幸せな事と不祥な事
「国光、どうしたの?顔色は悪いのよ?」
「すまん、一人の先輩が亡くなったからついー」
同じ部隊ではないが、その先輩もランクレッドではない。
でも知り合いだから、切なくなれずにいられない。
「すみませんでした、まさかそんな事なんて…」
「いえ、俺も言わなかったから」
彩子に言うわけがないから、この切なさは一人で背負うしかない。
「でもあなたの仕事はそんなに危険な事なの?」
彩子はとても心配しそうな顔で国光を見ている。
「護衛、つまりボディガードだからな」
護衛は間違いないが、それはこの星のだけど。
いつか教えなきゃならない日が来るはずだけど、俺はそれが今ではないと感じている。
「そう言えば、父さんはご両親と会いたいって」
「え?」
「私もそろそろご両親を拝見したいところだと思っているよ」
さすがにこれは早すぎない?付き合ってから半年もないのに。そしてもっと基本的な問題がある。
「いいでしょう!もしかして他の女でもいる?」
俺が返事してないから、彩子の顔が変わった。
怖い。この瞬間の彩子、怖い。
「いるわけねえだろ」
狙撃兵を好きになるのはえりなさんと斎香さんだけだろ。
あ、グレイドさんもだな。
「なら大丈夫だね」
「わかった」
それしか返事できないけど、どうしよう…本当の両親とは分別したのに、今更彼女を紹介するなんて。
俺は心の中でそう思った。
「って事がありました」
悩んで悩んでも答えを見つからないから、俺は理江さんと相談してもらった。
「まさか桜翔の娘か」
理江さんは俺の悩みを聞いた後、シンを呼び出した。
あの、シンさんに知らせる心の準備が…
「そうか、あの子とお前か」
シンさんと桜翔は知り合いのか?
「シン、どうする?」
「理江、お母さん役を頼みたい」
「え?ではお父さん役はあなたの?」
「それしか無かろう。それに善次とも久しぶりだから、挨拶しに行くにはちょうどだ」
善次?
「彩子の父親にして、桜翔組の組長だよ」
俺の疑問が見抜かれたように、理江さんは説明してくれた。
シンさんと理江さんのお陰で、俺と彩子はお互い両親の会面時間を確定した。
しかし本当にこれで大丈夫だろうか?
「剣心には残念だけど、それはお前の幸せとは関係ない」
シンさんは心配しそうな顔をしている俺にそんな話を言ってくれた。
本当に感謝する。
「誰か貴様らは!」
ゲートの下端っぽい奴はすぐ俺たちに咆哮した。
「善次と約束したぞ」
「テメエなんかうわ」
目の前の若い男はまた何か言いたいようだけど、隣りの先輩っぽい人に阻止された。
「シンの兄貴、お久しぶりです、今日は何か御用でしょうか?」
知り合いというより、ここまで尊敬されたなんて…シンさんがガーディアンスに入った前には綾崎家の護衛のはずだが…
「お前も知っているかもしれん、うちのこの子と彩子と付き合ってる事」
シンは親指で国光を指して説明した。
「あ!まさかシンの兄貴は…!」
「まあ、一応その立場で、善次はいつもの場所か?」
「はい!組長は既にお待ちしております。こちらへどうぞ」
さすが尊敬すぎる、俺はどんな反応が良いかわからなかった。
「まあまあ、そこは深く考えなくてもいいのよ」
理江さんも相当慣れているのはどうなんだろう…
「組長!シンの兄貴御一行がいらっしゃいました!」
ちょっと豪華な室まで連れされたけど、シンさんは明らかに場所を知っているようだから、案内と言うより情報交換の方が近い。
そしてその室の中、彩子とそのお父さんは既にそこに待っている、やっぱりあの人か。昔見たよりさらに威厳が増えた顔だが、それもシンさんを見た瞬間消えた。
「まさかこの小僧はお前と関係があるとは思わなかったぞ、シン」
「エミリーの件、感謝する」
「そう言えばどこで見つけたのか?そんな綺麗な嬢ちゃんを嫁になってもらったのかよ?」
