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街の本屋の泥棒猫  作者: 蒼碧
Episode:泥棒猫

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69/141

Episode:泥棒猫20

原案:クズハ  見守り:蒼風 雨静  文;碧 銀魚

 翌日はちょうど三人とも都合が悪く、お茶会をできないとのことで、クロは西の貧民街へ出向くことにした。

 面倒な仕事は、さっさと終わらせるに越したことはない。

「確か、街の端っこだったな。」

 問題の武器屋は、貧民街の最奥にある古びた屋敷だ。

 その昔は、どこかの金持ちが住んでいたらしいが、この貧民街が形成されると同時期に、その金持ちが死んで、そのまま放置されているそうだ。

 名目上は空き家だが、そこでコソコソと武器を売り捌いている連中がいるというのは、貧民街では有名な話だ。

 直接的にはクロは関わっていないので、放っておいたのだが、それがこんな形で災いするとは思っていなかった。

「あれだな。」

 クロは物陰から屋敷を覗いた。

 荒れ放題になった、大きな屋敷が見える。

 パッと見したところ、人の気配はないが、屋敷の敷地内には、不自然な木箱が大小色々と置いてある。

「武器の売買をやってるのは、間違いなさそうだな。」

 クロは屋敷に忍び寄ると、あえて入口を避けて、屋敷の裏側の塀をよじ登った。

 そのまま、屋根に飛び移り、二階の割れた窓から中に侵入する。

「……マジかよ。」

 侵入したのは空っぽの部屋だったが、中はまったく荒れていなかった。

 むしろ、下手な屋敷より、よく掃除がされている。

 だが、家具の類が一切置かれていない。

「思ったより、大掛かりにやってるのかもな。」

 そうなると、王族の暗殺などという、大それたことに利用されたという説にも、真実味が出てくる。

「誰もいないよな……?」

 クロは扉に耳を当ててみる。

 とりあえず、廊下から物音などはしない。

 慎重にドアを開けると、隙間から廊下を見回す。

「うん、誰もいねぇ。」

 そのまま廊下に出ると、屋敷の中央に向かって進んでいった。その廊下も綺麗に掃除されており、やはりただの廃墟ではない。

 そのまま、エントランス付近まで来たが、クロはそこで足を止めた。

 一階のほうから、人の気配がしたのだ。

「……やっぱり、誰かいるのか。」

 クロは物陰に身を隠し、一階の様子を窺った。

「当たりだな。」

 エントランスには、ずらりと木箱が並べられている。

 いくつかは蓋が開いており、剣や盾のようなものが見える。

 だが、遠目なので、中身の詳細は判然としない。

 そして、その箱の合間合間に、何人か見張りと思われる男が立っている。

「こりゃ、箱の中身を確かめるのはムリだな。まぁ、ここまでわかれば十分だろ。」

 クロはそう判断して、元来た道を戻ろうとした。

 だが。

「おーい、誰か二階の部屋の窓を触ったか?」

 不意にエントランスにそんな男の声が響いた。

 見張りの男達が一斉に振り向く。

 見れば、クロが侵入した部屋のほうから、男が一人やってきていた。

 廊下の物陰に隠れていたクロには気付いていないようだが、そのまま駆け足でエントランスのほうへ向かっている。

「今日は誰も入ってないと思うぞ。」

 見張りの一人が答えた。

「二階の西の部屋のガラスが、わずかに割れて落ちていた。誰かが触ったかと思ったが。」

 クロはしまったと思った。

 確かに、窓を通る時、割れたガラスの破片を少量床に落とした。だが、本当にわずかな量だったので、気にせず来てしまったのだ。

「その為に、使ってない部屋まで綺麗にしてあったのか……!」

 クロは歯噛みした。

「誰も触ってないとすると、まさか侵入者か?」

「わからんが、念の為に探してみるか。」

 クロの背筋に冷たいものが走る。

 これは非常にまずい。

「くそっ!警備がガチ過ぎるだろ!」

 幸い、クロの侵入に勘付いた男は、エントランスへ降りていってしまっている。

 逃げるなら、今がチャンスだ。

 クロは物陰から飛び出すと、あえて先程の部屋に戻った。

 そのまま、窓に飛びつき、今度は割れたガラスに触れないようにして、外へ飛び出した。

 屋敷の中のバタバタとした音が聞こえてきたが、クロは構わず全力で屋敷から離れた。

「ったく、リアの頼み事に関わると、碌なことがねぇ!」

 クロは走りながら、一人毒づいた。

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