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詠唱と友情

「皆さーん、頑張ってくださーい」


 会堂内二階から斑鳩は皆を見守っていた。二階の方では他にも見学の者がそれぞれ試合を見に来ている。一階の方はというと椅子などが片づけられているため広いスペースが確保してあり、決闘をするにしても十分に場所を確保できている。


「さあ今から第五試合、Aチーム対Eチームの試合を開始します! この決闘デュエルですがルールはいたって簡単! 魔法を使って互いの防護陣プリヴェントを破壊する、もしくは相手が降参をした時点で試合終了となります!」


 エドワード達のグループが入場すると、斑鳩は椅子に座ったままだが拍手を送っていた。


「わぁー、惣ちゃん頑張ってー」


「何で僕だけ名指しなんだよ……」


「うるせぇ。あいつはお前のことが気に入っているんじゃねぇの?」


「困るなぁ。 僕女の子には興味が無いんだけど」


 エドワードはその言葉がいつもの狂言だと捉えていた。むしろ狂言でなかった場合九鬼原はそっちの気がある人になってしまい、エドワードは寒気を覚えてしまうからだ。


「まあいいや。早く言ってよ先鋒さん」


「うるさい! わたしの実力を貴様らに見せつけて、「調子に乗ってしまいすいませんでしたぁー!」と貴様らに言わせてやるぞ!」


「期待はしてねぇからさっさと行って来い」


「むぅー!」


 ロザリィは腕をぶん回しながらもフィールド中央にまで足を進め、相手と対峙する。


「貴様、わたしの魔法の犠牲となるがいい!」


「子どもが決闘なんざ百年早いんだよ!」


 相手方は背の高い男が先鋒となっており、確かに遠目に見れば年が離れた大人と子供の様にも思える。


「ククク、マジで面白すぎ!」


「笑うなよ……くっ」


 エドワードも流石に笑いをこらえられなかったのか、笑い声が漏れ出してしまう。


「ムキー! 貴様ら見てろよー! 私が究極に強いということを見せてやるからなー!」


「それは楽しみっしょ!」


 斑鳩が声のする方を振り向くと、一人は服生徒会会長である湊川と、もう一人は真っ黒なフードを被っているため顔の表情は読めないものの、身長はロザリィと変わらないくらいの少女が座っている。


「あのー、どちら様ですかー?」


 斑鳩が声を掛けると、フードを被った少女の方が反応し返事を返した。


「うち? うちは夕闇ゆうやみキリ。生徒会書記やってんのよ! んでもってこっちが湊川ジョージ! 副会長やってんだけどマジ愛想悪いよね! まあうちら一年生の視察に来てるだけだから気にしなくてもいいし!」


 湊川の方は職務を全うする気はない様で、自分の腰に挿げてある刀の手入れを始めている。


「あのさー、ちょっとは見る気無いの? 今年は見る限り粒ぞろいでしょ!」


「……興味が無い」


「はぁ、もう少しコメント無いと視察にならないっしょ……」


 夕闇が一人で視察にはいると共に、試合開始の笛が鳴り響く。


「雑魚相手にどの術で――」


「――数多の光に仕えるものよ、その天上の火を以て我が道を照らしたまえ――」


 相手が余計な事を喋ろうとしている間に、ロザリィは既に杖を構えて素早く詠唱を開始しており、空に浮かぶ魔法陣は広く展開されている。


「へぇー、展開が結構速いね」


「詠唱も魔力操作も悪くないですね」


「けっ、言うだけあるってことじゃねぇか」


「……詠唱してる時点で話にならねぇだろ」


 皆がそれなりの賞賛の言葉を送っている中、エドワードは小さく呟きため息をついていた。


 この程度の魔法の展開スピードなど、零コンマ数秒で終えていなければならない。それを悠長に唱えている時点でエドワードの評価は厳しいものとなっていた。


 そうこう外野が思っている間にも、魔法陣の輝きは増してゆく。


「ふはははは! いくぞ間抜けめ! ――天光烈火ニンバス!」


 刹那――いくつもの光の矢が相手に向かって突き進む。


「ちょ、待って――」


 防護陣プリヴェントなど容赦なく引き裂き、一瞬にして勝負がつく。


「そこまで! 先鋒Eチームの勝利です!」


「やったぞ!」


「いいんじゃない?」


「負けてねぇぶんマシだな」


「お疲れさまでした」


「どうだ!? 強かっただろう!?」


 ロザリィは自信満々にエドワードの方へ向かう。エドワードはそれを聞いてうんともすんともいう訳でも無く、言葉を濁す。


「……まぁ、いいんじゃねぇの?」


「何だその面白くない反応は!?」


「まあまあそう怒らないでください!」


 氷坂が間に割って入るが、エドワードの今のあいまいな返しから一体彼がどれほど強いのかが気になった。


「そういや次俺だな」


 エドワードは両手が開いたままずかずかとフィールド中央まで向かう。


「エドさん、魔導具をお忘れではありませんか!?」


「あ? あぁ、そうだったな」


 氷坂に言われて魔導具がないことに気がつくと、エドワードは何もない空間に右手をかざしそこから自分の魔導具である箒を呼び出す。


「――えっ!?」


「! ……へぇー」


「何だよあいつはよぉ……!」


「あんなの知らんぞ!」


 下の四人はその高等な技術にそれぞれ反応を示した。


「あれはどういう事でしょうかー?」


「すごいっしょ!? 空間圧縮と空間転移の複合呪文とかマジ半端ないって!」


「……馬鹿な」


 二階の方でも驚きの声が挙がり、無口であった湊川でさえ声を漏らした。


 そして試合前の顔合わせで、次鋒同士話を始める。


「……なんやなんや、エド君そんなん使えるなんて聞いてへんよ?」


「……言ってなかったからな」


 そして次鋒戦。エドワードの対戦相手は――


「もしかしてここで勝ったら、僕凄いんちゃう? そうやろエド君?」


「ふっ、お前の腕次第だな。先崎」


 奇しくも最初の友人である先崎良磨あった。



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