あ、それはクロエさんの事だな。そして綺麗な嬢ちゃんを言った時、理江はシンをつまんだ。
「とりあえず本題に入ろう、実の親ではないが、この子は俺の優秀な部下で、彩子の夫に相応しいと思っている」
「お前がそこまで言うなら、こっちには反対する理由も無くなっちまったじゃねえのかよ。まあ、この前そいつと対面した時、腕を折れされた痛みは今でもはっきり覚えてるぞ。そして一人でうちの組員複数を倒れた実力、ちょっとあの時のお前を思い出したぞ。まあ、その時のお前とはまだ程遠いけど」
「昔の事はやめてもらえるか?」
シンはその時の事に苦手のような、渋い顔を出している。
「わかった、では俺らは一旦離席するどうだい?綾崎家から他の職場に移籍したと聞いたが」
善次はシンさんにウインクをしたから、三人の大人が一緒室から出ていた。
「ふー緊張したよ!」
「俺もだけど」
俺ら二人の緊張は全く違う意味のようだけど。
「まさかあの処刑者さんは国光の上司なんて」
「何それ?」
知っても知らない振りをした国光であった。
ランクレッドだから、情報権限が高く持っているうちに、いろいろ知っていた。その中にはシンさんの過去も含めている。だから俺はシンさんに敬語を使う、それはカミトさんから注意されただけではない、俺は素直にシンさんを尊敬している。
「私も詳しく知ってないけど、お父さんから聞いたより、相当危険な人だって。お父さんとは知り合いとはいえ、あの綾崎家のエースだから、少しでも恐れている」
そうだな、シンさんはあの「企業」の改造人間、戦闘力は並みの人間より遥か上になっている。その領域まで至ったら、人間より兵器の方が近い。
「シンさんは優しい上司だよ」
本当に化け物だけど。
「そうなの?」
「そんな事より、どうやら俺とあなたの結婚は決定事項になったような気分だと気がしてるが」
「元々そのつもりでご両親と挨拶したいんだけど」
さすがに来る人は想像とは違ったっての話、彩子は喉に留めたようだけど、顔を見ればそれはわかっていた。
「でも…」
「その先輩が亡くなったばっかりのに、すみません。でもお父さんはどうしても早く決めたいって」
彩子の状況から見れば、それも仕方ない事だろ。だから謝りばっかりの彩子に、俺は優しく答えた。
「いえ、それは大丈夫だ。シンさんがこうやって俺に言われた『それはお前の幸せとは関係ない』って」
「そうか、よかった!」
「どうやら二人は大丈夫だな!」
帰ってきた善次とシン、そして理江まで優しい顔で俺と彩子を見ている。そうか、これは忘れていた両親の温もりか。
「善次よ、一つ教えなきゃならない」
「なんだい」
「国光の能力が優秀だから、こっちから放すわけがない」
「まあ、そうだろな。彩子を他の場所へ移居するのは不本意だが、俺には選択肢がなさそうだな。まあ、彩子の夫を組長を受け継ぐもらいたいが、そこも諦めしかないようだな!」
「しかしお前は喜んでるんだな」
「家の環境と本人の性格がああ言うだから、てっきり男ができないと思った。あの日もお見合いの話に彩子に怒られたから、家から出てしまった…」
「それはお父さんが悪かったから!」
「ほら」
「もう!」
そのまま善次の話を証明した彩子はすぐ恥ずかしくなっていたようだ。
「ところで、婚式はどうします?」
伝統な和服を着ている理江さんは質問を言い出した。
「俺の娘だから、組のみんなは盛大な式を期待しているに違いない。しかし彩子は昔からずっとあまりそんな事がしたくないって」
「だって面倒だもん」
それに今回はある程度綾崎家にも関わっているから、きっとそれ以上の面倒になる。
「まあ、二人の意思の上で、俺の妻と理江に任したいところだが」
「理江、任せるか?」
「お任せください」
「よろしくお願いします」
俺と彩子は一緒に理江と後でやって来た彩子のお母さんに頭を下げた。
「シン、彩子は頼んだぞ」
さすがにそれは俺に言われる方が正しいだろ!
