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竜と人への鎮魂歌  作者: ポティト
青年編
4/12

青年は白い竜を見る

△▼△


 一週間後、国の兵士は広場で隊列を組んでいた。


 先頭には不恰好にも身なりを整えた王が白馬に跨っている。


 戦争の際には一致団結を図るため移動での身分差別がない分国民には大きな負担が掛かっているが、王様は功績を残すことが多いので反発するものは少ない。


「貴殿等は最高の兵士だ。武力の差は実力で埋めるだろう、実力の差があるなら気持ちで埋めてしまうだろう。我等は少数精鋭、懐の剣の切っ先は自害するためではない、インラの王の首を狩り取る為の物だ!」


 一斉に地を震わす兵士達の声が響き渡った。


 目前の正面門が開錠され王を筆頭に周りに倣って俺は歩き出す。


△▼△


 全軍隊が門を潜り抜けると兵士達はそれぞれの身分差別のない荷馬車に乗り目的地へと馬を走らせる。


 大き目の荷馬車だが五人の屈強な兵士が乗っていると、やはり狭く感じてしまう。


「そちらでは狭くないか? こちらに乗ることを認めても良いぞ」


 一つの荷馬車が並走してきた。


「お断りします」


 身分差別が無いと言ったが例外だってある。王は当たり前なのだが竜討伐隊も例外の対象であり、日頃の経験や竜と戦う実力から有力候補となり、体を休ませるために多少優遇されている。


「俺はこの荷馬車で十分です」


「そんなこと言わずに、さぁ。今なら私の胸で受け止めてあげよう」


「仮にでも、硬い胸当てで受け止めて欲しくないです」


 竜討伐隊最前線部隊隊長レイス、実力は女性にして国の最強と言われ前回では最後の黒い竜も合わせて四匹の竜を討伐したと伝説級の話になった。


 最弱の成竜を討伐するのに小国の兵士全部、黒い竜は計算で指折りに入る国の全武力となっている。竜は群れて行動することは無く個体を討伐するのがほとんどだが、あの時は史上最悪の四連戦を生き残り全てを討伐したとなっている。


「まぁ、ゆっくりいこう。君の実力ならいつかは竜討伐隊に志願するはずだ、楽しみに待ってるよ」


「ありえませんよ」


 そう言ってレイスは親指を突きたて離れていった。


 その後、周りの五人に質問攻めをされたが当たり障り無い返答を返し続けた。


 そのままイアン王国に着くと思っていたが、小さく見える自分の国に青天から白い雷が突き刺さった。


 一瞬にして音だけを置き去りにしたこの場の全員が自国の上空を見ていた。


 初めて見る白い竜。


 自国を軽々と影に飲ませるほど大きな白く輝く竜。


 晴天の霹靂の如くその竜は出現した。前触れも無く、そこに最初からいたかのように。


「全軍止まれぇぇぇぇぇぇっっっっ!!」


 王が沈黙を壊し命令をする。


 その言葉からそこにいた兵士は直感的に次は何を言うのかが分かった。


「全軍引き返し、我が国をあの竜から守護する! 竜討伐隊は早馬で一足早く帰還し国民を守れ!」


 速断で引き返すことを決め、王は未だ理解に苦しむ兵士を置いて愛する女王の元へ馬を走らせた。


「貴様の力を借りたい。いや、命令だ。貴様は私に着いて来い」


 早馬に乗ったレイスが引いてきたもう一頭の早馬に乗るように指示してくる。


 俺は一つ頷き早馬に跨った。


△▼△


 自国へ向かう最中に白い竜の天を裂き地を砕く鳴声を上げると、周囲から竜が集い始めた。


「早く逃げましょう! 女王様!」


「待って! あの子を連れて行かないと!」


「今は女王様の命が第一です!」


 国へ入り、レイスと王と共に女王の所へ行くと数人の兵士が女王を取り押さえていた。


「何をしているのだ! 早く安全な所へ移動せよ!」


 王が怒号を上げると兵士が乱暴に女王を脇に抱えた瞬間、城の近くで大爆発が起きた。


 城が揺れ、バランスを崩した兵士から女王は抜け出し出口とは逆の自室へと向かって走り出したのを見て、王も走り出す。


 また大きな振動が襲い掛かり端を支えていた石柱が折れ、女王の背中へと倒れる前に王が飛び込み抱えながら石柱を避けた。


「心配させないでくれ! お前が死ぬのは見たくないんだ。一緒に逃げよう」


「……ごめんなさい。助けないといけない子がいるの」


「兵士に行かせるから、逃げよう、な」


「私じゃないと……あの子は怯えてしまうわ」


 再び声を上げようとする王の肩に手を置き、俺は言う。


「このまま女王様の部屋へ向かいましょう。そこにあの白い竜を退却させる方法があります」


「それはまことか!?」


「ただし、王女様が必要となるでしょう」


 王が戸惑いの表情を見せ返答が口に出せないときに、一人の兵士が走ってきた。


「伝令です! 北の方角から武装したインラ王国の大量の兵士を確認!」

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