69. 第3章その33 リベンジ
「あきたわ。」
「えっ。」
「もう、あなたに飽きたのよ。」
普通に言われたら傷つく言葉ベスト10だが、サブリナに言われても何とも思わない。
「どうしたんですか?」
「教える気が無くなった。
というより、教える事が無くなったわ。
後は経験を積むだけね。」
サブリナは少しだけ寂しそうな表情で将を見つめた。
「お別れね。」
あれ、なんだかチョットだけ悲しい。
「また会えますよね。」
「どうかな、この広い世界で会えるかなんてわからないわね。
だから面白いんじゃない。
じゃあ、ショウ君、またね。」
「いままでありがとうございました。」
将は深く頭を下げる。
その下げた頭をサブリナは優しく撫でた。
「あなた、強くなれるわ。
いつかその姿を見に行くわ。」
その言葉を聞き、将が頭を上げると、もう姿が見えなくなっていた。
すでにお昼を過ぎていたこともあり、家に帰る事にした。
「ただいまぁ。」
「お帰りなさい、ご主人様、今日は早いですね。」
ヤスミーンがいつも通りにこやかに出迎えてくれた。
「ああ、たまにはね。」
そういって、中に入ってソファにどっかり座った。
「お茶を淹れましょうか?」
「いいなぁ、お願いするよ。」
ヤスミーンの淹れてくれたお茶を飲みながら、この一月の訓練を反芻する。
シルフィとエミリア達も、だいぶ特訓の成果が表れてきたと話していたし、そろそろ3人での連携を確認する段階かな、と思案する。
その日の夕食に将は2人に話を切り出した。
「そろそろ、訓練の成果を実戦で試さないか?」
「そうだな、いつまでも訓練ばかりしていてもしかたがないしな。」
「私も神聖魔法の攻撃系呪文を覚えたし、棍の扱いもずいぶんレベルアップしたと思うわ。
一度どのくらいやれるか試したいわね。」
3人とも約一月の訓練で、それなりに成長した実感があるので、実戦で試したいという気持ちが一致したようだ。
「じゃあ、明日は久しぶりに3人で依頼を受けよう。
今日は良く寝て体調を整えるか。」
将の言葉に2人は頷いて少し早目の就寝となった。
次の日、久しぶりに3人でギルドに顔を出して依頼掲示版を物色する。
「やっぱり討伐系の依頼だよなぁ。」
「あたり前だろ、ここで採集系の依頼受けてどうするんだ。」
軽く会話を楽しみながら、依頼を眺めていると。
「これなんか、よろしいんじゃなくて?」
将の後ろから、聞いた事のある声がかかる。
…そこには、サブリナが依頼書を持ってにこやかに立っていた。
「えっ、どうして。」
「どうしても何も、私は冒険者よ、ここにいたって不思議じゃないわ。」
いろいろ台無しだよ、と思いながら依頼書を受け取る。
小声で、エミリアが将に話しかける。
「この男の人がサブリナさんなの?」
「ああ、そうだが。」
「男の人じゃない。」
「そうだな。」
将からは、これ以上のコメントはしようがなかったので依頼書を読むと
【討伐依頼】
内容:
徒歩3日ほど東にある、カルザイ男爵領周辺での魔物討伐を依頼したい。
達成報酬:
魔物のランク毎に決定、5体以上で10%、10体以上で20%の追加報酬
期間:特に限定しないが、出発時に申請する事
備考:カルザイ男爵領内ギルドで到着と実施の登録が必要。
魔物はBランク相当のジャイアントライオンの目撃有。
男爵領北は人外魔境至近。
「確かに、以前受けた開拓村での依頼に近いレベルだからちょうどいいかも。」
「そうね、これにしましょうか。」
「気を付けて行ってくるのよ。」
サブリナが満足げにコメントする。
「ええと、ありがとうございます。」
シルフィが珍しく、引きつりながら敬語でお礼を言った。




