第35話 精霊の泉 パール
「で? この時間って何なの?」
陽二は「じゃあ!」と立ち去ろうとした豊を捕まえた。
こいつは逃がしてはダメだ! もっとしゃぶりつけ!
と心の声がしたのだ
「ホントにこれで最後だから」
と言いながらもうれしそうに説明してくる。
こいつチョロインじゃね?
「その時間はね、ズバリ! 時計でーす!」
「んなこたぁ分かってんだよ! もっとえぐり込んでくれよ」
そう、聞く前に試して分かっていた。風と全く同じ効果なのだ。俺が知りたいのはもっと先、どうすれば『時魔法』が使えるようになるかだ
「ストップウォッチって知ってるよね?」
「タイム計るやつだろ?」
「そうそう、次ね。時計で秒数が進んでいるの分かる? それでね計るわけさ」
「何を? もっと具体的にプリーズ!」
「何でもいいんだよ、例えば適当に走って何秒かかったとか、石でも上空に投げて何秒で落ちてくるとかさ」
「それに何の意味があるわけ?」
「時を感じるんだよ。これは何秒、あれは何秒って、分かり易いでしょう?」
「で、どうなるの?」
「陽二はずるいなぁ~何でも聞いちゃ駄目だよ。百聞はなんたらって言うでしょ?」
「つまり……時を感じていれば次のステップに行けると?」
「それは君次第だよ。時属性があるからすぐだとは思うけど?」
「そうか、頑張ってみるよ」
「じゃあ!」
「あっ!」
豊はピョンピョンと蔦を登ると、途中で消えてしまった
「しまった、逃げられた!」
しかしいい奴だった。お土産もたくさんもらったし、良しとしよう
豊が消え去った場所に『ありがとうございました』と告げて、周囲を見渡し気づく
「あの豊いつの間に……」
豊が作成したキッチン台や器具は全て消えていて、その代わりに大きなテーブルが3つ作ってあって、上には大量の料理が置いてあった。
「何でもアリだな…でもサンキューな」
おそらく魔法が終わるのに時間がかかるので、気を利かせてくれたのだろう
「シアもナーナもお腹が空いたら食べていいよ」
匂いで気づいていたのだろう。首だけ向けてこくっとうなずく
ナーナは…すでにモグモグしている
これだけの事をしてくれた豊君が大丈夫と言ったのだ。間違いなくシアの母親は助かるはずだ。
時間もあるので早速『時間』で時を感じる練習を始めた。
1時間程、石を投げては落ちてくる秒数を数えていたのだが、肩は痛いし、つまらなすぎるので飽きてしまった。
少しでも変化があれば長続きするんだけど…
休憩! 湖でも探検してみるか…
「ちょっと散歩してくるよ」
パトリシアに告げて、湖に移動する
「釣り竿があれば、釣りができたのになぁ」
などと抜かしながら湖へ歩く
初めて来たときは山ばかり見ていて気づかなかったけど、この湖の水は薄い青色をしている。
空いた瓶に水をすくって確認してみる
「飲めそうなくらいきれいな色だ。まるでジュースみたいだ」
薄青くてゴミなどの不純物が全く混ざっていない。
顕微鏡で調べれば、細菌の1つでもいるかもしれないが…
瓶に詰めて収納スペースにしまう
湖の深さは分からないが、2メートルくらいの所までしか見えない。見た感じ魚もいないようだ
水面に浮いているお盆の形をした植物を拾った枝で近くに寄せて、そっと片足を乗せて力をかけてみる。
感触はしっかりとしていて乗れそうな気がする。
陽二はゆっくりと植物の上に乗ってみた
足の裏に力を少しずつ入れると、沈む感触もなく地面と変わらない。
次の植物に狙いをつけて、ジャンプ!
