アップデートからの職業選択
僕が朝、教室に着き自分の机で準備をしていると男子が話しかけてくる。
「よう、険人」
彼の名は荻野真二、中学校からの友達だ。
「おはよう真二」
「今日で『WMMP』のアップデートが終わるな。早く帰ってプレイしたい」
「ああ、確かにそうだが授業は受けろよ」
「わかってるよ。でもやっとパーティープレイやフレンド機能が解放されるんだぞ。今度険人も一緒に組もうぜ。春香とも一緒にプレイする約束はしてるんだ。そして今度こそあの土猪を倒そうぜ」
春香は真二の恋人でフルネームは一条春香、隣のクラスだ。真二とは『WMMP』について情報交換(道具の作り方など)しているがいくつか話していないこともある。まずヒミコたちの事。これは掲示板とかで調べてみたんだがいくつかの従魔の情報はあったが精霊については無かった。次に土猪ことガイア・レイア・バロゥフと大熊ことハウル・フォレスト・ベアーを倒したことについて。
ヒミコ達に関しては入手条件が分からなかったし、ガイア・レイア・バロゥフ達に関してはヒミコ達の事を抜きにして説明が難しかった。だけど真二には先に話してもいいかな。
「真二、実は・・・」
真二に詳しく話すと真二は驚いていたが
「確かにその理由ならしょうがないか。もっと詳しく聞きたいけど今度の休憩時間にな」
キンコーンカンコーン
予鈴が鳴ったので真二は自分の席に戻っていく。さあ授業頑張ろう。
そして昼休み、隣のクラスから来た春香と共に真二と弁当を食べながらさっきの話の続きをする。真二とは授業の合間の休憩時間中にも話していたがまとまった時間が欲しかったみたいで先ほどの話はしなかった。僕が岩猪との戦いを説明すると
「うーん、真似することは難しいな。だって⦅調合⦆⦅鍛冶⦆とかの生産スキル取ってないからポーションなんて作れないし」
「私も⦅料理⦆スキルは取ってるけどそれ以外のスキルは取ってないわ」
真二のスキル構成はバリバリの近接特化。春香は魔法攻撃型と聞いている。じゃあ僕は何かというとオールラウンダー悪く言えば器用貧乏型だ。
「だからいくつかポーション買わせてくれ。お金は払うから」
「ええ?普通に店で買えばいいんじゃないか?」
「いやアイテム作成の掲示板も見てるんだが険人ほどの効果は高くなかった。おそらく険人独特の作り方があるんだ」
それは知らなかった。普通に調合してるんだがな。とりあえず今日はお互いアップデート内容を楽しんで明日会おうということになった。
自宅に帰って宿題や家の手伝い、夕食その他もろもろを済ませた午後8時『WMMP』にログインした。
僕はベッドの上で目覚めると隣にはヒミコ、シズク、ヒビキが眠っていた。ベッドに関しては4人で寝ても大丈夫なように大きなベッドを作った。僕が起き上がるとヒミコたちも目を覚まし
「お兄ちゃん」
「兄さん」
「マスター」
僕に抱き着いてくる。3人の頭を撫でつつアップデートの内容を確認する。この島は『アイリ・アイランド:AI』と呼び、『AI』から新エリア:惑星『ファースト』に行くにはアイテム〈星空切符〉を使えばいいらしい。〈星空切符〉は手の平に収まる青色の透明な球体の中に切符が入っていた。このアイテムは『AI』や惑星の安全地帯のみ使うことができるらしい。また職業を選ぶまで誰もつれてくることはできず、従魔たちは『AI』で待機するらしい。
3人に伝え、早速〈星空切符〉を使ってみると地面に魔法陣が現れ、体全体が光に包まれる。
光が治まり目を開けると白い石柱や石の壁でできた神殿の広場のような場所に移動していた。
『アップデートによるチュートリアルを始めます。まず冒険者ギルドに向かって職業を決めてください』
突然アナウンスが聞こえ、視界に一つのアイコンが出た。そのアイコンに向かうため神殿から出る。まず最初に目に入るのは大きな噴水、その近くにはいくつかのベンチが設置されている。この場所は四方へ続く道に繋り、レンガ造りの建物や出店などが並んでおり、多くのプレイヤーが歩いていた。プレイヤーもまだ同じような装備を着ている者も多いが一部のプレイヤーは特徴的な装備を着ている者もいる。更に従魔を連れている者もたくさんいた。僕の格好は目立ちたくないためウルフの革を用いたレザー装備一式に変えてきた。
とりあえずチュートリアルに従って冒険者ギルドに向かってみる。冒険者ギルドは赤レンガでできた建物で、中に入ってみるとたくさんのプレイヤーがおり、掲示板を見たり受付で何かの手続きをしている。僕はアイコンに従ってある受付へ向かう。僕が近付くと受付に座っている女性が話しかけてきた。
「こちら職業受付です。何か御用でしょうか?」
