰囲気だ。武器類と同道したにしては崩れた格好だった。
検疫官が駅員に尋ねる。
「あの連中は?」
「荷主...というか、荷物の管理者というか。ちゃんと運賃はいただいてます」
フランツが声をかけた。
「おい! あんた達、爆発物があるんだぞ。煙草を消せ」
どっと笑い声が沸いた。濃い灰色の上着を羽織った男がポケットからライターを取りだした。乾杯するかのように掲げて点火する。
「臆病者め。俺は火薬なんぞ怖くないんだ」
他の一人がくわえ煙草をぺっと吐き出す。ホームの木箱近くだ。フランツと検疫官は身がまえた。駅員はあわてて後ずさりする。トビアスはぽかんと立ちすくむばかりだ。
最も年かさの男が言った。
「とっとと箱を戻せ。すぐに発車させろ」
待たせるんじゃねえよ、と男達は口々にすごむ。フランツたちを押しのけ、駅員を取り囲んだ。
「しかし運行ダイヤがありまして。荷物検査の時間も織り込み済みなので、この車両の発車は一時間後と...」
「俺達は急いでいる。荷物はチェック無しだ。貨車を戻せ」
フランツが割って入った。
「荷物のチェックは不要だ、いいだろう。でもお前らのチェックはしなくてもいいとは聞いていない。ただでさえ連続テロの現場は南下している。身分証は?」
「バロー伯爵さまのお使いだよ」
「軍関係者なのか?」
「そうだよ」
男は上着の襟を付き出した。確かに百合の紋章が彫られたカフスが刺さっている。酒とたばこの臭いに顔をしかめながらもフランツは更に尋ねた。
「所属部署は?」
男は一瞬だけ詰まったが、片方の頬だけで笑った。
「秘密だよ。そう、機密事項ってやつさ」
「じゃあ言ってもらおうか」
フランツが襟首をつかんだ。ぐいっと引き寄せ、低い声を出す。
「所属を言わずにここを通過するには、パスワードが必要だったな?」
男の余裕は変わらなかった。
「それも要らないって言われてるんだよ。事務所に戻って命令書を確かめろ」
「よし!」
フランツが振り返った。
「トビアス! 応援を呼んで来い! こいつらバロー軍を騙る偽者だ」
男が目を眇めた。フランツの手を振り払う。上着の裾をめくるとホルスターを装着していた。銃を抜く。駅員が悲鳴を上げて一目散に逃げ出す。
「やっぱりな」
銃口を向けられてフランツが両手を挙げた。
「何で分かった?」
「パスワードなんか無い。それにそんな銃、バロー軍は装備していない。もっと良いのを揃えているよ」
「ひっかかったわけか。だがな」
男は銃を構えたまま笑った。
「ここで騒ぎを起こすのが目的じゃない。俺達は荷物を運べたらいいんだ。そこのチビ!」
視線がトビアスをとらえている。突っ立ったままの彼の体がびくぅと跳ねた。
「は、はいっ!」
「箱を戻せ。チェックなしなら一時間は待ってやる」
「え、えーと」
男の命令を聞いていいものか、彼は迷った。フランツと男の顔を見比べる。どちらも怖い顔で彼を睨む。
「おまえな~」
フランツがあきれ顔になった時だった。
ぱん。
銃声だ。
男の肩を掠める。布が裂けた。
「誰だ?」
返事はない。さっと伏せたフランツが叫んだ。
「危ないじゃないですか! 統括!」
貨車の後ろからヒューゴが現れた。無言だ。銃を構えている。彼の背後には数人の部下がいた。皆、銃を構えて男達を狙っている。
「おい、俺達は敵じゃない」
男は銃を捨てた。
言葉を発しないままだ。再びヒューゴが発砲する。男の足に命中した。体が崩れ落ちる。男達のみならず、フランツとトビアスも飛びのいた。検疫官は既に退避している。書類ばさみは地面に落ちていた。柱の陰からおそるおそる覗いている。
ヒューゴの眼つきは、獲物を狙う猛禽類そのものだ。ゆっくりと近寄り、座り込んだ男の眉間に銃口を突き付けた。
フランツが落ちた銃を拾った。手の中でもてあそび、天を仰いでため息をつく。
「君らはテロリストなんだろう? 一人ずつ片付けよう」
「待て! 気は確かか?」
ヒューゴは男を無視した。
「逃げないのか? 撃てないじゃないか」
口調には厳しさだけだ。真一文字に結んだ薄い唇には酷薄ささえ漂う。男の顔から血の気が引いた。
「そんな真似をしたら後でどうなるか分かってい...」
さらに銃口をぐいっと押し付ける。男の首がかしいだ。
「抵抗する悪漢なら撃ち殺してもどこからも文句は出ない。私を誰だと思っている? この地域を統括している者だ。報告書などどうにでもなる」
引き金にかけた指が白くなっていく。
「た、助けて!」
男の裏返った悲鳴が上がった。
ようやくフランツが制止する。
「統括! 本当にもう...」
ヒューゴの銃を押しやる。彼は地面に屈む。男の顔を覗きこんで、とんとん背中を叩いた。
「なっ、ちょっと詰め所まで来いよ。全部話した方が身の為だぞ。傷も痛いだろう? 手当してやるから」
