エピローグ:エロスのない因果
カモメの鳴く声がします。
小波が奏でる音が耳に伝わってきます。
それらを聞いてお爺さんは目を覚ました。
最初に飛び込んできたのは燦然と輝く太陽です。
「ツンデレラ! マイスウィートハニー! ベッドインダイブ!」
これは良い子の小説なので、それ以上は駄目ですよ、お爺さん。
目当ての少女がいないことにがっかりすると、お爺さんは周囲を見渡しました。
ライトブルーの海が四方に広がっています。
後ろに立っているのは一本の大樹。
ここは絶海の孤島です。
「ワシは夢でも見ておるのか?」
お爺さんは頬をつねってみましたが、痛みが返ってきます。これは紛れもない現実なのです。
ふんどし一丁姿のお爺さんは立ち上がると、食料を探し始めました。
「おんや、このタルは何じゃ?」
お爺さんは大の大人一人が入れるほどのタルを見つけました。まさか爆弾ではなさそうです。
「爺さんや、出してくんろ!」
お婆さんの声がタルの中からします。どうやら自力では出られないようです。
「……」
お爺さんはタルを持ち上げて海に向かって放り投げました。何と言う愛情表現でしょうか。
お婆さん一人でもこの孤島から脱出できるように……なんて微塵も考えていませんけどね。
お婆さんの閉じ込められたタルはどんぶらこどんぶらこと海流にのって、沖合に流されていきました。それを眺めつつ、お爺さんは記憶を揺り起こします。
「ワシは……」
お爺さんは思い出しました。
老人ホーム鬼が島を真っ二つに叩き割ってしまった後、桃太郎一派にボコられて海にポイされたことを。ただ、海にポイしただけでは生きて帰ってくる恐れがあるので、絶海の孤島に流してしまおうとツンデレラが提案し、関東竜胆会の人手と鬼が島㈱の財力を使って、それが実現されたことを。
「ぐふふ、これはお仕置きが必要じゃの」
お爺さんは誓いました。
いつか必ずツンデレラを自分のものにし、エロエロな調教を施した後、桃太郎を倒すことを。
そして、主役の座を掴むことを。
「ぐふふ、エロスの関節は外れてしまった! ああ、何とブラのない呪われた因果か!」
シェークスピアに闇討ちされてもおかしくない台詞を叫ぶお爺さん。
お爺さんが綿密に計画を練り、この孤島脱出作戦を敢行するのはしばらく後のことです。
(了)
こんばんは、星見です。
これにて、異説鬼退治Ⅳは終了です。お読みいただき、ありがとうございました。なお続編は必ず出します。え? 大の大人がこんなアホなのの続編出すのかって? もちろん出しますとも!
次回作はお爺さんが孤島を脱出して、大江戸に戻ったところから始まります。お婆さん? さあ? 大西洋あたりで浮かんでるのではないでしょうか。
読者の皆様、ありがとうございました。
ではまた次回作でお会いできることを祈りつつ……




