62. 第3章その26 王立図書館再
最近、シルフィとエミリアの2人は自己鍛錬のルーチンができつつあるが、将はまだ指導者も決めずとりあえず色々自由に活動している。
今日は、先日訪問したが閲覧していない魔法関連の書物を読みに王立図書館に来る事にした。
前回訪問しているので今回はスムーズに受付を済ませ、魔法関連図書の部屋の前まで来る。
「すいません、魔法関連の図書を閲覧したいのですが。」
「はい、こちらの別室に入室できましたら自由に閲覧下さい。」
若干緊張して、扉のノブに手を掛け力を入れるとドアが開いた。
中には、この部屋担当と思われる人がひとり、椅子に座って本を読んでいた。
「あ、魔法関連図書の閲覧ですね。
貴重な書物が多いので気をつけて取り扱ってください。
また、ある一定の素養を満たさないと閲覧できないタイプの書物もございます。
閲覧できない場合は、その様にお考え頂き、書物を雑に取り扱ったりはしないで下さい。」
以前、そういう人もいたのだろうか、担当の女性は静かに警告した。
魔法関連の書物といっても、歴史であったり、魔術師の紹介的な本など多岐に渡って所蔵されていた。
今回の目的は、現行の魔法関連の実態把握のために、”魔法大全”を読む事と、今後のために強力な魔法を取得できるきっかけをつかむ事にしていた。
まずは、ナンブードリパッド氏の著書”魔法大全”を取り、司書にこの本を読む事を伝えて閲覧をした。
内容は、属性や発動条件など詳細が記され、低位と中位の魔法の正しい呪文やイメージを全ての属性にわたって網羅していた。
上位および秘術レベルの魔法に関しては、それを使用できる師匠に指導を行ってもらうべきで書物で記す事は避けるとされていた。
著者としては、人格的に問題がある様な人間がむやみに高位魔法を扱える様になる事で世の中が混乱することを避けるためと記述されていた。
(この著者はずいぶん細かい人だったんだな。この人に教わっていたら、ちょっと面倒だったかも。)
と不謹慎なことを考えながら、呪文の詳細などに関しては流し読みをして読破する。
この本を読むだけで、すでに昼すぎになっていたため、一度ホールまで出て休憩室でお茶を頼みながら休み、再度入室する。
“魔法大全”を読む事で、自分が中位魔法までは取得していた事を再確認していた。
その著書の中で上級の魔法の記述が禁止されていることから、他の本にそのたぐいの呪文が記載されているのは期待薄だと思いながらも、しばらく本を眺めている。
「おや?」
思わず声が出てしまったが、背表紙に見た事がある紋章があった。
自分の指輪の紋章と確認すると同じ文様であることがわかった。
題名は“資格あるものへ”というシンプルな本だった。
取り出して、司書に見せると。
「ああ、この本ですね。
題名が思わせぶりなので、たいていこちらに来た方は読もうとされるのですが、何も文字が書いてないのですよ。
ただ、魔力が込められているのは確かなので、何か条件があるのだろうという事でずっと置いてある本です。
読めるといいですね。」
にっこり笑いながらコメントしてくれた。
早速、本を開いてみると確かに何も書いてない。
魔力を本に送るイメージで再度本を開いてみる。
すると・・・。
真っ白だった。
「うーん、何も書いてないなあ。」
将が独白すると、司書さんがニッコリしていた。
何か、本に仕掛けがないかと、色々なページを開いたり、上から見たり、背表紙を押してみたりしてみたが、どうにも白紙状態は変わらない。
(もう、あきらめようかな)
そう思って本を掴もうとして指を滑らせると、偶然にも背表紙の紋章と指輪の紋章がぶつかる。
すると、本が少し輝いた様に見えた。
急いで本を開くと文字が見える。
“今、この文字が読めるという事は、おぬしは何らかの形で私に関係し、魔法の指導を受けた人間だろう。
この書物には、ある一定レベルの魔力を持つ人間にしか扱うことができない魔法を記載した。
読める部分は、使用ができる魔力を持っていると考えよ。
読めない部分があれば、まだ習得する時ではない。
魔力が高まった後に再度読むと良い。“
そんな風に記載されており、将は前半の4つの魔法だけが読む事ができた。
ひとつめは、“フライ”、文字通り空中に浮かぶ呪文だった。
ただし、風属性の“フライ”とその他になる重力制御による“フライ”の2通りの手法が記載されていた。
風属性は一般的な属性魔法の派生として使えるが、魔力消費量なども多く他の呪文との併用ができない。
重力制御によるものは、呪文の行使そのものが適性ある人間が少ないのと、制御に修練が必要との事、魔力消費量が小さく、持続性があるので他の魔法との併用が可能となっていた。
こんな魔法もあるんだ、と感心しながら読み進める。




