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第1話 新人魔法少女 登録者100万人突破!


アカウント名 :新人魔法少女 ルミズム

 

[配信]妖怪 ミンナナクール VS 魔法少女ルミズム


視聴者数 20万人越え


配信画面には可愛い衣装を纏った魔法少女が悪の組織によって心を奪われ モンスター化してしまった市民の魂と対立し合っていた。


『頑張れー!』

『ルミズム 負けないでー!』

『今日も可愛い!』

『推し!』


コメント欄は彼女を応援するコメントで溢れかえっている。


「みんな、ありがとう!。皆の応援の力が私を強くしてくれる!」


プリズム・フロー・ビリーム


『ミ・ミンナナナクール……』


魔法少女の最後の一撃により、悪のモンスターは浄化され魂は持ち主の元へと戻っていく。


『ありがとう!ルミズム』

『やっぱり魔法少女っていいなぁ』

『やっぱりSNSが使えるようになったのいいね』

『それな!』

『魔法少女の応援ができるし』

『スパチャも送れるし』

『何より可愛い!』

『ルミズム!』

『チャンネル登録者100万人おめでとう!』


魔法少女は配信画面に拳を掲げ ピースをしてみせる。


「みんな、応援ありがとう!。みんなのおかげで念願の100万人が達成できました!。」


近年 世界中で魔法少女ブームが起こっている。

昔の魔法少女といえば、正体を隠して世界を救う。そして本来の姿は決してバレてはならない。


そんな掟があった。


しかし、時代が進むにつれ魔法少女不足も悪化

この事をきっかけに魔法少女協会は魔法少女をより知ってもらうとSNSをメインに活動を行った結果 配信の影響からテレビや雑誌に魔法少女は引っ張りだこに!


女子小学生が選ぶなりたい職業

3位に魔法少女が選ばれるほど

魔法少女は人気 コンテンツへと変わっていた。


そんな煌びやかな魔法少女界隈の裏で

ひっそりと居酒屋に行こうとしているアラサー魔法少女がいた。


「つむぎー、早く変身とくんだっぱ。」


「待って!ヒールで足つった!。」


「居酒屋のラストオーダー30分前だっぱ。」


「急ぐ!めっちゃ急ぐ!。」


「これだから三十路はだっぱ。」


ガラガラ


「大将!生ビール2つ!」


「はいよ!。ってあんちゃんか。魔法少女の格好、久しぶり見たな。」


「はぁ…はぁ…急いできたから 変身がとけきってないのよ。」


「いつもお疲れさん。ほい、生ビール!。」


ドン!


「「きたーーーーーーーー」っぱ」


ゴクゴクゴクゴク


「うめぇーーーーーーー」


私の名前は天音つむぎ。

つい最近、めでたく(?)誕生日を迎えた三十路だ。職業は魔法少女。……まあ、副業だけどね。


そして、私の隣で器用にジョッキを傾けているのが、相棒の妖精・フィル。


「あんた、さっきから『だっぱ、だっぱ』うるさいんだけど。いつからそんなキャラ作ったのよ」


「ぷはぁーーーー!……だってさ、つむぎ。この子たちを見てみなよ」


フィルが手元のスマホで、

さっきの「チャンネル登録者100万人達成」の配信画面を見せてくる。


「ちょっとキャラ立ちして、可愛くなってみようかと思ってさ」


「需要ない」


「だね。やめるわ」


「「ビールうめぇーーーーー!!」」


カン、とジョッキを力強く合わせる。


表向きはキラキラして華やかな魔法少女業界だけど、実際のところ、現役魔法少女の定着率はかなり低い。


理由は明確。


魔法少女は、そんなに甘い仕事じゃない。

その一言に尽きる。


ぶっちゃけ、完全な肉体労働だ。

気力も体力も信じられないくらい削られるし、普通に怪我もする。


最悪の場合、身体の一部を失うケースだってある。死と隣り合わせの現場なのだ。


だからこそ、


「有名になりたい」


「チヤホヤされたい」


という生半可な気持ちだけでは絶対に続かない。


結果、現場は常に深刻な人手不足。だからこそ、私みたいに「かつて全盛期を駆け抜けた、元・ガチ勢の引退魔法少女」のところに、魔法少女協会から「頼むから現場に戻ってくれ」と頭を下げて声がかかるわけだ。


