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写真

 そんなイカれていたケンジは、当然女子からの人気が低い。俺はずっとそう信じていたんだ。現にケンジに彼女なんていなかったし、ケイコとカナエから聞く女子からの評判もよくはなかった。それなのに、ケンジは影でモテていたらしいことを知ったんだ。悔しくて俺は、あれは俺が貰ったんだと後から嘘をついて謝っている。母親にあげたと言っておいたんだ。ケンジはきっと、信じている。

 県大会では、プロのカメラマンが会場をうろついている。選手の写真を撮り、各学校に送ってくれるんだ。俺達の中学は出場者が多く、三十枚くらいは送られてきたよ。顧問の先生はそれを、廊下の壁に貼りだしたんだ。ケンジの写真もその中にあった。ケンジはその空中姿勢がとても美しい。あれほど嫌われていた顧問の先生からも褒められている。カメラマンが撮ったその写真は、そんなケンジの美しさを完璧に捕らえていた。

 一週間の展示後、その写真は自由に持ち帰っていいと言われた。ケンジは自分が飛んでいる姿を見るのは初めてで、その写真が貰えることを楽しみにしていた。当然のことだが、写っている本人が貰えると誰もが考えていたはずだよ。俺もケンジもそう思っていたよ。実際ケイコは、自分が写った写真を手に入れている。

 俺はケンジと一緒にその写真を取りに行ったんだが、そこにはあるはずの写真がなかった。ケンジ以外の写真はまだ数枚残されていた。誰が盗んだんだって思ったよ。ケンジへの嫌がらせかとも思ったが、そんなことをしても誰も得しないだろうと思ったよ。

 まぁ、仕方がないんじゃない。ケンジがそう言った。きっと俺のファンじゃね?

 そんなわけないだろと突っ込みを入れようとしていると、背後から後輩の女子に声をかけられた。

 ケンジさんの写真貰ってもいいですか? そう言ったのは、見たこともない女の子だったよ。とても可愛いが、陸上部でもなければ同じ小学校出身でもない。ケンジもその子のことは知らない様子だった。

 残念だけど、ないんだよね。ケンジがそう言うと、その子は、えぇー、さっきここを通ったときはあったんですよ。なんて言ったんだ。

 やっぱり誰かに先取りされちゃったんですね。悔しいなぁ。誰かな? ケンジさんって、後輩からの人気凄いんですよ。

 そんなことを言われ、ケンジは満更でもない笑顔を見せた。そして、へぇー、そいつは嬉しいよ。なんて言っていたよ。俺はふざけんなよとケツを蹴飛ばそうかと考えたが、可愛い子の前だったんで我慢しておいた。

 後日ケンジは、ほんの短い期間ではあったが、その子と付き合っていたんだ。あまり進展はしなかったようだけどな。別れることになった一番の原因は、空を飛ぶことに夢中だったからだよ。まともな人間なら、辞めさせようとするだろうからな。あいつを理解できるのは、家族以外ではきっと、俺達四人だけだろうと思うよ。


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