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第十五話 借りはこう返す

「アタラヨ、シズメ、シンゲンを載せて。上がるよ」


【了解】


機体が唸る。アタラヨが背中の推進器を解放し、全出力で浮上を開始。

カエデは操縦桿を両手で握りしめる。その背に、無言で座る二人――シズメとシンゲン。


【ああ、それと。言っておきますが積載オーバーですので、快適な空の旅はお約束出来ませんよ】


「死地に赴くんだ。元より期待していないさ」


「…覚悟は、出来ております!」


「私も大丈夫!全力出して!!」


【…では遠慮なく。出力、最大……!】


カエデ達の宣言にアタラヨが応えるように咆哮する。蒼く輝く翼が空を裂いた。

そして瞬く間に徳川の船団に肉薄する。


だが――


ズドンッ!!!


眼下から火柱が立つ。徳川艦隊が一斉に砲撃を再開。

あらゆる方角から雷のような砲火が空中のアタラヨへ集中する。


「くっ……!」


急旋回。カエデが舵を切る。

直撃こそ免れたが、衝撃波で軌道が狂う。


「このままじゃ……近づけない……ッ!」


焦りが口を突く。だがどうすることもできない。

目前に迫るは、曽是の旗艦。その巨体から繰り出される砲撃の雨。

このままでは、墜とされる。


そのとき――。


眼前の徳川戦艦の一つが、唐突に爆ぜた。


「えっ?」


光が走る。

まるで内側から炸裂したかのように、戦艦が弾け飛んだ。機体の中央が焼け焦げ、火の玉と化して落ちていく。


「何……?」


シンゲンが呟いた。


カエデは咄嗟にアタラヨを旋回させ、背後を振り返る。


そこにあったのは──空を埋め尽くす、大船団。


漆黒の艦体、金の縁取り。

いずれも旧式和船と現代戦艦を組み合わせたような奇妙な艦影。

そして、その中心にそびえ立つ、ひときわ巨大な黒き艦。

艦首に刻まれたその船の名はーー

《ルドー・ヴィ・ゴール号》。


「待たせたなぁ、嬢ちゃん!!」


船のスピーカーから割れるような声。

アタラヨの通信が割り込まれる。

映るのは、隻眼の男――アレックスだった。


「今こそ、相棒の借りを返す時だぜ!」


「港に残った船を戦艦に改造してね。急拵えにしては、なかなか様になっているだろう?」


その傍らに立つ、光の輪郭を纏ったもう一人の男。

かつて命を落としたはずの男。アレックスの相棒――パトリックが、そこにいた。


「航路は、僕達が開ける。行け、東雲カエデ!」


瞬間、ルドー・ヴィ・ゴール号の艦体から重厚な音と共に主砲が放たれる。


ズオオオオオオン─


蒼白の光が、戦場を穿つ。

徳川の前衛艦を根こそぎ粉砕する一撃。空中に進路が拓かれた。


「いける……今なら!」


シズメが呟く。

カエデが操縦桿を握り直す。


「アタラヨ、突っ込むよ!」


返答するように、機体が震える。


「さて、俺達の新たな船出の時だ!派手にやろうぜ!!」


アレックスの呼びかけにパトリックが笑う。


――戦局は、塗り替えられた。


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