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異通者奮闘記  作者: ラク
二章:帝都ウィンベル
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疑い

すいません。ちょっとだけ遅くなりました。そして、ごめんなさい。本当に投稿するギリギリまで手直ししたのですが、もしかしたら誤字脱字、または表現が変なところがあるかもしれません。どうかご容赦ください。


すぐに行われた尋問は最終確認といった感じで簡単なものだった。

なんでも、既にあの場に居たアイズ達や野次馬にも話は聞いていたらしく、僕から聞きたかったのは本当に最終確認の意味だけだったらしい。

その為、時間は5分もかからなかった。

少し年老いた…40代か50代ぐらいの礼服を着たおじさんに質問される。


「…では、君が来たときには既に喧嘩が始まっていたのかね?」


「えぇ」


コクリと頷く。

僕が姿を確認したときには言い争いがはじまっていたのは事実だ。


「よろしい。では、最後の質問だ。あの場から逃走した黒いローブを羽織った人間に心当たりは?」


「…ありません」


一応、予測はしている。

だが、ありえないと言われるのがオチだろう。

…僕の予想が当たっていれば、相手は既に死亡、もしくは討伐されたとされている人間だ。

到底信じてはもらえまい。


「では、これにて尋問を終了する。お疲れ様ユキト・ウォンスール君」


「いえ、こちらこそ。お役に立てたのなら幸いです」


にっこりとおじさんに笑われて、こちらも微笑み返す。

手錠を外して貰い、ようやく自由になった腕を少し回す。

ずきりと胸が痛んだが、少しの痛みだったのであまり気にならない。

まだ書類の整理があるとのことなので、僕だけが尋問室から出ようとして、ふと気になったことがあるので尋ねてみる。


「すいません。1つ質問いいですか?」


「うん?なんだい?」


「先に争っていたという柄の悪い兄ちゃ…じゃなくて青年2人はどうなりました?」


「ああ、彼らならまだ牢屋のほうだよ。君の友達の…アイズ・ルートラ君にやられて、まだ目が覚めてないようでね」


「…そうですか」


どんだけ派手に交戦したんだろう?と思いつつ、礼を言って尋問室を出る。


「うん。無事に終わったようだね。それじゃあ、行こうかウォンスール君。出口まで案内するよ」


廊下の壁に背中を預けていたロイスさんが、微笑を浮かべながら話しかけてきた。

どうやら僕を待っていてくれたらしい。


「わざわざすいません」


「構わないよ。オレも仕事がある程度片付いて暇だったからな」


既に日が傾き、日差しは赤くなりはじめており、あと数十分もすれば真っ暗になるだろう。

そんな西日が差す廊下を二人で並んで歩く。

話題は自然とお互い知っているロナのことに移った。


「…それじゃあロイスさんがロナ達を救助したんですね」


「そうだね。オレとしてはあの時ロナ君が生きてたことがびっくりだったよ。何せ凄い火事だったからね」


なんでも昔、ロナの友達の家が火事にあい、その燃え盛る家の中で消火作業をしながら友達を守っていたらしい。

その話を聞いて、ロナらしい行動だ。と思ったのは秘密だ。


「あの時は本当に驚いたよ。まだ幼い女の子が二人の友人を火から守りながら魔法を行使してたのは…」


しみじみと腕を組んで言うロイスさんを見て、本当に凄かったんだなぁと感じる。


「オレも精霊魔法は職業柄よく使うんだが、あんな幼い時期から使ってるのは珍しかったしね」


「えっと…確か精霊魔法って精霊が見えないと使えないんですよね?」


「ああ、そういえば君も精霊魔法を使うのかい…って先ほどの質問を考えれば無粋な質問だったね」


「えぇ、まだ試したことも無いんですよ」


興味はあったのだが、何分時間が無かった。

精霊魔法を使うには、まず自身の適正がわからないと話にならない。

精霊魔法の適正を計るには精霊陣という特別な陣が描かれた部屋が必要で、それは大抵の教会にある。


その精霊陣に自身の魔力を流し込むと、精霊が現れ、契約できるらしい。


「ふむ、興味があるんだったら行って見るといい。この街にも教会はあるしね」


「…時間あればいいんですけどね」


何せ、忙しい。

色々ありすぎてつい忘れそうになるが、一週間後にはこの国の皇子との決闘なんて約束があるのだ。


…いや、手札を増やすのにはいいのか?

でも適正がなければ時間の無駄だしなぁ…。


「行ってみるのも1つの手…か」


ぽつりと口にして、考えてみる。

精霊魔法は純正魔法と違って魔力消費が少ない。

これは精霊から力を借りるため、自身の魔力があまり必要がないからである。

…ならその分魔力消費が浮くし、手数は増やせるかもしれない。


そうこうしているうちに騎士団の出口に辿り着く。

ロナがまだ来ていないところをみると、あちらはまだ牢から出ていないのだろうか?


