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それからの日々はあっという間に過ぎていった。学園での勉強と騎士団での訓練の繰り返しだった。つい最近になって少しずつ言葉や会話もまともにになっているとアルベルクさんに褒められたばかりで、気づくと季節は夏だと気づいた。初めての夏というのは汗ばむ気温と青い空が印象的に残った。
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いつもより早く終わった学園を後に図書館に向かった。久しぶりに行く図書館は毎日、帰っている寮よりも落ち着く匂いがして変わっていないことに安心した。着いてすぐに目指すのは1番奥のいつもの場所、少しだけアルベルクさんがいることを期待して。
「やぁ!!こんなところで会うなんて奇遇だね〜」
聞いたことがある声はアルベルクさんと同じ騎士団にいるマルスさんだった。ここに閉じ込められた時に助けに来てくれた人だ。細めのタレ目と人馴染みのいい雰囲気で騎士団との訓練でなかなか喋り出せない私をいつも助けてくれる。
「こんにちは」
「訓練場以外で会うなんてなかなかレアだね。いきなり悪い知らせで申し訳ないけどアルは今日、騎士団の用事でここには来れないよ〜」
「そ、そうですか」
きっとそんなに動揺せずに答えられたはずだ。たぶん、、、
一瞬、視線を感じが気がして、視線の先を見るとマルスさんの横に絵本から出てきたような緩い金髪ウェーブのお姫様がいた。
「ーーマルス兄様、こちらの方は?」
「あっ!すまないね!こちらは騎士学園に通っててうちの隊で面倒みてるシックスちゃんだよ〜」
「そうなんですの。」
「シックスちゃん〜、僕の隣にいるのは父の友人の子でカリーナちゃん!可愛いでしょう?」
「ちょっとマルス兄様!!何をおっしゃってますの!!恥ずかしいことはやめて下さいな!」
「あ!そうだ!!シックスちゃん、良かったらカリーナの友達になってくれないかな?年齢は2つ下だけどしっかりしてるしいい子だから〜」
いきなり会話を振られて固まってしまった。横ではカリーナさんが顔を真っ赤にしながら何か言っている。「シックスちゃんは人見知りが激しいけどいい子だよ」「君だって友達を欲しがっていたじゃないか」とか聞こえた気がする。
言い合ってる二人を見ていると
「ね!いいよね、シックスちゃん?」とマルスさんが急に悪魔的な笑顔をこちらにむけてきて思わず
「私でよければ、、」と返していた。
横で大きなため息が聞こえた。
なぜかその後は仲良く3人でお話。というよりはマルスさんの話にカリーナさんが言い返してたまに私が相づちをするということの繰り返しだった。訓練に行くとマルスさんがよく女の人と話すところをよく見かけていたけれど、カリーナさんと話す時は雰囲気が違うのを感じた。それが何かはわからないが、、
図書館の閉館時間はあっという間にきてしまい私達は外に出た。
「シックスちゃんには申し訳ないけど、僕はカリーナを送って行かないいけなくて、、」
「大丈夫です。寮はすぐなので。今日は楽しかったです。ありがとうございました」
「ありがとう〜ほら、カリーナ!せっかく友達になったんだから何かないの?」
「わ、わかってますわよ!シックス!ではまたお会いしましょうね!!後、手紙を書きますわ!」
「なんだか硬いね〜、ここはハグでもするところだよ!でも手紙はいいね!僕が伝書鳩の役割をするよ!!」
「また訳のわからないことを!!伝書鳩は頼みますわ!切手代が浮きますから」
なかなか切れない会話は迎えの馬車がきてようやく終わった。2人が馬車から手を振ってくれて、私は小さく振り返した。私はどうやら今日、新しく友達が出来たようだ。