こくこくと男が頷く。袖は赤く滲んでいるし、足からは血が滴りホームに垂れていた。声も出ないらしい。他の二人も同じだ。
フランツが手を貸して男を立たせた。ヒューゴと来た兵たちが彼らを引き取る。
「終わりかな?」
銃をしまうヒューゴの表情には肉食獣の面影はない。先ほどお菓子をほおばっていた時のままだ。
フランツは肩をすくめた。引き立てられていく連中に叫ぶ。
「統括が行くまでにはちゃんと話せよ! 取調室は密室だからな!」
下手に黙っているとどんな目に遭うか分からない...という一種の脅しだ。男達の背中がぎょっと上下した。
「それでは帰る」
ヒューゴが片手を挙げる。フランツが敬礼を返した。口元が歪んでいるのは苦笑いをこらえているからかもしれない。
残されたトビアスは何と言っていいやら。フランツと、立ち去るヒューゴを交互に見比べている。
「あ、あの、どうして統括はこんなに早く...」
「ほら。丸見えなんだ」
ホームのすぐ横に検疫所だ。ひと悶着があったのを聞きつけたのだろう。
「それにしても」
はあ、とため息をつく。膝が震えていた。額を拭って、冷や汗が流れていたのに気がついた。
「普通は動くな、とか。撃つぞ、とか言ってから撃つでありますよね? 統括閣下はいきなり発砲なさいましたよ! 一芝居を打たれたのですか、それとも...まさか本気ではないですよね...? 僕ら...自分達がいるでありますよ、それなのに」
「さあな、知るか。だから統括の下は大変だと言ってる」
「ハイであります...よく分かりましたです...」
「まだまだ。どうして秘書でもなく事務の実績もない曹長のお前が少将閣下じきじきの部下に配属されたと思う?」
どのように大変なのか実感したトビアスは、ぶるっと震えた。
「ど、どうしてでありますか?」
「務まらないんだよ! もう次々に変わっちゃうから、人材がいなくて。すぐに異動願いを出したり退役したり、脱走したのもいたなあ」
「そ、それって重罪じゃないですか!」
軍隊において脱走は敵前逃亡ともみなされ、軍事法廷で裁かれる罪にある。
「う~ん。そいつ、ある日突然いなくなったんだ。検疫所に来ないし寮にもいない。三日後にグリュースゴットの港で佇んでいるのを発見されたんだ。片手にクッキー、片手にチョコレートを持ってへらへら笑っていたそうだ。そのまま病院送りだよ」
「......」
トビアスは固まってしまった。フランツが明るく笑う。
「本気にするな、冗談だ!」
「え、え、え」
どこまでが本当やら。ヒューゴのみならず、フランツの部下であるのも大変そうだ。額にまたも冷や汗が浮かんできた。そこへ風が吹き抜けた。髪を乱す。いっそ心地よい感じだ。髪を掻きあげると、ホームに人影があった。
まるで風が運んできたかのようだ。つばの広い帽子とフードで顔の上半分は隠れている。顎は細い。わずかに見える唇は両端が上がっている。笑いが張りついているようだ。ゆったりした上着と手袋も黒だ。もうホームの端にいるヒューゴの一行に声をかけた。
「ちょっと待ってよ。責任者の人? 教えて欲しい事があるんだ。絶望のチビと七面鳥はどこにいるか知ってる? 二人で相殺しあってて確定できないんだ」
また風が吹いた。振り返った一行ははためく服を押さえなくてはならないほどだ。ヒューゴは腕を顔にかざして闖入者を見た。その周囲だけは静かだ。上着は微動だにしていない。
「知らん。お前は誰だ?」
ルーカは少しだけフードを上げた。ヒューゴの胸を見たようだ。
「うるさいな。その階級章は少将さんか。偉いんだ。それなら見せるよ。これ知っているよね。ほらよ」
ルーカはズボンのポケットに手を入れた。折りたたまれたしわくちゃの紙を広げて示す。それは赤茶の染みがあった。血の跡だ。ヒューゴは眉をひそめた。端麗な飾り文字が並ぶ。そして角ばった印章。
「この書状を示す者、僕がルーカだ。最大限の便宜を図れ、邪魔をするな」
文言はもう少し上品な言葉で綴られている。紙片はかなり乱暴に折りたたまれて、再びポケットへ戻った。
「...本物か...?」
「本物だってば。怒るよ。ああそうだ、列車はチェックなしで動かしなよ。バローの荷物なんだろう?」
ヒューゴは大きく息を吐いた。
「もちろん列車は動かす。彼らの身元が分かれば、すぐにでも」
「書類はあるじゃないか」
書類ばさみは落ちたままだ。突風が地面を打つ。木製の板が浮き上がった。それを取り、ヒューゴに示す。
「ほら!」
風がまるで命じるままに動いているようだ。異様な雰囲気に周囲は静かになった。ヒューゴはルーカの正面に立った。書類にはちらりと目をやっただけだ。
「ああ、書類とは便利な物だな。君は自由にするが良い。しかしこの連中は連れて行く。身元が確認され次第、列車は出発だ」
「何でさ?」
「私の手柄だぞ。バロー軍を名乗って武器を輸送しようとしている奴らを逮捕したのだ。事情を聞かなくてはならない」