「それじゃあ、オレは先に仕事に戻ることにするよ。君の手荷物とかロナ君が持っていた杖などはそこの兵士に渡してあるから声をかけて出して貰ってくれ」


「あ、はい。わざわざありがとうございました」


「いや、本来なら君が怪我を負う前に騎士団(オレたち)が出なくちゃいけなかったんだ。礼を言うのはこちらだよ」


「…それでも、色々とありがとうございました」


背を向けて騎士団内部に戻っていくロイスさんに重ねて礼を言って、頭を下げる。

たぶん、色々と配慮してくれたんだと思う。

あんな騒ぎを起こしておいて流石にこんな簡単に開放したりは普通はしないと思う。

それなのにこんなに簡単に出してくれたのは単にロナという知り合いがいたからだろう。

…まぁ、皇女ユリアも絡んでるんでるから王様も圧力を掛けてるだろうけど、まぁそこは気にしない。


「さて、このまま待ってても暇だし、武器とか返して貰うかね…すいませ~ん」


入り口脇のカウンターに居た鎧を着た厳つい顔のおじさんに声をかけ、牢屋に入れられる際取られた物を出して貰う。

ナイフと魔工石とローブとロナの杖にアイズの剣…あとは僕の鞄だ。


自分の鞄の中身を確認したり、ナイフが刃こぼれしてないかをチェックしたりして時間を潰していると、ようやくロナとアイズが出てきた。


「随分と遅かったな、二人とも」


「…あはは、ちょっと色々あってね」


「ホント、色々あったわね…」


苦笑いしているアイズと、頬がひくついてるロナを見て、何があったんだと問いかけたかったが、ロナの様子を見る限り聞けば地獄が待っていそうな気がしたので自重しておく。


「ま、それは追々聞くとして…今日はもう休まないか?宿は取ってあるんだろ?」


昨日から徹夜でユリアを抱えて、徒歩でウィンベルまで来て、牢屋に入れられたり、王様と会談したり、ユリアに乱入されたり、図書室で本を読んだり、皇子に決闘迫られたり、街中を歩き回ったり、ロナに殴り飛ばされたり、食事したり、武器を探したり、トラブルに巻き込まれたり、仕舞いにはまた牢屋に入れられたりと、流石に疲れたと言うのが僕の本音だ。

…と言うか、よく耐えたな僕…(汗


「そうね。たしかに今日は色々ありすぎてアタシもちょっと疲れたかも…」


「それじゃあ、早速宿に向かうとしようか?」


「あ、その前にロナ。悪いけど治療お願いしても良いか?」


歩いているときは特に痛みもなかったのだが、これから街中を歩くのなら、人とぶつかるかもしれない。

そのときのことを考えると今この場で治療してもらいたい。


「そうね、あんまり放置してて悪化してもまずいし…治療を先にしましょうか」


ロナがそう言ったので、預かっていた杖を渡す。

ついでにアイズにも剣を返す。


「ほら、傷見せて…うわ~改めて見るとホント痛々しいわね」


「…仕方ないだろ、咄嗟に飛び込んだんだから」


「もうちょっと後先考えて行動しなさいよね…まったく。じゃあ、じっとしててね?」


ぼぉっと杖の先端が青く小さく光り、ロナの口から呪文が流れる。


「―清純なる精霊よ、我が友に清らかなる水を、空を舞う傷ついた翼に再び活力を与えたまえ、水の抱擁(ヒール)―」


胸にあった青黒い痣に向かってロナが杖の先端を突きつけると青白い光が広がり、みるみる痣が綺麗になっていく。

初めて見る癒しの魔法におお~と感動しながら見ているとロナがふぅっと息を吐くと、光が収まる。


「よし、これで終わりっと…ちょっと体動かしてみて」


そう言われ、ゆっくりと体を動かす…うん、痛みはない。

ロナとアイズから少し離れ、辺りに危険が無いことを確認してからナイフを抜く。


「よっと」


いつもより少しだけ動作を大げさにしてナイフを振り回す。

縦、横、斜め、中段、下段、上段と幾つか振ってみるが、痛みも違和感もない。

完全に治癒されたようだ。


「うん、大丈夫そうだ。ありがとロナ助かったよ」


「どういたしまして、次からはもっと気をつけなさいよ?」


「ユキト君もそれは重々承知しているだろう…それじゃあ、日も暮れてきたし宿に行こうか?」


アイズがそう口にすると、僕もロナも頷き、返して貰った鞄を肩にかける。

大通りに繋がる狭い路地を歩きながらアイズと雑談をしていると自然と話は尋問の話題に移っていく。


「そういえばユキト君は聞かれたかい?黒ローブを羽織った人物のことを」


「ああ、聞かれた聞かれた。まぁ、殆ど会話しなかった…わけでもないけど知らないって答えたけどね」


「…会話をしたのかい?」


「した。でも、気分のいい会話とはいかなかったけどな」


「まぁ、問答無用で魔法を放ってくるような人物だ。気分のいい会話なんて期待できないだろう」


「…あの発言は流石にキレそうだったけどな」


口にするだけでムカムカしてきた。

ユリアを血で染めるだなんてさせてたまるかってんだ。


………うん?なんか違和感あるな僕。こういうキャラだったっけ?

と、自分の心境を疑問に思っていると、ようやく大通りに出て人通りが一気に増える。

そんな人通りの多い大通りを先導するアイズとロナに着いていきながら、あの時の言葉を思い出す。


(800年ちょっと前…ね)


あいつは確かにそう言った。

そして、既に失われているという属性防御エンチャントブロックの魔法。

たぶん、間違いなく800年前の魔王降臨に関わっているのだろう。

…魔王の手下なのか、魔王本人なのかは、まだ判別できないが狙いが皇女ユリアだというのはわかった。

英雄召喚を恐れての行動かもしれないと考える。


だとしたらこれからも皇女ユリアが狙われる確率は高いだろう。

今すぐに狙ってくる可能性は低いだろうが、次に狙ってきた場合守りきれるかが怪しい。

ああいう人間は、次回に絶対に勝てるように備えて準備をする人間だ。油断は出来ない。


(そこらへんの事も踏まえてユリアや王様に警告しておくしかない…か)


所詮は一般人で皇女ユリアにとって友人でしかない僕はどうしても踏み込めない領域がある。

そんな物事の深いところまで踏み込めずに友人を危険に晒してしまうのが少しだけ歯痒かった。


短くてもいいのでご意見ご感想をもらえると今後の参考になりますので、気が向いたらよろしくお願いします。

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