⭐︎臨死体験
「えぇと、次のお悩みはこちらです。」
東京都にお住まいのおもちさんからのお便りです〜、ありがとうございます〜。
はじめまして、こんばんは。いつもラジオ楽しく聴かせていただいております。おもちと申します。今回はヶ鸜亜さんに解決していただきたい悩み事がありましてこうして筆を取らせていただいております。
「お、けーちゃん出番やないの」
「いいまかあくぉのざらざりざるぬ」
「まぁそういうんたんなや!お前そんなこと言うてたらいつか女性差別だゆうて炎上すんでぇ?とりあえず続き読んでいきましょか」
最近、毎晩夢の中で臨死体験をするということが続いているのです。
夢の中で私は、毎回幽体離脱をするのです。
上から自分を見下ろすことで、私は夢を見ていることを自覚するのですが、それで起きる様なこともございません。そのまま私は家から離れ、どこかへと飛んでいき、不思議な空間、おそらく、死後の世界へと飛んでいってしまうのです。
死後の世界、と私が考えているのはなぜかというと、そこがあまりに美麗な場所で、しかも、死んだ人に会えるからです。逆に言えば、まだ死んでいない私の夫や息子、友人や同僚などには全く出会いません。
とにかく私は、「死後の世界」と思しきものの中にいて、いつもうわつく気持ちといいますか、そういう説明のしようがないワクワク感の様なものを感じ続けているのです。その正体がなんなのかは、私には分かりません。分からない、というより、覚えていないのだと思います。
それはどうしようもなく心地の良いものです。静かな丘の上で綺麗な空気を吸う様な、晴々とした気分になるのです。夢の中では、死んだ父も母もいます。私が小学生の頃に死んでしまった飼い猫もいますし、欲しかったものもなんでも手に入るのです。
ですが最近、気づいてしまったことがありまして。
父も母も飼い猫も、自分が死んだということに、少しも嫌悪感を抱いていない様に感じるのです。というより、むしろ、「良いもの」として受け入れている様にすら感じるのです。
例えば、夢の中で父に、近所に新しくできたレストランについて話していたことがあったのですが、その途中で、私は、「お父さんが生きていたら連れて行ってあげたかったんだけどね」というと、父は急に激昂したのです。
「なぜそんなことを言うんだ!お前は昔からずっとそうだったな!!」と。
母もそうです。「意固地にならずに早くこっちにきたら良かったわぁ」と、私が学生時代、転塾した直後から成績が伸びはじめた時と同じ声色で言うのです。
夢の中での出来事なのですから、大した意味はないのかもしれません。ですが、生前優しかった両親のそうした奇怪な一面を見てしまうと、悲しい気持ちになってしまいます。
加えて言えば、もっと恐ろしいことがあるのです。
現実の、この世界で、「死後の世界」で感じる様なワクワク感を、味わうことができる瞬間が存在するのです。
それは、刃物を握った瞬間です。
料理目的の包丁でも、刺繍目的でのまち針でも、とにかく、そうしたワクワク感を味わえるのです。
最近、自分が怖くて仕方がありません。
ヶ鸜亜さん、添木さん。どうかこの、「ワクワク感」を止めていただけないでしょうか?
「…とのお便りでした〜!!!いや〜、どう思う?けーちゃん」
「うややちゃにのまくえど」
「やかましいわ!俺だって好きで関西弁キャラ演じてるわけちゃうっちゅうに!」
「このお話には三種類の人物が登場すると思います。逃げたデブ、諦めた間抜け、受け入れた弱者」
「ええことゆうなけーちゃん! けどまぁ、おもちさんは刃物を握るとワクワクするのを止めたいってお悩みなんやから、それとはちょっと違うんやないか?」
「にみみのざいけるはごはさんでかばまとる」
「あぁ、そんなんあるらしいな。妊婦さんを見ると『腹蹴ったらどないなってまうんやろ…』って考えちゃう様なやつ」
「いめぬ」
「そうそう。…あぁ、これやわ。加害恐怖?っていうやつ。インパルスともいうらしいな」
「やうろわばざねでかす?」
「んーとな、さっきの妊婦さんの例もそうやし、上司に足払いかます想像とか、包丁を持ってたら喉に突き立てたくなるとか、脳が絶対にあかんと判断した状況が頭に浮かぶやつ。要はこんなことは絶対しちゃいけないよ〜っていう脳の忠告や」
「経験があります」
「お前は躊躇なく足払いかます側やろ。まぁ、もしそのインパルスとかに悩まされてるにしても、それは脳が絶対にやっちゃあかんことやと認識してるから出るわけで、これ聞いてる他のリスナーさんでそんな経験あるって人も、そこまで心配しなくてもええんとちゃうかな」
「にるとやくもぽいわのじどうざんか」
「あぁ、刃物でワクワクするってことやもんなぁ。ちょっとこれとは違うか。うーん…」
「ゆえわばいじんぞう」
「せやな!おもちさん、あなたの悩み事、すうーっぱり…ポン!はい、なくなりましたぁ」
「きいおうのさんとるか」
「どうやろうな?インパルスが起きた結果妊婦さんの腹蹴るやつとかおったら怖いけど、そういうクズはインパルス関係なくやる気もするなぁ」
「にまじ」
「あぁ、闇バイトとかで空き巣しとる時に住人に見つかって、咄嗟に手が出ちゃったみたいなこともあるらしいな。う〜ん…仮に闇バイターがインパルスの通りにやっちゃったら、そういう場合はインパルスはむしろ逆効果なんかな?」
「のういあわえれのう」
「…へぇ、チャッピーに聞いたらさ、インパルスが逆効果になることはないいうとるで」
「うぇゔぁんにおきるやたきぉ」
「悪い行動をしようおもてすることはまぁできるやろ。インパルスみたいな防衛反応も脳は出さへんやろしな」
「じゅいこぽらうとけ」
「醤油ぺろぺろとかはありゃまた別やろ、多分本人は罪の意識とかないねん。どや、俺ら悪やろ〜?って感じなんとちゃうか?知らんけど」
「…彼らはそんなにも愚かなのでしたか?」
「人間の愚か者っていうのは意外とおるもんやで、けーちゃん」
「がりこのぶしますつ」
「あぁ!俺を潰そうとするな!」