「とにかく列車を動かすには、そいつらが邪魔なんだね?」
ルーカは板を放り投げた。目を閉じる。ふう、と息を吐いたようだ。一瞬だけ全身の輪郭がぼやけたようだ。調整のずれた映像のようだ。白いもやが体を包む。ヒューゴの服がはためいた。
口元が笑っている。ルーカを中心にするように風が渦を巻いた。つむじ風が肢体を包むように回っているのに、服は乱れていない。勢いが増す。留め具が弾け、ホームの看板が宙に舞い上がる。トタンの屋根が煽られてめくれた。貨車でさえ浮き上がり、がたがた鳴った。横倒しになる。開いたままの扉から木箱がこぼれ出た。電線が切れて火花が散る。
「退避しろ...っ」
フランツの叫びはかき消された。
竜巻と化した風が駅構内まで襲う。人々は帽子や服を押さえてうずくまる。立っている事はできない。上昇気流は時計塔まで登り、先端を揺らす。
検疫所に引き立てられていた男達も同様だった。しかし、風はまるで彼らを狙うかのようだ。ホームに飛ばされて戻って来る。火花を発する電線が寄り集まった。木箱が飛び上がった。電線と触れる。箱が裂けた。
閃光と爆音が上空へ駆け抜ける。
風は不意にやんだ。静かだ。何かが爆ぜる音だけだ。火薬と埃、そしてひどく嫌な臭い。
トビアスは倒れていた。体の上にフランツが乗っていた。おそるおそる目を開ける。
横倒しの貨車は燃えていた。その周囲でくすぶっているのが何か、トビアスにはすぐには分からなかった。焦げた棒のようで、あちこちから炎を吹いている。ボクシングをするポーズのように曲がっているのは腕や足で、ちりちりに丸まっているのは髪だ。そこから異臭が沸いている。
「...あ...」
人間だ。先ほどの男達だ。全員焼かれていた。目を逸らしたが、映像はいつまでも瞼の裏に残る。
「いててて」
フランツが体を起こした。顔には煤がついていた。ぐいっと拭って立ちあがる。制服の背中は焦げていた。
ヒューゴは腕を抑えて立っていた。全身に煤を浴びている。
笑いを帯びた声はルーカだ。
「事故って怖いねえ。あ~あ列車も燃えちゃったぁ」
悠然と裾をひるがえした。ゆっくりとホームを歩いて行く。周囲の騒ぎなどまるで無いように。ヒューゴが銃を構えた。しかし構内は大混乱だ。パニックになった人々が縦横無尽に動き回る。ち、と小さく舌打ちした。銃をホルスターに戻してフランツを呼ぶ。
「動けるか?」
「はい」
まだくすぶっている三人をちらりと見る。親指だけで示した。
「彼らを収容しろ。私は戻る。後で報告を」
「はい」
フランツは敬礼して見送った。ため息を付く。ヒューゴと入れ替わりに検疫所から兵がやって来る。それに向かって大声で叫んだ。
「市民の退避と負傷者の救護に当たれ! 市内の兵を戻すように連絡しろ!」
ルーカを追うよりも、市民の安全が優先だ。次々と命令を出しながらもホームを大股に横切る。駅事務所へ急いだ。
「列車の運行を全て停めろ」
駅員が目を丸くする。
「そんな事をしたら混乱します」
「構わないさ。もう充分混乱している」
彼は頷いた。早速あちらこちらに電話をかけ始めた。他の者は消火器を手にして走る。検疫所から出てきた兵も加わり、消火活動と救護が始まった。
トビアスはずっとフランツに付き従っていた。彼を見上げる。
「おかしいでありませんか? 被害が小さすぎます」
「このありさまでか? ...と言いたいところだが、その通りだな」
「はいです」
トビアスは隣のホームを指さした。天井が爆風でめくれているが、柱など煤を浴びただけだ。
「通常の爆風は主に上へ向かいますが、横方向へも行くではありませんか? 今回の爆発はほぼ上方向だけに向っているようであります」
改めてフランツは周囲を見渡した。貨車一台分のダイナマイトが爆発したのなら、ごく近くにいたヒューゴも黒衣の者も吹き飛ばされているはずだ。フランツやトビアスも服が焦げた程度では済まなかっただろう。駅の破壊状況もさほどひどくはない。トビアスの言うように水平方向の被害が極端に少ないのだ。
トビアスは上着のボタンを開けた。シャツの襟首をひっぱり、大きく息をつく。
「自分は見てしまったのであります。爆発した瞬間、火花がぐるぐると爆風と取り囲んで、そのせいで火柱はまるで噴水のように...」
炎は吹き出し花火のようだった。まっすぐ天へ撃ち上がったのである。しかも男達だけを風がさらった。彼らを火が包みこむ。それから下へまっさかさまだ。さらにルーカは笑っていた。
「...う」
口を抑える。フランツが黙って少し離れた場所を示した。トイレの案内板だ。しかし遠い。トビアスは近くの柱に手を付く。胃から込みあげるのを抑えきれない。びしゃり、と吐しゃ物が床に散った。きりきりと痛むみぞおちをさすり、フランツの元へ戻る。