「行けそうだ!」
ピョンピョンと植物の上を渡っていくと、渡りきる直前、突然呼び止められた
「あ、あの!」
「ひゃい!」
飛び移ることに集中していたため、突然の声にびっくりして湖の中に落ちてしまった。
ドボン
あわてて植物にしがみつこうとした陽二を後から支える人物がいた。
水に沈まず後から支えられ、一瞬キョトンとしてしまった
「だ、誰?」
「びっくりした? ごめんなさいなの」
そう言いながら、陽二を支えたまま器用に前に回る。
形としては抱き合っている感じだ。
陽二もいつの間にか相手の腰に手を回している
目の前に現れたのは、薄ピンクの長い三つ編みで見た目が10代のかわいい少女だった。
陽二は少女をまじまじと見つめる
目はパッチリしていて色白でとてもかわいい。
水着の代わりなのか、胸に大きな谷間…じゃなくてホタテの貝殻をつけている。
あふれんばかりの暴れん坊さんで、実に目のやり場に困ってしまう……が関係ない!
「あ、あの」
エロティックな陽二の視線に、我慢できなくなった少女が声をあげる
「あ、助けてくれてありがとう」
言葉とは裏腹に視線は1点を見続けている
「ねぇ、お願いがあるの……いいかなぁ?」
「えっ? お願い? 何?」
「その前に……私の名前はパール・ディンプシー。あなたのお名前は?」
「俺は陽二、中山陽二だ」
*
取りあえず、この姿勢のままだと誤解を招くおそれがあるので、植物の上にのぼる。
パールは植物に腕を乗せて、その上に顔を置く姿勢になる
「それで? お願いって何?」
「手が届かない場所があるの」
そう言うとパールは飛んだ! 正確に言うと跳ねた!
跳ねたパールは胸を中心にくるっと回ると陽二の横に寝そべった。
不思議と衝撃が全くなかった。
陽二はパールを見てテンションが最高潮に達した!
薄ピンクの長い髪の毛を1本の三つ編みにして、たわわに実った胸の間に垂らし、目はパッチリとしていてかわいい系の美少女。
色白でツルツルスベスベと透明感のある肌
その肌を見つめながら視線を移動させると、おへそがある。
デベソではない、チョコンと申し訳程度のおへそだ。
さらに視線を移していくと、桜色とでも言えばいいのか
光の反射でピンクとも白ともとれるキラキラと輝く鱗がつらなっている
「って、何でやねん!」
これは、うれしさ大爆発のツッコミだ!
そう…パールは人魚だったのだ。
*
港町サラデイン。
漁業が盛んで町の主要産業の一つ
サラデイン周辺の海は、蛸人などが魔物を退治しているおかげで、とても安全な海。
その前に、この周辺の海に住む魔物のほとんどは、深海で暮らしているのでめったに現れない。
その安全な海、昔は人魚も居てにぎわっていたのだが、最近ではめっきり現れなくなった。その原因は人族にあると言われている。
⚫人魚
上半身は人間で下半身が魚のような姿をしている。
人魚の肉を食べると不老不死になるだとか、涙が真珠になるとか、恋敗れるとアワになってしまうなどの逸話が多い。
こちらの人魚のルーツは精霊。
もともと、微精霊が集まり人魚として器を得たのが始まりといわれている。
ルーツに精霊を持つ他の種族同様、世代を重ねて定着したのが今の人魚。
それとは別に、聖霊より授けられた卵から生まれる人魚もいる。その人魚は特別で、精霊の力を持つ次世代の聖霊候補。
外見は人魚と変わらず、成長すると人魚姫になる。
ちなみに他の種族にも卵は配られているはずなので、候補者は人魚姫だけではない。
人魚にとって、他種族の種は猛毒で体内に入ると死んでしまう。そのため、他種族の種を体内で無害にして人魚に授ける役目をしているのが人魚姫。
人魚は受け取った種を体内に保存して、胎内の卵と受精して子供を作る。種がなくなるまで何度でも受精可能だ。
ちなみに、人魚姫も子どもを作れるが種を作る能力がなくなる。
ただし、生まれてくる子供の98%が男人魚。
男人魚は他種族とみなされ地上で暮らす。
人魚の寿命はおおよそ500年で人魚姫に寿命はない。
子供を作ることのできるのは300年程までである。
300年を過ぎると急激に老化が進み、身体が耐えられないのだ。ただし、防ぐ方法もある。
