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大丈夫
安心して
君を殺すことはないから
‐アヤトリ‐
男に引っ張られて呆然と歩き続けていると
男はある森の方に歩いているんだとわかった。
その森は通称、日落の森と呼ばれるところで
綺麗な紅葉が有名なところ。
だけど、古くから妖怪や幽霊がでる場所としても有名なところだった。
あの森に入ってもいいことなんて一つもないよ。
と、よくお婆ちゃんに言われていたのを思いだした。
私はこれでもお婆ちゃん子だ。一回も好きとか、ありがとうとか言えなかったけどね。
お婆ちゃんが言うことは絶対という私の中のルールから、あの森に行かない=この男から逃げるが一致する。
この手を振り払って逃げなくちゃと必死に手をはずそうとしたが力が強くて振り払うことができなかった。
だんたん怖くなってくる。
どうして男はあの森に入ろうとしているのかが、わからない。
全くわからないよ。
頭の中でぐるぐるといろんな憶測が現れては消えてを繰り返している。
だけど、声に出すことはできなかった。
結局、私は何も言えないまま
男と一緒に山に入っていったのだった。