「失礼しました。...続きでございます。噴射口をよほど加工していないと、あのようには吹き出しませんです。複数の箱なら尚更であります。でもあれらは見た所は唯の箱でした。とても不可思議な現象なのです...」
言葉が詰まる。再び口元を抑えるが、何とか耐えた。
「お前は爆破物に詳しいのか?」
「武器の調達部におりました。まあ詳しい方ではあるかと存じます。この爆発も妙ですし、アディート郊外も変でしたです」
またトビアスは震えた。
「爆発を見たのですが...。最初は炎ではなくて...なんというか...丸い、ドームのような光が広がりましたのです。あんな光を出す兵器を見た経験はございません」
「ああ。そうらしいな。とにかくお前には」
とん、と頭を軽く叩く。
「怪我人がいないか見てくれ。重傷者ならすぐに搬送だ。駅員か検疫所から来る者に任せていい。軽傷は駅の改札前がいいか。そこが立て込んでいるようなら検疫所のロビーに誘導。怪我の程度で病院に運ぶ順番を決めよう。終了後、連絡に来い。いいな?」
「あ、あの、自分はまだ正式に拝命を...」
「ボランティア活動は嫌か?」
「大好きです!」
敬礼をしてトビアスは駆けだした。
人々が右往左往している。充満する煙で視界が悪い。あちらこちらで警笛が鳴る。余計に気持ちを焦らせてしまい、通行の混乱に拍車をかけてしまう。消防車はまだ到着していない。数人の駅員が消火器を持って走って行った。
「怪我人はいませんか? 怪我人は!」
トビアスは叫びながら歩いた。不意に肩を掴まれる。見知らぬ男だ。
「テロか? 軍隊と警察は何をしているんだ!」
ハンカチで口元を抑えている。背広は爆風を浴びたのか白く汚れていた。
「ビジネスがパーになったらどうしてくれる?」
今にもトビアスの襟をつかみかねない勢いだ。用事があるのはみんな同じなのだが、制服姿を見て怒りが爆発したのだろう。
「す、すみません!」
彼の剣幕に、とりあえず頭を下げてしまうトビアスだった。
そんな彼を助けるように泣き声が聞こえる。まだ怒鳴り足りないような男の前から逃げ出す。少女が顔をこすりながら泣いている。スカートから覗いた足には包帯が巻かれていた。
「どうしたの? お母さんは?」
声をかけても泣くばかりだ。
「おいで。えーと、怪しい者じゃなくて、軍隊の人だから」
軍隊、と少女が顔を上げた。頬は濡れてぺとペとだ。煤のせいで幾つも黒い筋が流れている。
「叔母ちゃんが駅の人と会うって...け、検疫? その後で動物園に連れて行ってくれるって言ったのに...」
「え、そうなんだ。とにかくおいで」
立ち止まっていると、人がぶつかっていく。トビアスは少女を抱えるようににしてその場を離れた。歩きながら尋ねる。
「お名前は?」
「ルチア。ルチア・チェステ。叔母さんはエレノア」
「東州っぽい名前だね」
「うん、ジェールから来た」
「よく言えたね」
駅の事務所はドアが開いたままだ。険しい表情の乗客が集まっている。また怪我人が続々と運ばれ、もう満杯に近い。
二人は検疫所に向った。燃えている車両の傍を横切る。もう遺体は収容されてはいるようだ。消火剤で車両は真っ白だ。もう炎のオレンジはなく、煙がもうもうと立ち込めている。ルチアが震えていた。現場が彼女の目に入らないようにかばっていたつもりだったが、首をのばしていた。
「あっ! あれに荷物を積んだよ!」
「え、荷物と一緒に来たの?」
「ううん。叔母ちゃんと東西鉄道で来た」
彼女は下を向いた。今更ながら余計に不安になったようだ。
「ルチア? ルチア!」
呼ぶ声がする。
麻のジャケットを羽織った青年が追いかけて来た。金髪に青い瞳だ。ルチアの口がポカンと開いた。
「あっ、遺跡にいた人...!」
「シュペトレーゼだよ」
トビアスが尋ねた。
「お知り合いで?」
「ええ、顔見知り程度なんですが」
ルチアは少しだけ笑みを浮かべた。
「トカゲが怖い人も一緒なの?」
「ううん、あの人はまだジェールにいると思うよ」
青い瞳がくすぶる車両を眺めた。
「とにかく危険ですから」
トビアスは二人を促した。
検疫所の扉も開いていた。しかし、こちらには人影が少ない。爆発の現場を通らなければならないせいか。シュペトレーゼはためらった。しかしルチアにしっかりと手を掴まれている。
「迷子で怪我人であります」
キーラは腰を浮かせて電話中だった。
「はい、ケッセン発は全て停止しております。現在、状況を把握中で...ええ!」
相変わらず胸元は眩しいが、声は緊張感に満ちていた。乱暴に受話器を置く。もう次の電話が鳴っていた。そちらにも素早く対応する。さすがに軍関係の受付を一人でこなしているだけはなる。感心していると、トビアスにじろりと視線を送る。
「何?」
「あっ、はいっ! 怪我人かつ迷子で」
迷子でもある為、保護したのだが。ルチアが怯えたようにシュペトレーゼの手にすがった。キーラの迫力に押されてしまったようだ。
