「君はいつか世界を滅ぼす悪になれる」
ブクマ感想ありがとう!
そして先に報告します。
幼少期終わりませんでした。
意識を取り戻したアレスが目の当たりにしたのは、にわか信じがたい光景であった。
夢心地が抜けていないからか、まだ思考が定まらない。だからこそ目を疑い、こちらに気づいた悪人が自分よりも遥か高みの存在だと思い知らされる。
「凄いな少年。僕が断言しよう。君はいつか世界を滅ぼし得る悪になれる!」
嬉しそうに口にする白銀の髪をもつ青年――大罪人は、その腕でまだ子供の大狼のカラダを貫いていた。
側には大狼の群れが全て倒れ、白い雪を黒く濁った血で染め上げている。
彼が何を思うのか理解できない。
だが、その圧倒されるまでの強者の言葉に、鳥肌が立つ。
褒められたのはいつぶりだろうか。
隠されていた童心が蘇り、亡き父たちを思ってアレスは目が熱くなった。
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「いやー、良かった良かった。本当に良かった」
そう言ってしきりに頷いていた大罪人の次の言葉にアレスは頭に血が昇るのを感じた。
「時間かけて回復させるのが面倒になったから一気に魔力を注ぎ込んじゃったけど、間違えて許容量を超えてしまったみたいで……。爆発するかと思ってたけど杞憂だったようだね。心配して損した気分だ」
損とはなんだ、俺の感動を返せ。
今すぐに殴りかかりたい衝動を抑え、言われてみれば先程までの脱力感が嘘みたいに回復していることを知って一応は治療行為をしてくれたんだと自分を納得させる。恩を仇で返すような真似をしてはならない。
「……はぁ」
アレスはもはや大罪人は突っかかる意思もなくして脱力した。側に寝かせてあるフェイを背負い、立ち上がる。
「あれ、まだ話終わってないんだけどどこ行くの?」
「ここで話してられるか。逃げるつもりなんてないから先に移動させてくれ」
頭をよぎるのは、あの黒い影の魔物たちが笑う姿である。その一体一体が恐らくは全快したアレスよりも強く、今度囲まれでもすれば命はないかもしれない。逃げ延びたのだってあの影たちが見逃した節があるし、例え大罪人という強者が近くにいたとしても不気味なこの場からは一刻も早く立ち去りたかった。
「なるほどね、君はまだビビリくんか」
先にフェイを背負って森を出ようとしたアレスは、大罪人の言葉を背後に立ち止まる。
振り返って言い返したかったが、大罪人の言葉が事実である以上、口を噤むほかなかった。
そして、代わりに口をついて出たのは、久方ぶりの弱音だった。
「俺には……守らないといけない奴がいるんだ」
そう言ってアレスは足を動かす。
「……ふーん」
残された大罪人はまるで納得のいかないように言葉を漏らし後を追う。
その背後では黒い影の魔物たちが笑いながら、地中に沈むよう還っていた。
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アレスはフェイを背負い、真っ白な雪を踏み固めながら歩く。吐く息は相変わらず白く凍えるような寒さで、結局フレアの実を入手できなかったことに対して罪悪感を感じる。
今頃、ノエルと子供達は寒さに震えているのだろう。眠れずにいる仲間を想像して、悔しさすら覚えるが、まずは後ろを付いてくる自称悪党と話に蹴りをつけなければならない。後ろに背負っているフェイは自宅の前にでも置いておけばいいだろう。
そう考えて結界から無事出ることができたアレスは足を止めて大罪人へ振り返った。
「あれ? おうちに招待してくれないのかい?」
「……家なんて呼べる場所はない。俺はゴミと呼ばれてる落伍者だ。そもそもあったとしてもお前みたいな怪しい奴に教えるわけがない」
「おっと、手厳しい」
飄々とした謎の男。自らを悪党と称し、そしてそれは服についた返り血の痕跡が証明しているようにさえ思う。
なんの気まぐれで自分を助けたのか疑問に思うアレスだったが、警戒している最中、大罪人は目を細めて口元に弧を描いた。
「それにしても、君がゴミなのか」
全く、なんて都合が良い。
そう絵に描いたような悪どい笑みにアレスは警戒するが、大罪人は慌てて警戒を解こうと「ナシナシ、今のナシ」と取り繕うが取り繕えてきれていない。
この警戒をいつまでされても面倒だったので大罪人は露骨に話題を変えようとした。
「それはともかくだ」
それってなんだよ。
割と露骨すぎて逆に拍子抜けてしまったアレスの方が耐えきれず、いちいち突っ込んでいては話が長引くので聞き手に徹する。
大罪人が話す内容は、思わずアレスの目を座らせる内容であった。
「結論から言おう」
大罪人は胸元の服をはだけて心臓部にぽっかりと空いた風穴を見せつけ言った。
「僕を救ってくれないか?」
悪を救う。
例えば目の前の男が死に体だったとして、果たしてそれは正しいことなのか。
アレスには見当もつかなかった。
取り敢えず序列をはっきりとさせたかったので大狼はここで退場です。
今までの登場(?)人物の序列を簡単にまとめると
アレス父≧剣聖≧大罪人>王国最強>赤髪の謎の男≧影の魔物>大狼>アレス>警備隊の男>フェイ>アレス母>高貴な少女≒ノエル>三人の子供
因みにこの指標、使えません。
最低限、大罪人さんって強いんだぞーってところを見せようとした演出です。数年したら変わります。
何気に魔物たちより強い人たちが大勢いますが、この方たちはヘタな化け物より化け物だと思って貰って構いません。
王都での常識
○郊外にある『掃き溜め』と呼ばれるスラム街に住み着く落伍者のことをゴミと呼ぶ。
そこでの生活者は大抵が捨て子で、各々が縄張りを作って不干渉を暗黙の了解としている。
明日を生きる糧を探すために外へ出るものが多いが、まだ体力のない子供達は王都に出て盗みを働く事もある。また、ゴミを漁り散らかす事もあったことからスラムの子供達は忌避される存在となり、姿を見つけ次第捕縛、拷問が行われている。人間としてみられていないケースもある。
これが僕の書ける最高の胸糞設定。
耐性のない方は、今後このレベルの描写をすることを胸に止め、ブラウザバックを推奨します。
そしていつ幼少期、ひいてはプロローグが終わるのかと言いますと、この文字数のペースだと10話は余裕で超えそうです。
よって話数稼ぎは嫌うところなので、今後の投稿は5000字を目安にする予定です。そしたら5話に収まるかもしれません。……知りませんが。
とりあえず幼少期は次話でなんとしても終わりたい。
誤字脱字矛盾点などありましたら教えていただけると幸いです。




