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挨拶

 女子が多いと、結局こうなるんだ。どうなるかって? ケンジがモテるんだよ。それが一番気に入らない。

 バンドを始めようとケンジが言ったときも、俺はそのことばかり考えた。またケンジがモテてしまう。別に悔しくなんかない。俺には好きな子がいるんだしな。ただ、ほんの少し嫉妬してしまうんだよ。

 ケンジが女にうつつを抜かすほどの馬鹿じゃないのは知っているが、俺たちとの時間が減ってしまうのは寂しいんだよ。

 バンドって、ゴムか?

 俺の渾身のボケに、ケンジはなんの反応も示さなかった。今日もやってるそうだからさ、見に行こうぜ。そう言っただけだった。

 なにを見るんだ? 俺がそう言うと、いいから付いて来いよ。それだけを言い、自分のクラスへと消えて行った。

 俺たち五人は、見事に別々のクラスになった。五クラスしかないのにだよ。同じ中学からは他にも数名が入学しているんだけど、そいつらと同じクラスになっても嬉しくはない。まぁ、ケンジたちと離れている方が新しい友達ができて嬉しかったりもするんだけどな。

 ケンジは休み時間の度に俺のクラスにやってくる。お陰で俺には、新しい友達が大勢できたよ。ケンジは入学してすぐに人気者なったんだ。女子からだけでなく、男子からもな。

 入学式の日、校長の挨拶が長くて退屈なのはどこの学校も同じだよ。なんのひねりもない決まりきった言葉をカンペを見ながら落としていくんだ。さっさと終わらせてくれよと、そこにいる誰もが感じていた。生徒だけでなく、先生たちからもな。

 カンペを覗きながらの挨拶には、一定の間が生まれるんだ。ケンジはその間を見計らって、拍手を鳴らした。その音に周りが反応をし、その意味を理解した何人かが真似をする。そしてあっという間に会場中に広がった。

 お陰で挨拶は打ち切りになった。校長は、なんだか満足気に舞台から降りて行ったよ。その勘違いには誰も指摘をしていない。評判が良かっと満足気に校長室で話していたらしい。担任の先生が保健室の先生とそんな話をしているのを、俺は聞いたんだ。


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