「軽症者ね。ロビーで待ってて! 名前を名簿に書いてくれる?」
バインダーを乱暴に二人の前に出す。一旦はペンを手に取った。しかしためらう。ルチアが受け取った。自分の名前を記入する。それからシュペトレーゼ、と書いた。
「シュペトレーゼさん、苗字は?」
「書かなくていいよ、ルチア」
キーラがちらっと二人を見上げた。
「遅摘み酒? 本名なの? まあいいわ。あっちで待機して。順番に病院へ搬送するから」
びし、と暗いロビーを示す。電気が切れている。薄暗がりではソファがうずくまった動物のようだ。そこに見知らぬ老人が横たわっている。二人は寄り添って立ったままだった。
ルチアが一人で心細いだろうと付いて来ただけだ。まさか南州の軍施設に入るとは思っていなかった。
ヒューゴが急ぎ足で通りかかった。
「ここもまもなく一杯だな」
名簿に目を落とす。ん? と顔をしかめた。
「...シュペトレーゼ? シュペトレーゼさん、いらっしゃいますか?」
はい、とルチアが手を挙げた。ヒューゴが周囲を見渡した。声の主を探している。背が小さくて埋もれてしまったのが幸いした。シュペトレーゼはルチアの腕をそっと下ろした。そして顔を背ける。
「僕はここで」
誰にともなく呟いた。ルチアの手をそっと引く。
「呼ばれたみたいよ?」
「人違いだよ」
シュペトレーゼは強くルチアの手を握った。ころん、と彼女のポケットから何かが落ちた。丸くて小さい。ユリの紋章だ。しかし二人とも落とし物に気が付かなかった。もう駅構内は溢れているのだろう。こちらへも怪我人がひっきりなしにやって来る。二人は急ぎ足で雑踏に紛れた。
そこでひと際声を張り上げているのはエレノア・チェステだった。
「...子供がいない、はぐれたの! 探して!」
駅の事務所は混雑している。シュペトレーゼとルチアがやって来た。包帯の少女は目立つ。ずっときょろきょろしていたエレノアが気が付いた。
「ルチア!」
「叔母さん!」
ルチアが叫んだ。もう要らないとばかりにシュペトレーゼの腕を振り払う。一目散に叔母をめがけて走った。
「ルチア! 無事だったのね!」
二人がしっかり抱き合った。ルチアがシュペトレーゼを示す。
「あの人が連れて来てくれたの。遺跡にもいた人だよ」
「そうなんですか...。ありがとうございます」
エレノアは煤で汚れた頬を拭い、何度も頭を下げた。
「いいえ、お礼には及びません。僕は何もしていませんから」
事実である。声をかけたらしょっぴかれてしまっただけだ。でも無事に姪を連れて来てくれただけでエレノアには充分だったらしい。ホームで列車が爆発している。万が一巻き込まれたら...と気が気では無かっただろう。エレノアがルチアと手を繋いだ。
「とにかく出ましょう。私はエレノア・チェステです。えーと...」
「シュルツです」
二人は名乗り合った。
三人は駅を出た。夕日が眩しい。周囲の道路は緊急車両が塞いでいる。電気系統も一部おかしいようだ。信号が点いていない交差点もある。警官が交通整理をしていても間に合わず、あちらこちらで軍人や警官が拡声器で怒鳴っていた。
「はあ...」
エレノアは煤で汚れた額をこすった。
「ウチは工業製品を西へ運んでいるんです。でも荷物がダメになっちゃった...。どうしよう...。シュルツさんはどちらへ?」
「僕はゲルシュニアウプまで行きたかったんですが...」
ジーノチカは北へ帰れと言っていたが、南へ行きたかった。エイミールとベルクマンは見当たらない。どうすればいいのやら、途方に暮れている。惨事の現場で一人になると、改めて守られていたのを感じた。きっとまだシュペトレーゼを探しているのだろう。心配しているに違いない。考えあぐねた様子を見かねたらしい。エレノアが考え込んでいる。
「この騒ぎですもの。列車がいつ動くか...。今日、動物園は無理かも」
エレノアもルチアも煤まみれだ。目当ての場所に行けないようだ。見るからにルチアはがっかりした。エレノアは少し屈んでルチアの目線になった。
「しょうがないね~。ケッセンの伯母ちゃん家へ行こうか」
「うん! あ、シュルツさんも来る?」
「ううん、僕は」
エレノアは笑った。
「しばらく列車は止まるみたいですよ。私だってすぐにジェールへ戻っても彼氏に怒られそうだし。一緒にいかが?」
「ご迷惑では?」
「二人も三人も一緒。一日くらいは面倒を見てくれます。伯母夫婦は生粋の南州の人間で、お客さんを連れて行くと喜ぶんですよ。お連れはいるのですか?」
「あ、ああ。いいえ、僕は一人です。その方に泊まる場所を紹介していただければ助かります」
シュペトレーゼは迷っていた。エイミールとベルクマンを探すべきか。はぐれたままでは、また迷惑をかけてしまう。だがジーノチカの言葉が脳裏をよぎった。
...お守りはどうした...
