19. 第2章その10 ランクアップと初めての仲間
その日からしばらくゴブリン狩りを中心に活動を行った。
色々な魔法を試しながら複数に対処するために試行錯誤をするためだ。
地魔法の”グラウンドバインド”は土により拘束ができるので、ゴブリン程度の力であれば動けなくなり、近接攻撃と合わせれば効率よく複数に対処できた。
風魔法の”サンダーストライク”は指先から雷を対象に落とす事ができる。
片手で5体まで対応でき、射出スピードも他の魔法に比べ速く、かつ麻痺を起こすことから1撃で倒せなくても次の攻撃までの時間を稼ぐことができるため、この魔法も有効である事がわかった。
ゴブリンハンターと名乗ってもいいかな、と思えるほど2週間ほどゴブリンばかりと戦っていた。
今日もゴブリンを4体倒して報告を行うと、ルカイヤさんが。
「あ、ショウさん。おめでとうございます、Dランクへの昇格用件を満たしました。」
「ありがとうございます。」
「良かったですね。」
「はい。」
「それと、以前から依頼を受けていたパーティメンバー照会の件ですが
今回、Dランクに昇格しましたのでマッチングする募集があります。」
「本当ですか?」
良いことは続くものである。
「はい。(まあ、ちょっとお勧めしたくないんですが)」
後半は小さな声で呟いたので将には聞こえなかった。
「えっ?なんですか?」
「いえ、その募集は、Dランク以上の魔法が使えるメンバーでしたので。」
「それで昇格したのでマッチングしたんですね。」
「そうです、相手は戦士系と神官系のコンビで活動しているCランク冒険者になります。
さらにランクアップするために遠距離攻撃にすぐれる魔法使いをメンバーに加えたいというのが先方の希望でした。
もともと魔法を使える冒険者自体の数は多くありませんので、先方もしばらく時間がかかっても良いと考えていたようですが、良かったです。
どうしますか?」
「早速お会いして話をしたいのですが、可能でしょうか?」
「わかりました。それでは明朝までに、先方に話をしておきますので明日の午後2時頃にギルドへ来て頂けますか?」
「はい」
今日は、ランクも上がったし仲間を作る目標も達成できそうだったので、いつもより若干多めにビールを飲んで休んだ。
次の日は、依頼を受けずに午後ギルドに向かった。
ギルドに着き、扉を開けると午後という事もあり、受注、報告とも行っている冒険者は居なかったため、閑散としていたが、そこに2人の冒険者の姿を見ることができた。
(あっ、以前朝の時間に見かけた女性の冒険者達じゃないか。まさか、募集してたのって)
「ショウさん、ちょうど良かった。こちらにいらっしゃるのが魔法使いのメンバーを募集していた冒険者の方たちです。」
ルカイヤさんから明るい声で呼びかけがあった。
「なんだ、こいつが魔法使いなのか?Dランク冒険者以上としていたが、ずいぶん若い様だが大丈夫なのか?」
と戦士風の冒険者のほうが本人を目の前に失礼な事をルカイヤさんに言う。
「大丈夫ですよ。確かにお若いというかお二方と同じ年齢ですし、つい先日Dランクに昇格されたばかりですが、討伐依頼を何度かこなされていますが、ショウさんが傷を負われているのは一度も見たことがありません。」
「ふん、見かけによらないということか。まあ、試してみればすぐわかる。」
すると少し背の低いほうの女性が
「シルフィ、だめよ、初めて会ったのに失礼な言い方して。ごめんね、ショウさん、ですよね。私はエミリアと言います。こちらはシルフェディアです。
私たちは二人で冒険者をしているのですが、さらに上のランクの依頼をこなす事を考えると遠距離攻撃のできるメンバーが欲しくてギルドにメンバー募集をかけていました。
正直なところ、女性であった方が私達として良かったのですが、男性でもあなたさえ、よろしければ問題ありません。
しばらく、私たちと一緒に依頼を受けませんか?」
優しそうな話しぶりで将に語りかけてきた。
すると横からルカイヤさんが。
「エミリアさん。説明ありがとうございます。
私のほうから仲介役として説明したかったことはエミリアさんが言ったとおりです。
パーティメンバーというのは相性がありますので、1,2件依頼を一緒に行い、
その後本当に一緒に冒険を続けるかを判断する。
というのが一般的です。
その様な形でよろしいでしょうか?」
「あ、はい。私は問題ないです。よろしくお願いします。」
将は、2人に頭を下げる。
この辺は、初対面に対する礼儀作法がサラリーマン時代から抜けない。
エミリアさんは、くすっと笑い。
「ずいぶん礼儀正しいんですね。
では、そちらの喫茶コーナーでお茶でも飲みながら自己紹介やメンバー間の連携。
どの様な依頼をこなすかなどをお話致しませんか?」
「はい、了解です。」
将も、にっこり笑ってうなずいた。