人魚姫のもう1つの仕事。
胎内から出る分泌液を摂取させること。この分泌液には、人魚を若返らせる効果がある。
摂取し続けると老化防止と寿命延長が可能なのである
*
「で、何に手が届かないの?」
「お尻から下がムズムズするの、手が届かないの」
そう言うと、手の届かない場所をいろいろな姿勢で実践してみせる。
なるほど……分かった。
「お前さぁ、体が硬いんだよ。てか、腰から下の長さに手の長さが合ってないな…」
パールの体は人間で例えると腰から下、足の部分がとても長いのだ
さらに、人でいうところのヒザ関節がないみたいだ。
「お前、座ってみ?」
「お前じゃない。パールなの!」
「すまんすまん。じゃあパー子、座れ」
「もぉー! パール! パール! パール!」
「何だよ…せっかく3号に任命してやろうと思ったのに…じゃあ、パールちゃん座ってごらん」
「そんなに子供じゃないの!」
「うるせーよ、はよ座れや!」
ちょっとガッカリしたせいか強く当たってしまった。
だって人魚っていったら、正座からほんの少し崩したくらいの座り方りだろ? 定番メニューだよ
「中山怖い…」
パールは少し涙ぐむと横に倒れた姿勢から、エッチラオッチラと尾ビレを伸ばした長座前屈になる。
「なんか、かわいくねーのな。陽ちんガッカリだよ…」
「きも、自分のこと『陽ちん』だって」
「なんだとコラ! 刺身にして食っちまうぞ?」
パールは本気でひいた。真っ青である
「ごめんなさい許して下さい。陽ちん最高ですの…食べないで…」
これは言い過ぎだ、自分で自分に引くわ。罪悪感がパねぇ
頭をなでながら、できるだけ優しい顔と声で語りかける
「ごめんなぁ怖かったよな。でもパールがかわいすぎるからイケないんだぞ? 愛らしいから、ついイジメたくなったんだよ」
「な、な、なんです……の『怖かったよな』の次、ワンモアなの」
パールはさっきの出来事が、ウソのようにデレっとした顔で催促する
「たくましいな、実は怖がってなかっただろ……」
*
「どこら辺? ここ?」
「もっと下。あぁそこ! そこが、いいのぉ!」
「誤解されるから…もっとボリュームを下げようか……」
陽二はパールの指示で手の届かない場所をかいていく。
他人の背中の痒い場所をかいてるのと同じだ。
パールの鱗は意外と柔らかく、1つめくってみると『いゃん!』と言われ自制が効かなくなるおそれがあるので止めた。
ドンドンかいていくとパールの息が荒くなってきた。
上気した声で
「ぅん、下……尾ビレ…陽ちん。尾ビレを触って……」
尾ビレに触れるとビクッとパールの体が一瞬だが震えた。
さらに尾ビレの付け根から先に向かって指をはわすと、唇を噛みしめて目をつぶり、何かをガマンしている。
陽二はピーンときた。
感じているな? 感じることだけに意識を集中してるな?
その通りだった! パールは本気で感じていた。
この快感を逃すまいと意識を尾ビレに集中していたのだ。
ワザと体を硬直させ、快感にあがなう姿勢をとることによって得られる快感は倍増する。
陽二の中でナニカが刺激された
「お前…感じているんだろ? ん? ここか? ここがいいのか?」
陽二はパールの表情、にぎりしめた手、唇の動きからパールの弱いと思われる尾ビレの付け根を集中的に攻撃する。
優しい攻撃から少し強い攻撃とリズミカルに繰り返す。
パールはあがなう限界に来たのか、甘い声が無意識にもれ始めた
陽二はピタッと手を止める
パールの口から無意識に声が出る
「あ…!」
そう、分かっている。分かっているさぁ! 止めて欲しくないんだろ?
陽二は、体に力が入らないパールの上半身を右手で抱き上げると耳元にささやく
「続けて欲しいのか?」
ついでに『ふっ』と耳に息を吹きかける
パールの全身にイナズマがイレブンした!
こうして、人魚姫パールは陽二の手に落ちたのだった
「陽ちん……欲しい…」
陽二の攻撃は、パールの望むまま、だらしなく気絶するまで続けられたのだった
★黄金指を獲得。
「マジか!」
⚫黄金指
対象者の弱い部分を的確に見抜く
卓越した指使いで対象者を導く