自分は守られているだけではないのだ。身分証も持っている。
「ね、行こうよ」
さっきまでの泣き顔はどこへやら。叔母の腕にぶら下がるように抱きついたルチアが笑う。
「うん、じゃあ少しだけ...」
エレノアについて歩き始める。『生粋の南州生まれ』がどのような性質なのか、シュペトレーゼは知らない。人懐こいというのか、距離感が近いのだろうか。見知らぬ家に行く不安はある。足が重い。後ろめたさと疲労が一気に両肩にのしかかってきた。
窓ガラスが激しく鳴った。アウゲンは振り返った。
「何だ、風か?」
肩をすくめる。むき出しの灰色の壁に囲まれた部屋は空気が重い。縦長のスチール製のロッカーと、木製の机があるきりだ。向かい合わせに椅子が二つ。角ばった背もたれはすり減っていた。がたがたと震えている窓は高い位置にある。アウゲンは手を伸ばして鍵が閉まっているのを確認した。
椅子がきしむ。アウゲンは席に戻り、入り口を背にして座っている男を見つめた。
「風だな」
サングラスの男も呟いた。サッシャ・コーエンだ。机に乗っている書類をまとめてとんとん、と揃える。
「久しぶりだな、ユージン」
「違うよサッシャ。もっとも何枚も身分証明書がある。その場で名前が変わるんだ。今はアウゲンだよ」
「まさか君がこの商売を選ぶなんて、大学時代には考えもしていなかった」
「お互いね」
アウゲンはふと遠くを見る目付きになった。声は落ち着いた柔らかさだった。彼の生まれと育ちの良さを示すようだ。
「家は焼けてしまった。両親は大怪我。病院にも運べず息を引き取ったよ。貴族連中が優先、一般市民は後回しだ。僕は一文無し、店が再開できる目途もなし。君は...ああ...父上が...」
「そう、逮捕後に亡くなった。会社は解体。君と同じだ。家族は国に踏みにじられた。俺だけ東へ来たんだ」
「そうか...。僕はそんな国の為に兵役なんて真っ平だ。金は大事だよ。身に染みた。手っ取り早く稼げる仕事に飛びつくってもんさ。僕も、まさか君が『楽園創生の委員会』副委員長様なんて驚いた。しかもこの取引とは」
二人は沈黙のままに見つめ合った。大学を卒業した年に内戦が勃発したのだ。踏み出したばかりの新しい人生は砕けた。そして十年。それぞれがたどった道を思い返している。
アウゲンがまた口を開きかけた。
まるでそれが合図のようだった。
部屋に強い光が差し込む。同時に爆発音が轟いた。ガラスが痺れる。甲高い悲鳴を上げて表面にひびが走った。二人は腰を浮かせた。再びアウゲンが立ち上がる。窓から外を覗いた。時計塔が揺れている。建物の間から大量の煙が沸き起こる。その合間から炎が噴き出していた。
「爆発? またやったのかい...」
アウゲンの呟きをサッシャが聞き咎める。
「俺達じゃない。『委員会』はテロはやらない」
「へえ、自前の軍隊をお持ちなのにね。でも仰る事は了解しましたよ、副委員長」
アウゲンは肩をすくめた。軽い話口調に戻った。壁によりかかる。窓の外からは、人々の叫びや警笛が響き始めた。あっという間に音の洪水となり、閉め切った室内にも侵入する。
「あんた達が実行したのはマイン橋とアディート、それにケッセンでしょ。東州では裏通りの猫でも知っていますよ」
あくまでアウゲンとしてふるまうつもりのようだ。サッシャは大きくため息をついた。机を指で叩く。
「ユージン...」
「だからアウゲンですってば。さっさと取引しましょうよ。テロリストの副将さま」
「違う。誰が聞いているのか分からないよ。めったな事は言わないでもらおうか。君は知っているのか? 誰が連続テロを起こしているのか。本当は全て西南軍か?」
アウゲンは椅子に座る。肘を付き、横を向いたままだ。
「誰が聞いているのか分からないのに、めったな事は言わないでもらいましょうかね」
片手だけを伸ばして書類を取った。
「お花は確かに到着を確認しました。僕の方で回します。仕事のおかげで裏にもコネがありますんでね。幾らでも買いますよ」
「この取引は西南軍も承知なんだろうね?」
「使い走りでもらえる報酬なんてたかが知れているんですよ。まあ『委員会』は口が堅いって信じていますよ」
上層部には秘密の裏稼業らしい。上着のポケットに手を入れる。茶色い封筒を取り出してサッシャに向けて押しやった。
「今は検疫のホームへ入っちゃってますよ。大丈夫でしょうね?」
「検査なしに出来るよう手は打った。そうだ、目は色々と見ているんだろうね?」
アウゲンはそっぽを向いたまま口元だけで笑った。
封筒はもうしまってある。しかしサッシャも上着に手を入れる。一瞬身構えたアウゲンだったが、出てきたのは札だった。帯封が付いたままだ。そこから一枚を引き抜いて卓上に置いた。