まあ、彩子を受け入れたから、ちゃんと責任を取るしかない。守りたい思いは奇跡を起こす、それはセラフィーブリンガースの格言。今はシンさんの部隊にいるけど、ガーディアンスなら誰でもその部隊に入りたいと思った事がある、特にランクレッドだ。
だから赤城さんに選ばれた時、寝られないくらいに興奮した。
それも俺の実力が評価された証拠だから。
彩子との出会いは偶然だけど、今は運命だと感じている。
性格が強いとはいえ、他人を無視するような真似はしない、むしろちゃんと他人の事を考えたら強くなった。
今それはどうでもいい。俺と彩子は夫婦になるから。
三ヶ月後、俺と彩子は式を挙げた。
和歌奈さまとデゥカラガンさまも参加していただいた、光栄だ。
クロエさんもシンさんに会いに来た。少し理江さんと揉めたが、基本的に無事で式を成功できた。
「今日のデート、待っていたよ!」
「ごめん、任務があってしまって」
「大丈夫よ、結婚した前にちゃんと教えてくれたから、今更文句は言わないの」
「では次の場所へ行こう!」
今日は、補償する為のデート。それは仕方ない、シンさんは悪い組織の情報をもらったから、千人以上の受難人がいたなんてさすがに俺でも怒ってきた。
気をつけてねって彩子に言われたから、俺は出発した。
彩子を寂しく思いかけて、俺の心が痛い。だから今日は絶対彩子しか目に入らないようにする。
「緊急警報、緊急警報、不明生命体が現れました、この警報を聞いたみんなさんは早めに避難してください、繰り返します、不明生命体が…」
突然流れて来たアナウンスが俺の注意を引いた。
不明生命体、どう考えても異種しかない。
だから俺は本能的にその異種の方位を探した。
嘘だろ…!
剣心先輩を撃墜したのは翼獣型、一般の飛行機には強敵だけど、適当な装備を整えられたら強敵ではない。
しかし今俺が見たのは悪夢のような存在。
機龍型。
それは数多いランクレッドの中でもほんの少しだけ対応できる危険な化け物。
ここのガーディアンス部隊は知らないが、この国の部隊にとっては絶対無理な相手だ。
街のみんなが恐れて逃げている。
それも当然だろ、それは死と直結する存在。
逃げる人の海の中、俺は機龍に向かって走ってるグループを見つけた。
「あなた!私たちも早く!」
彩子の俺を引いてる手から恐怖を伝われている。
俺の呼び方は式からあなたって定着していた。
彩子の声を無視して、俺は彩子を強引にあのグループに連れて行く。
「逃げてください!危険です!」
そのグループも俺と彩子を気付いた。まあ、逃げている人たちと逆方向走ってるからな。
ずっと彩子に言ってなかった、俺の真実。
「お前らはガーディアンスだろ!俺は特殊陸戦部隊所属の最高級戦闘兵、AI IDはTAMARA!」
「あなた、何を言ってるの?」
おそらく彩子から見ると、俺はもう狂っているかもしれない。彩子の俺を掴んでいる手の力が更に強くなった。
「…コードが合ってる!?どうして龍宝寺さんはこんな場所に…?」
相手も俺のAI IDによって俺の身分を把握したから、俺の苗字を呼んだ。
「え…今なに…?」
彩子は困っている。それは無理もない事、だって、今彩子は真世界を知ってしまった、俺の口で。
「お前らはどうするつもりは知ってないが、PAWSもないのにあの機龍を止めるはずがない」
「とう言うと?」
「俺は俺の本隊に雷光剣を要請するから、お前らは犠牲が出さない前提であの機龍をこの前にある広場に誘導する」
俺はAIで彼らに地図を示した。
「雷光剣だ!」
「それなら希望を見えるようになったな!」
