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21. 第2章その12 練習試合

 受付で練習場の使用許可をもらい、一日の使用料1シュケルを支払って移動する。

 担当に話をすると、練習用の木剣や防具も貸してくれるとの事だったが、防具に関してはショウもシルフィもいつもの装備で問題ないと断った。

 その他、魔法の標的用の案山子を10体購入、これも1シュケルしたがショウが支払った、練習場の費用をエミリアが支払っていたからだ。

 練習場の担当者は剣術の教練師も兼ねていたので、快く試合の審判を引き受けてくれた。

「ひまつぶしにちょうどいい。」

 と、とても素直なコメントと共に。


「どちらを先にします?」

 エミリアが将に尋ねる。

「そうですね。魔法を先にすると集中して少し疲れてしまうので、剣の試合を先にしても良いですか?」

 エミリアがシルフィを見ると。

「全くかまわない。」

 とのこと。


「怪我をしても私が直してあげますから、思い切ってがんばってくださいね。」

 とエミリアが言ってくれた。


(私が怪我する事、前提なんだな。)

 と若干だがプライドを傷つけられたが、ランクが上の相手だし、と気を引き締める。


 将とシルフィの2人は審判役の担当者と練習場の中央近くに移動し、少し離れたところにエミリアが待機した。



「よし、これは練習だからな。私が1本と言ったら、それ以上の攻撃は止める様に。

 先ほどの依頼どおり3本勝負と言うことで、2本取った方が勝ちで勝敗が決まった時点で終了。

 手当ては試合終了後、試合続行不可能になったら、その時点で終了だぞ。

 二人とも、いいか?」

 相手を見ながら黙ってうなずく。

「では、はじめ!!」


 将は正眼にかまえ、シルフィは片手に盾を持ちながら相手の様子を伺う。

 先に動いたのはシルフィだった。

 木剣といえど、十分に重量があるのだが、上下左右変幻自在に攻撃を加える。

 将は、その剣先だけでなく、シルフィの目の動きや体重移動などから剣で攻撃を防御する。

「ふん、なかなか良い動きだな。」

 シルフィは、短く言うとさらに攻撃の速度を上げて将に迫る。

(女の子なのになんて重い剣戟なんだ。でも、カゼールに比べるとなんというか剣筋が粗いのと攻撃と攻撃の間に目が大きく動くなど癖があるな。

 これなら何とかなるかな。)

 と考えながら、避けていると突然シルフィが盾に体重を乗せて激突して来た。

「しまった。」

 なんとか、後ろによろめいて転ぶのは避けたが、同時に距離をつめられて喉元に木剣が当てられる。

「そこまで!!。 おねぇちゃんが1本。」

 審判の声がひびく。


 シルフィは

「おねぇちゃんじゃなくて、シルフィだ。

 あと、ショウ、なんで攻撃してこない。

 これでは試合にならないぞ。」


「ああ、わかった。次は負けないよ。」

「ふん、だといいが。」

 会話しながら元の場所にもどる。


「よし、2本目、はじめ!!」


 今度は、将が先に攻める。

 実は盾を持った相手は初めてだった。

 そのため、盾で受けられて、即座に打ち返されると連続攻撃ができず、単発の攻撃になってしまった。

 一通りの打突が全て防がれると、大きく後ろに跳んで距離をとった。

(うーん、勝手が違うな。

 自分から攻めると逆に隙ができてまずいかも。

 よし、相手の攻撃を避けて反撃しよう。)

 即座に方針変更し、最初と同様に正眼に構え、足を大きく踏み鳴らし攻撃と見せかけて威嚇をすると、シルフィがすかさず打ち込んでくる。

 2回ほど剣で受けた後、シルフィの目の動きから次の剣筋を読み、受けずにかわすと少しだけ体が流れて隙ができた。

 そこをすかさず面に打ち込むが、何とか寸止めにする。


「そこまで!! おにいちゃんが1本」

 審判の声が響く。


「ふん、ちょこまかと逃げるのは上手いようだな。

 次はこうはいかないぞ。」

 シルフィが本気の目でにらんでくる。

(なんか、凄んでいる目が綺麗だなぁ)

 と将は緊張感のない事を考えながら、再度開始位置にもどった。


「それでは、最後の3本目。 はじめ!!」


 開始と同時にシルフィの内包する魔力が顕在化するのを感じた。

 これは、修行の魔力コントロールに関する派生で習った魔力による身体強化だと直感する。

 身体強化は、魔法を使えない人、特に戦士がその能力を最大限にするために自然に身につける事もある技術だった。


 将もあわてて強化を試みるが一瞬遅く、今までとはくらべものにならない衝撃が剣を通じて伝わる。

 数mほど吹き飛ばされるが、受身を取り急いで強化を行い立ち上がった。

「さすが魔法使いだけあって、身体強化はできるか。本気でいくぞ。」

 上下左右から縦横無尽に打撃が繰り出される。

 将も受け流し、避けながら隙を伺う。

 シルフィは一瞬の隙をみつけ、将の足を払うと馬乗りになり顔に剣を突きつける。


「そこまで!!。おねぇちゃんの勝ちだな。」


「だから、シルフィだと名乗っただろう。

 ショウもなかなか剣が使える事はわかったが、私のほうが上だとわかったな。」

「ああ、わかった。

 重いからどいてくれないか?」


 一瞬でシルフィの顔が真っ赤に変わり、その直後顔面にエルボーが突き刺さる。

「重くない!!」

 そういい捨てると、将から離れていった。


「ひ、ひどすぎる。

 試合が終わっていたのに。」

「今のは試合とは関係ない。」


 エミリアが近づき、ヒールを施す。

 そして一言。

「ショウさん。

 もし、仲間になる気がおありでしたら女性への言葉はお気をつけください。」

 にっこりと笑っているのだが、目が笑っていなかった。


「はい、気をつけます。」

「じゃあ、次は魔法の試技をお願いしますね。」

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