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応援団

 ケンジがイカれていたのは、なにも先生相手にだけではなかった。同級生の馬鹿どもにもそうだったが、先輩への対応はさらにイカれていたよ。

 俺達が通っていた中学校では、体育祭での応援合戦が名物だったんだ。どういうわけか、住んでいる地域で四つの組み分けをしていた。自然と同じ小学校出身者が集まる仕組みになっていたんだ。

 体育祭の二週間前から応援団の練習が始まる。任意での参加と表向きは言われているが、現実は全員参加だ。部活動もその時間だけは休んでいいことになっている。当然陸上部は、その後に練習が待っていたけれどね。

 応援団の練習には、おかしなしきたりがあった。最初の三日間は、別の地域の先輩が一年生を指導するんだ。二年生が主になり、三年生が監督役となる。日替わりで別の地域の先輩がやってきて、一年生を教育する。そういうテイでの公式なイジメだよ。

 ケンジは一年生のとき、そんないじめに耐えた。やられているだけっていうのは悔しいが、耐えることに意味があると感じていたんだよ。俺だって同じだった。理不尽だが、そこで逃げ出したら負けなんだよ。

 ちなみに応援団は、男女別で練習をする。女子も男子同様にいじめが行われている。このことは先生連中もみんな知っていた。俺は一度先生連中が話している言葉を聞いたことがある。転任したばかりの若い先生が、あれはちょっとやりすぎじゃないですか? なんてことを言うと、もう一人の先生は、あのくらいやるからこそ意味があるんですよ。上下関係の厳しさを教えるのは、生徒同士での方が効果があるんですよ。その言葉を受け、若い先生は、そういうもんですかねぇ。なんて言って笑っていたよ。

 二年生になり、ケンジはイカれた行動を取ったんだ。一年生を指導する際に、三年生の見本を見せましょうなんて言い、上辺だけの言葉で三年生を持ち上げ、その気にさせた。そして三年生が見本を見せたとき、ケンジが大声で、そうじゃないだろ! もっと真面目にやれ! そう喚きながら三年生の何人かのケツや足を蹴飛ばした。

 俺達二年は騒然としたよ。三年生も突然の出来事にどうすればいいのか分からず、ケンジの指示に従っていた。一番驚いていたのは一年生だ。新入生いじめの噂は聞いていた。まさかの事態に、全員が固まっていたよ。

 ケンジの行動につられて三年生にきつく当たる奴は、残念というかまっとうというか、一人もいなかった。けれど、ケンジに逆らう三年生もいなかったのは不思議だよな。それほどまでにケンジは狂気じみていたってことだ。

 ケンジは三日間、同じ行動を取った。三年生からは相手にするにはおかしな奴だと敬遠され、同級生からは危険な奴だと恐れられ、一年生からは格好いいと尊敬された。


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