「感謝する、しかし奥さんはどうする?」
当然な問題。雷光剣のコックピットはダイヴだから、伝統のコックピットのようにもう一人を乗れる事ができない。だから適当な場所で預けるしかない。
「お前らの前線基地に預けたいが」
「わかりました、ではその方向へ」
「感謝する!」
「こちらこそ、雷光剣の資格を持つ強者よ!」
最後に俺は彼らに敬礼した。
「ねえ、あなた、いったいなにを言ってるの?」
彩子が混乱しているようだ。それも仕方ない。
「とりあえず詳しくは後で、こっちへ!」
「龍宝寺さん、頼んだぞ!」
「わかっている!」
『そうか、お前は現場にいるのか!』
彩子を連れて走りながら、俺はシンさんに連絡した。
「はい!緊急状況だから、俺の雷光剣を用意してください!あの方法なら、間に合うはずです!」
『了解した!しかし気をつけて、カミトたちも出動準備している、それまで頼んだぞ!』
「了解!」
「さっきのはシンさんの声だよね…これは一体…」
「彩子、俺は戦わなければならない、だからここで少し待ってて」
前線基地でもう一度AIを認証した後、そこの指揮官に彩子を頼んだ。
「本当に大丈夫か?それはランクレッドでも手強い相手だぞ!昔はランクレッド四人でようやく倒せたけど、犠牲も出たと聞いた!」
それはカミトさんたちが初めての機龍と戦った事件だな、座学で習いだ。しかしこの数年間は聖剣と魔剣がある、そして対応装備や戦術もかなり進んでいた、あまり難しい相手ではなくなった。
とは言え油断できない相手だ。
『国光、三分後で着陸する、座標ポイントは既に君のAIに送った』
「了解した!」
理江さんからの連絡、俺は行こうとしたが、彩子に引き止められた。
「彩子?」
「あなたの先輩が亡くなったのはそう言うものと戦ったの?」
種類と事件は違うが、今は説明する暇ではない。だから俺は頷いた。
「お願い、行かないで」
「彩子、今まで瞞してごめん、俺はガーディアンスと言う組織の最高級戦闘兵、通称ランクレッドの一人、だから今俺は行かなきゃならない、俺は弱者の盾となると誓ったから」
強引に彩子の手を振った、
「なにを…!」
「俺の妻は頼んだ」
「はい!」
予定時間はあと三分、少し距離があるから、俺は慌てて走り出した。
その機龍は止まらずに破壊を繰り返している。異種は純粋な悪意から生まれた憎しみ存在、だから知っているのはそれしかない。これもそのザッドまで遠征したセラフィーブリンガースが持って帰った情報。これまでは一部の人が異種を理解し話したいが、それを知った瞬間、そんな声は全く消えた。
だから今俺がやるべきことは簡単さ、その機龍と殴り合えばいい事だ!
予定通りミサイルようなものが予定ポイントに刺している。
俺を感知したら、ミサイルの殻が分けて、その中にある人形ものを俺に見せた。
雷光剣。
「頼んだぞ、相棒!」
俺は素早く雷光剣に登って、コックピットに入った。
雷光剣は専用機に扱っているから、俺の機体ならば、全ては俺に合うように調整している。
意識が雷光剣と同期した、今雷光剣は俺の手脚のように動けるようになった。
全能感が溢れてきた。
絶対守り抜くを見せる!
いくぞ!
龍宝寺国光:シンの部隊に所属するランクレッド、最近は桜翔組のお嬢さんと結婚した。
桜翔彩子:実家はヤクザだからあまり男運がなかった一般人だけと、国光から運命を感じたから、最初から好感度が高くなった。
雷光剣:光子動力PAWS、その性能が高いから、ライセンスがないと操縦が許されない。
お待たせしました




