64. 第3章その28 後片付けは大事です
「おかえりなさいませ、ご主人様。」
「ただいま。」
ヤスミーンの出迎えを受けるとホッとする。
「シルフィ様とエミリー様はお風呂に行かれした。
ご主人様はいかがなさいます?」
「そうか、じゃあ俺も行こうかな。」
「お着替えはベッドの上に置いてあります。
お風呂にお持ちになる物もそろえて置いてありますので。」
「気が利くね、いつもありがとう。」
(こんなに色々やってもらうと、メイドがいなくなったら困ってしまうな。)
などと考えながら、風呂に向かった。
ざっと体を洗い、風呂に少し浸かるとさっぱりしたので、すぐに出た。
もともと将は、長風呂するたちではないので、短い時間でも満足する。
外に出ると、ちょうど同じく風呂上りのシルフィとエミリアに会った。
「よう、二人とも今あがりか?」
「そうだ、久しぶりにゆっくり風呂に入りたい気分だったからな。」
「ふふ、どうやらお師匠さんに今日もセクハラされたらしいのよ。」
「ああ、あいつに触られた場所は丹念に洗わないと気持ちが悪い。」
シルフィはちょっとご機嫌斜めな様子だ。
「ショウの方は、今日どうだったんだ?」
「ああ、新しく覚えた呪文を一つ練習できたよ。」
「へぇ、どの呪文かしら?」
「“フライ”」
「どうだった?」
「どうと言われても。
飛べた…としか言いようがないが。」
「習得できたのか、さすがだな。」
「シルフィが聞いたのは、普通は覚えたからって習得できるとは限らないからよ。
まあ、あなたに聞くのもバカバカしくなるけど。」
「そうか、すまないな。」
とりあえず、謝るのは日本人の習慣だが、他の国の人には、なかなか理解できない。
「なぜ謝るんだ?
べつにショウは悪い事してないだろ。」
シルフィがナチュラルに尋ねる。
「いや、エミリーやシルフィに不快な思いをさせたかと思って。」
「べつに、そんな事ないぞ。
それより、むやみに謝ると軽く見られるぞ。」
「ああ、わかった。
すまない。」
シルフィとエミリーがダメな子を見る目で見つめる。
「ご、ごめん。」
追い打ちをかける将だった。
「でも、ショウ。」
「なんだ。」
「“フライ”は風属性だと上位の呪文だし、“重力?”を操る方法は、少なくとも私は聞いた事がないわ。
変に注目を集めない様にするなら、使う時は注意した方がいいわよ。」
「そうだな。
一人の時か、エミリー、シルフィの前以外では、使わないようにするよ。」
そんなやり取りをしながらホームに戻り、ヤスミーンの作った夕食を食べながら今日の出来事を話した。
そして次の日も、将は新たな呪文の習得に湖へ向かった。
今日は、風も強くないため“ファイヤーストーム”を試す予定だった。
まず、将は“ウォーターウォール”を使い、周囲を水で濡らし延焼が広がらない様に準備をした。
少し休憩をして、練習がてら昨日覚えた“フライ”を使って上空から周囲に動物や人間がいない事を確認する。
「よし、準備はできた。
とりあえず、まずは試しにやってみますか。」
将は、発動させる事を前提に、あまり出力を落とすという事は考えず魔法を発動した。
イメージとしては、キャンプファイヤーをさらに強くして、下から空気を供給し炎と風が十分に混ざって、上に登っていく様子を考えた。
「ファイヤーストーム!!」
ゴウッという、凄まじい音とともに真っ赤な炎が周囲50mほどを舐め尽くした。
現れた炎は1.5mほどの高さだったが、それが集まり中央で10m近い高さまで竜巻の様に炎の柱に変化して、しばらく炎の柱が移動して周囲を焼きつくし徐々に鎮火していった。
あまりの威力に、将は唖然としてしまった。
それなりに離れた位置にいたのに、火勢で顔が痛くなるほどだった。
「あっ、あぶねー。
これ、周りを水で濡らしてなかったら絶対燃え広がったよ。」
使いどころが難しい魔法である事が理解できた。
それと、感覚的に少し休まないと、もう一度同じ出力で魔法を発動させるのは難しいほど魔力が消費されていた。
休憩をはさみながら、同じ手順で日が傾くまで練習して、範囲は直径5m程度まで小さくする事ができた。
範囲を小さくすれば消費魔力も少なくなり、数回は使える感覚を得られたし、発動時間を長くする事も可能だった。
最後に、燃え残りの無いよう、練習した場所をウォーターウォールで入念に後片付けし、家路についた。