「職業を選びたいんですけど?」
「初めてですか?」
「はい」
「ならばこちらへ」
受付の女性が立ち上がり奥の部屋へと案内されると大きな扉の前についた。部屋の中に入るとその中央に水晶玉が置いてあった。
「この部屋ではあなたにあった職業を選ぶことができます。中央の水晶玉に触れてください」
女性の指示に従い僕が水晶に触れると水晶が白く輝き白い空間に飛ばされる。すると目の前にたくさんの職業のリストが現れた。この中からメインに1、サブに2つ、控えに2つの計5つを選ぶ。
・戦士
・拳闘師
・魔法使い
・僧侶
・木工職人
・鍛冶職人
・裁縫職人
・調合師
・釣り人
・テイマー
etc
ヒミコ達の事を考えるとテイマー系は確実にいるだろう。それにミルキーフライや植物の事を考えると農業系も欲しい。薬や道具も作ったから生産系もいるな。いろいろ悩みながら僕が選んだのは下の5つ
〖開拓者〗
まだ誰も知らない場所や景色、謎、物を見るためにあらゆる場所に向かう特殊な職業
専用スキル ⦅開拓者⦆
〖素材採集家〗
世界中にあるあらゆる素材を見つけ、集めるために活動する特殊な職業
専用スキル ⦅素材採集家⦆
〖異質なテイマー〗
滅多になつかない種族を従魔とするテイマー職の亜種
専用スキル ⦅異質なテイマー⦆
〖???の錬金術師〗
薬草、金属、魔物の素材などのあらゆるアイテムを使い、未知のアイテムを作り出す生産職。その中でも資格ある物にはさらなる可能性が
専用スキル ⦅???の錬金術⦆
〖魔物牧場の主〗
魔物と共存し、様々な恩恵を得る生産職
専用スキル ⦅魔物牧場の主⦆
普通なら〖戦士〗〖魔法使い〗などのわかり易い職種を選ぶと思うけど、せっかくのゲームだからめずらしい職種を選んだ。すべての職業には装備していると使える専用スキルがある。
この専用スキルは職業レベルと同じく戦闘やクエスト報酬、生産をすることでレベルを上げることができる。さて僕が選んだ職に就いて詳しく説明していこう。
まず〖開拓者〗。説明文を読んだ感じ他のゲームの冒険家とか探検家を一つにした感じ。専用スキルの⦅開拓者⦆は開拓に便利なスキルを覚えるらしい。Lv1のスキルは⦅発見⦆というスキルで何かが見つかりやすくなるらしい・・・何かって何?
次に〖???の錬金術師〗。錬金術師は大体のゲームにある薬品や道具を作る生産職だよね。専用スキルは⦅???の錬金術⦆。Lv1のスキルは⦅成分抽出⦆で素材に含まれている『毒』『マヒ』などの成分を取り出すことができるそうだ。だけど???って何?
次に〖素材収集家〗。説明文を読む感じ素材集めのプロって感じ。専用スキルは⦅素材採集家⦆。Lv1のスキルは⦅万能採取⦆、効果は採取時状態異常にならない・・・え?採取する時状態異常になるの?
次に〖異質なテイマー〗。これってヒミコたちを従魔にしたからだよね。他のテイマー職として〖テイマー〗もあったけどこっちを選んだ。専用スキルは⦅異質なテイマー⦆。Lv1スキルは⦅フラグ通知⦆で従魔関連で何かのフラグを達成したら通知が来る。
最後に〖魔物牧場の主〗。これはミルキーフライ達と友達になったからかな。専用スキルは⦅魔物牧場の主⦆。Lv1は⦅魔物との友好度上昇⦆で生産可能な魔物との友好関係が上昇しやすいそうだ。
とりあえずメインに〖開拓者〗、サブに〖素材収集家〗、〖???の錬金術師〗を装備して冒険者ギルドの登録をしよう。部屋から出て先ほどの受付まで戻ると先ほどの受付の女性が話しかけてくる。
「職業は決まりましたか?」
「はい」
「それはよかった。あの部屋についてはギルドの受付に言っていただければいつでも行くことができますからおっしゃってください。続いて冒険者ギルドの登録もしますか?」
「はい」
「わかりました。では説明させていただきます。冒険者ギルドに登録すると冒険者ギルドでクエストを受けたり、身分証明の代わりになります。登録の仕方はこちらの板に手を置いてもらうと名前、職業などの情報が登録されます。情報については冒険者ギルド内でのみ扱い、その情報からあなたにあったクエストも進めることができます」
女性は一枚の金属でできた板を差し出してきた。僕は登録するためにその板に手を置くと女性が何かを記録していく。
「名前はケン様、職業は・・・・え?」
カラン
女性は僕の職業欄を見た後、声をあげ驚きペンを落とした。そして手元の結果と僕を見比べるとある質問をしてくる。
「申し訳ありません。ちょっと一緒に来てくれませんか?」
すると先ほどとは違う通路を通り奥の部屋に向かって進んでいく。
何かのイベント?