「おっ、お姉ちゃん、魔法少女なんか?」


背後から、出来上がったサラリーマン風の酔っ払いおじさんに声をかけられた。

赤ら顔で、頭にネクタイを巻きそうな勢いだ。


つむぎの半分溶けかかったフリフリの衣装を見て、目を輝かせている。


「いい歳して……いや、失礼。いやぁ、生で魔法少女見るの初めてやわ! なぁなぁ、あのテレビとかでよく見る『決めポーズ』やってや! お願い!」


(……あぁん? 今『いい歳して』って言おうとしたな? 完全に言おうとしたなこの泥酔親父?)


つむぎの額にピキッと青筋が浮かぶ。


が、すでにビールの酔いが回っているせいか、怒りとアルコールが変な化学反応を起こして口元がニヤけていた。


「え〜? やだなぁおじさん、私これでも非公式っていうか、一応プライベートですよぉ〜?」


「いいじゃんいいじゃん! 減るもんじゃないし! 頼むわ!」


「も〜、そこまで言うなら、しょうがないなぁ〜! サービスですよ、サ・ー・ビ・ス♡」


つむぎはジョッキを置くと、狭い居酒屋の座席のわずかなスペースで、バッと立ち上がった。


フィルが「おい、やめろよ。酒が入ったあんたのポーズは──」と止めようとするが、三十路の暴走は誰にも止められない。


「愛と! 神話!キラキラ・シャイン……☆」全盛期のキレッキレな動きで、片足を上げてウインクを決める。


しかし、いかんせん中身は「三十路のすっぴん&お疲れモード」である。


さらに、先ほど足をつったヒールが仇となった。


「──痛てっ!! あ、足、さっきつったとこがッ、また、あだだだだ!!」


生まれたての小鹿のようにプルプル震えながら、別のポーズへ強引に移行する。


「……っ、ふ、復活の! デリシャス・アンチエイジング……!」


「何の呪文だよ。ただの切実な願望だろ」


フィルが冷やしトマトをかじりながら、真顔でツッコむ。


おじさんは「おお……なんか、痛々しいけど凄いな!」と、この時点ではまだ手拍子をして楽しんでいた。


だが、つむぎの脳裏に「いい歳して」というおじさんの言葉がフラッシュバックする。


つむぎは酔いと日頃のストレスが完全に決壊した。


「おじさん、魔法少女の真実、見せてあげるわ……。ラストォ! 必殺、残業代・全額・請求ォォォ!!」


つむぎは、両手を天に掲げる謎のポーズを絶叫しながら決めた。顔つきが完全に「徹夜明けで労働基準監督署に殴り込みにいく狂戦士バーサーカー」のそれである。


「ヒィッ……!?」


おじさんの顔から一気に血の気が引いた。


魔法少女のキラキラした夢を見ようとしただけなのに、目の前に現れたのは、生々しい社会の闇を体現したゴリラだった。


おじさんは借りてきた猫のように静かになり、ガタガタ震えながら自分の席へとフェードアウトしていった。


「ぷはぁー! 決まった! 大将、レモンサワー追加で!」ドカッと席に戻り、何事もなかったかのようにメニューを開くつむぎ。


となりでフィルが、深く、深〜いため息をついた。


「……これだから、三十路の酒飲みはタチが悪いんだよ。親父の酔いが完全に醒めてるじゃないか」


「うるさいわねー。いいのよ、これがおじさんへのファンサービス。リアリティってやつよ」


「ただの営業妨害だよ。ほら、大将がレモンサワー持ってきたよ」


ドン、と冷えたジョッキが目の前に置かれる。


つむぎはそれを引っ掴むと、フィルの冷やしトマトに向かって無理やりジョッキをコツンとぶつけた。


「はい乾杯! 明日も仕事だし、飲んで忘れましょ!」


「つむぎ、魔法少女の前にまず自分の肝臓を救いなよ……」


フィルが呆れ顔でハイボールをすする横で、つむぎはレモンサワーをぐいっと煽る。


「ぷはぁーーーー、うめぇーーーーー!!」


居酒屋の騒がしい喧騒の中に、二人の声が心地よく(?)溶けていった。

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