「もちろんこれも見えるだろう? 連続テロの犯人は誰だ?」
サッシャも、同窓生を麻薬の売人兼情報屋として扱う事にした。それが彼の望みでもあり、サッシャのメリットにもなる。苦い塊が腹の底で湧いた。アウゲンは唇を歪めた。
「もう少し近づいたら見えるかもしれませんね」
札が少し近づく。横目で見たままアウゲンが呟いた。
「...ソフィアとキルヒェガルテンは『西の白』。意味はご理解いただけるかな?」
「ティーガの神話かな? 冥界から太陽の亡霊を呼びだして巨大な力を操る...という伝説だな。それがどうしたんだ? 誤魔化さないでもらおうか」
札がサッシャの手元に引き寄せられた。アウゲンは頬杖を付いたままだ。目だけでそれを追った。一枚追加されてから口を開く。
「信じるも信じないもそちらさん次第ですよ。僕は見たままを言っている、何せ目ですからねえ。あいつらは化け物ですよ。竜巻や嵐を起こせるなんて、僕だって見てなければ信用できない。何だってあんな連中が居るんだか...」
「結構! じゃあ、そうなんだろうね。彼らの目的は? なんでソフィアなんて田舎町を襲った?」
札が追加されてまたアウゲンに近づく。
「ソフィアには遅摘み酒が入荷したって情報があったから。南州から義勇兵っていう名のごろつきが数人と、『西の白』ルーカ。もちろんバロー伯の肝いりでね」
「遅摘み酒? 何の隠語だ? ルーカとは?」
アウゲンはこの質問を無視した。
「奴は谷に乗り込むつもりだったようですがね。最初にダムを破壊しちまったもんだから大混乱。行くに行けなくなっちまったらしいですよ」
「おいおい、行き当りばったりかい?」
「そういう奴です。キルヒェガルテンだって行きがかりですよ?」
「それで人を殺せるのか、ルーカって奴は。正体は?」
札が数枚追加された。アウゲンの顔が曇った。ひどく迷っているようだ。相対するのはただの取引先か、旧友か。
「本名は知りませんね。顔もはっきりと見た事ない。小柄な奴です。まだガキなのか。それも分からないなあ。近づこうなんて気も起きませんよ。全くもう...」
人間の体を、気に入らないおもちゃのように放り投げた。枝葉のざわめき、暗い空から滴る黒い血。高笑い。惨状を思い出したのか、アウゲンは小さく震えた。
「ソフィアで逃げ遅れた奴は」
人差し指で指を掻き切って見せる。
サッシャは反応しなかった。
「アディート駅は? 誰だ?」
「えーとねえ。どうだったかなあ」
アウゲンが肘を付いた。顔を手で覆う。指の間から机上を見ている。サッシャが札を追加した。
「思い出しましたよ。ティーガ族でした。そうそう、北事変の生き残りだそうで。クロイツベルクに監禁されていたのが脱走しちまったらしい。今、西州軍も北州軍も探していますよ」
「名前は? 幾つくらいだ?」
「ルーカは絶望って呼んでいましたよ。年は...まだチビみたいだったけどなあ」
アウゲンは首をかしげた。
「八か、いっても十歳くらい。赤ん坊の頃に連れて来られたのかなあ」
『絶望の黒』。冥界の太陽の一人だ。それがティーガ族。サッシャの胸がどきりと鳴った。だが素知らぬ顔をする。
「冥界の太陽か? どうしてテロを起こしている? 政府の転覆でも図っているのか?」
「分かりませんよ。もう一人『東の赤』ってのがいる。こいつは...さて」
言葉を切る。札が増えた。
「...ソフィアから来たガキでね。素直なのか何か企んでいるのか分かりません。ただ...」
アウゲンが無言になる度に枚数が増えていく。
「『北の黒』と一緒にいるらしいですよ」
「どこだ?」
「残念。本当に知らないんですよ。ケッセン入りして、今は西南軍の監視下にあるようですね。ルーカは知っているかもしれないな。なんでも冥界の太陽を使う奴ら同士は引きあうというか、お互いの居場所が分かるらしいですよ」
サッシャは札を追加した。
「ルーカはどこだ?」
「知りませんね。ケッセンではここが連絡場所なんで、来るかもしれない。ところでこっちも教えて欲しいんですけど、『委員会』の本当の目的は何です? 人を集めて武器を揃えて。その為に金集めですか」
アウゲンは札に手を伸ばした。だがサッシャの指はまだ札の上だった。
「君たちがこうして色々と買ってくれているおかげだ。これ以上は、こっちに情報料を払う必要があるぞ」
外では騒ぎが一向に収まらない。さすがにサッシャも眉をひそめる。
「かなり大きいな。駅か?」
「うーん、だとすると荷物が心配ですね」
「そうだね」
