部活の見学
「――お前らもう少し上品に食えねぇのか」
「いやー、あの場でテーブルマナーを完璧にこなしたきみの方がある意味凄いけど」
エドワードたちは学園付属のレストランで食事を済ませ、現在次の目的地へと移動している所であった。
「私も家柄の都合で学んでいるのですが、あそこまで綺麗に食事をこなされてはかける言葉がありません……」
「そうか? なれたらその通りにしねぇと俺は気分が悪くなる」
氷坂の家も有名な家柄であるためテーブルマナーは必須であったが、それでもエドワードの様に完璧以上にはこなせない。
「何かお前、気持ち悪いぞ」
「黙れ小学生」
「な、なんだとー!」
ロザリィが逆切れを起こしているところで、今まで起きていなかった少女の声がその場の全員の耳に届く。
「ふぅ、お腹いっぱいですー」
「え?」
「は?」
「? どうかしましたかー?」
さっきまで寝ぼけていた斑鳩はその目をしっかりと開いており、言葉尻もしっかりとしている。
「え? 何? どゆこと?」
「惣ちゃんのおかげでお昼ご飯が食べられましたー。いい子いい子してあげますー」
九鬼原はあまりの事態に戸惑ってしまい、斑鳩の頭を撫でる行動に対処ができずなすがままとなっている。
「……え? 僕いつの間にか惣ちゃんになっているんだけど」
「いいじゃねぇの別に」
「イヤよくないって。僕は惣治郎っていう父親から貰った立派な名前が――」
「どうせウソだろ」
「そうだけど」
エドワード言ったことに対し適当な返ししかしない九鬼原に頭を抱えているが、その九鬼原を手駒にとる斑鳩は一体どんな人物なのであろうか。
「改めまして、私斑鳩と申しますー」
「知ってる」
「得意属性は地属性でー、そのせいでお腹が空いたら眠くなっちゃうんですよー。いやー困りましたねー」
「それウソだろ」
エドワードのツッコミを無視して、斑鳩は自己紹介をしては頬を赤くしている。
「それにしても、惣ちゃんのおかげで私のお腹がいっぱいになりましたー。ありがとうございますー」
斑鳩は九鬼原の頭を再び撫でようとしたが、九鬼原はすんでの所で回避、斑鳩の手は空を撫でている。
「そんなにいい子いい子は嫌いですかー?」
「僕もう高校生だよ!? いい子いい子って子どもじゃないのさ!」
「十分ガキだろ」
エドワードはそう言いつつも部活の見学会にまわっていく。
「さて、外に出たはいいが――」
「どこから見てまわりましょうか?」
「さぁて、どうすっか――おっ?」
エドワードの目を引いたのは、先ほど入学式が行われ栄太会堂に、『決闘部』と大きく書かれた看板が置いてあることと、その前に大勢の生徒が並んでいる事であった。
「あれは何だ?」
「ブルームレース部と双璧を成す人気の部活動、その名も決闘部です」
氷坂はエドワードが注目している決闘部についての解説を始める。
「互いに防護陣を張り、試合開始とともに相手の防護陣を破壊するのが目的の大変シンプルな戦いです」
「へぇ、魔法は何でも使っていいのか?」
「当り前の話ですが禁呪は厳禁です。それ以外なら付加呪文であろうが召喚であろうが使用しても構いませんし、戦場内にある物なら何でも使用してもいいというちょっと荒いルールでもあります。故にけが人も多く、遊び半分だと大ケガをする可能性もありますよ」
氷坂は決闘の経験者なのか、ルールを分かりやすく説明しその実情を話す。
「なるほどな……よし、行ってみるか」
「人が多いぞ!」
「並べばいいだろ」
ロザリィは他にもまわりたそうで不満げではあったが、此処で集団を離れても意味が無いと思ったのか、その場にとどまった。
「部活動紹介にしては人が並んで待っているな」
「紹介だけじゃなく実際にブチのめせたら面白いのにね」
「出来るみたいだけどな」
「えっ!? マジで!? フヒッ、キヒヒヒヒヒヒ――」
九鬼原は何かスイッチが入ったのか、突然禍々しいオーラを放ち始める。
「もうこの際ザコでもいいや。誰でもいいから早く僕の遊び相手になってくれないかなぁ」
九鬼原の禍々しいオーラは前方にまで伸びて行き、それに気がついた生徒は次々とその場から離れていく。
「……あれれー?」
「お前さぁ、そうやって脅しをかけるのは止めろよ」
「別にぃ? 僕はただ早く戦いたいなーって思っただけなのに」
九鬼原はおどけた表情をするが、明らかに魔力を当てて何かをしたに違いない。
「ったく……おっ」
「あぁ?」
残った生徒たちの中に、エドワードの知る顔が残っていることに気がつく。
「サラじゃねぇか。どうした」
「なんにもねぇよ。ただここでストレス発散できると思って居るだけだ」
「そうか。じゃあ俺達と一緒にまわらねぇか?」
「嫌だね。一人がマシだっつぅの」
サラはそう吐き捨てるかのように言い放つと、受付の方へと向かう。
「決闘しに来た」
「すみません、決闘の体験は五人一組にて行っておりますので、お一人だと他の方と組まれるか、見学のみに――」
「あぁ!? なんだそりゃ!?」
怒りをあらわにするサラの肩に、ポンと手が置かれる。
「ぼっちなら俺らと組むか?」
ニヤニヤしながら問いかけるエドワードに対し、サラは一瞬は怒りをあらわにしていたが、現状そうするしかないと分かると、ため息を吐いた。
「……ちっ、わぁーったよ」
「じゃあ俺達六人になるから一人出れねぇな。サラは出場確定として、誰が出ないか――」
「僕ヤダよ。出られないのなら他の人を殺してでも出るよ」
「経験者が一人いた方がいいと思われますので、私も欠席はあまり――」
「わたしは出るからな! この部活のトップクラスが今の生徒会だからな!」
「では私が休みますー」
斑鳩が自主的に休んでくれるのをみて、エドワードは感謝の言葉をなげかける。
「すまねぇな」
「いいんですよー。皆さんの頑張りを見守っていますからー」