ドアのノブががちゃがちゃ鳴った。鍵が閉まっている。アウゲンが机を回って歩いて開けた。いきなり扉が開く。力を込めていたのか、よろけるようにルーカが入って来た。
「ちょっと! 閉めださないで! ドアをぶっ壊していいの?」
「ルーカ! この騒ぎは、またあんたが」
「うるさいなあ、もう! やっちまったよ」
ルーカの表情はベールの下だ。だが声は明るく、体を左右に揺らす。楽しそうだ。
「ねえ、今の爆発! 火薬を全部花火にしてやったよ。見た?」
「何だと?」
「だってさ。コネ少将がバローの荷物なのにいろいろと難癖つけるんだもの。何だか荷主が邪魔だってうるさいから吹き飛ばしてやったよ。そしたら荷物まで一緒に燃えちゃった」
サッシャとアウゲンは息を呑む。廊下から焦げ臭いにおいが吹き込んだ。ルーカの衣服にしみ込んだ爆発の残り香かもしれなかった。
「だから荷物はまた送ってよ。代金は僕が払ってやる」
「人を燃やしたのか?」
「だからそれがどうしたって。代わりは幾らでも調達できるんだろう?」
ルーカは大きく伸びをした。ローブがめくれる。ブラウスも黒だ。ゆったりしたデザインだが、腰の細さが逆に目出つ。
「あーあ、絶望が邪魔してくれちゃって」
サッシャが立ち上がった。口を挟む。
「お前がルーカか。絶望とは『北の黒』で合っているな?」
「そう。近くにいるみたいだから僕は来たんだ。爆発を抑えやがった。奴が手を出さなければ、この一帯は火の海! あんた達だって無事じゃいられなかったよ」
主に上空へ向かった爆風でさえ窓を壊すほどの爆発だった。駅を臨む建物だ。ルーカの言う通りなのだろう。
「そいつは...『北の黒』はティーガ族なんだな?」
「んー? そうだねえ。ところでお前は誰だよ」
「誰でもいい。『北の黒』はどこにいる?」
ルーカは手をぶらぶらさせた。
「随分気にするね。まるで別れた恋人を追い掛けているみたいじゃないか。そういえばさ」
手袋がまともにサッシャの鼻先に突きつけられる。すんでのところで避けた。危うく眼鏡を奪われるところだった。
「何だよ、その黒メガネ。部屋の中だっていうのに、そんな真っ黒なのをかけてんだぁ」
「目が弱いだけだ」
「へぇ。レンズの下は何色のおめめなんだよ? まさか銀色じゃないだろうね?」
「お前こそ室内でも帽子をかぶっている。頭が弱いんだな。それとも顔か?」
ふ、とルーカが笑ったようだった。体が一瞬もやに包まれる。寄り集まって光となり、弾けた。つむじ風が部屋で渦掻く。テーブルにあった札が舞い、サッシャの眼鏡を弾き飛ばした。
「く...」
片手で顔を抑えたものの、ルーカを鋭く睨む瞳は黒に近い茶色だった。
「あれ、なーんだ。ティーガじゃないのか」
床に落ちた眼鏡を踏みにじった。つるがひしゃげてガラスが割れた。それをサッシャに向けて蹴る。
「家も家族も故郷も! 全てを奪われた男が身元を隠して連邦政府へ復讐を! なんて筋書きかと思っていたのにさ」
「ご期待に添えなくて残念だったな」
「全くだよ。ふん、つまらない。チビさんと遊びに行こうっと」
つん、と顎を上げる。戸口をくぐるなり、ドアがひとりでに閉まる。どん、と重い音がした。
サッシャは腕組みをして、砕けた眼鏡を見下ろした。
アウゲンに言う。
「東州に戻るよ。また品物と人を揃えないといけないからな」
「なるべく早くお願いしますよ。おっと代金は返してもらえないのかな?」
「駅まで運んだだろう。爆発はこっちのせいじゃない。ルーカがやったって白状していたじゃないか。あちらに請求してくれ」
「カンベンしてくださいよ」
「委員長と相談だな。追って連絡するよ」
彼が出て行った後、アウゲンは大きなため息をついた。椅子に崩れるように座る。サッシャが机に出した札は部屋中に飛散した。ルーカの風のせいだ。
「...クロイツベルクに帰りたいよ...」
内戦前のあの頃へ。
だが今はアウゲンだ。その名の役割に従うべく、のろのろと札を拾い集める。ぐしゃりと握りつぶしてポケットに押し込んだ。
ツヅク! 次回 6話 ~南州ケッセン・グリュースゴット ピドーたちはどうした?
お読みいただきありがとうございます。
シュペート、身の程知らずにやらかしてます。
次話よりピドー達に話が戻ります。
今回の初出さん
ヒューゴ・ヒンメル 南州軍の少将。無類の甘い物好き。ん? この変人さと苗字? その通りです。
フランツ・マイヤー 南州軍少尉。ヒューゴの片腕。まともな感覚の人のようです。
キーラ・カッツェ 南州軍曹長。受付担当。
トビアス・ミレン 階級未詳。軍曹あたりかな? 変な言葉使いながらも素直で真面目




