20 深雪
精霊祭の準備を進めていた俺達の前にまたH∧Lがやってきた。最奥で待ってると言ってたのだがあれからそんなに経ってないはずなのに随分と気が短いものである。ラスボスならラスボスらしく最奥でどっしりと構えてて欲しいものだ。
「おやおやなんで2人しか死んでないのかな?確実に術は完成していたはずなんだけど?」
俺は前回の反省を活かし即座にスペシャルモードに切り替えた。H∧Lから前回呪いを受けた以外の娘達に呪いの糸が伸びてるのが見えた。
「呪いをかけても無駄だ。その力は既に対策済みだ。」
呪いの糸を妖術で作った不可視の光線で焼ききる。
「つまりこちらの切り札に気づいてる訳だ、どうせばれてるなら隠す必要ないよね?」
H∧Lの体内に向けて無数の怨念がまとわりつきH∧Lから発せられる力が爆発的に上がるのに気づくこのままでは勝てない。
とはいえとりあえず無銘の剣と刀をアイテムボックスから取り出し繰り出される無数の攻撃ラインに合わせてジャストヒットさせてくが俺の一撃はH∧Lにダメージを負わせるどころか身体のにまとわりつく膜を薄く傷つけることしかかなわない。しかも時間経過とともにその膜は少しずつ厚さが加わっていく。
俺は攻撃力を上げる為に魔気妖仙を練り上げる。
その時の俺は気づいてなかった。
攻撃を合わせるごとに俺が少しずつ傷つき同時に俺が与える攻撃の音はだんだんと鈍くなっている状況が周りからどんな風に見えてるかを
H∧Lからの攻撃は素早いもののガラム最終段階とは違い急所さえ避ければ当たってもどうってことはなさそうだ。
俺は武器に霊力と精霊力を纏わせて練り上げが終わるまでの時間を稼ぎ続ける。
霊力と精霊力を武器に纏わせたことで明らかに膜に与えるダメージが増え、魔気妖仙の練り上げも終わった。
本来ならこのまま勝負をしかけても良かったのだが俺は更に圧倒的に勝てるように更に霊力と精霊力を練り上げ続けた。
早さこそあれどさばき続けるのはそれほど問題ではなくいよいよ反撃の刻がくるというタイミングで娘達が乱入してきたのだ。
後少しだったのだが俺は諦めて攻撃に参加した。
俺の一撃は膜を吹き飛ばしH∧Lに初めてダメージを与えることに成功し、娘達の一撃もそれなりにダメージを与えることに成功したのだが、至近距離からの反撃と娘達がまだスペシャルモードでの戦闘に慣れてないせいでさばききれない攻撃があり、俺はその攻撃のパリイに飛斬での対応に割かれることになる。
僅かにタメが必要な為に徐々に手数が追い付かなくなる。
「邪魔だ。下がれ。」
強い口調で下がらせたのだが少しだけ遅かった。
飛斬での対応に割かれた為に俺の急所に伸びていた攻撃の対応に遅れたのだ。
俺は死を覚悟した瞬間
ドンッ
ゆっくりと流れる時間の中で深雪が俺を押し出しその一撃が深雪のハラワタを引き裂いたのが見えた。
「おやおやとんだ邪魔が入ったものだ。白けたから帰らせてもらうよ。」
高笑いしながら虚空に消えるH∧Lを無視して俺はLポーションを深雪にぶちまけた。
深雪にポーションを使うということは古傷が消えることを意味する。
それは素顔の深雪と向き合う時がきたのを意味する。
とっさに両手で顔を隠しながら泣きじゃくる深雪を抱き締めて落ち着くのを待つ。
抱き締めた身体から震えが伝わってくる。俺も怖いが、深雪はもっと怖いのだ。お互いの肩にのせた顔が見えないまま強く強く抱きしめた。
深雪の血の匂いがより強くなるが不快感はなかった。深雪のぬくもりから震えがなくなるまでそのまま待ち続けた。
どんな顔だって受け入れよう。
だって俺が惚れた深雪は俺をさりげなく気遣ってくれ続けた深雪の優しさなんだから。
震えが止まったのでそっと腕を回してた解いて少しだけ身体を離すと
不細工な泣き顔をする深雪はとても綺麗だった。
そしてそのままキスをした。
正直H∧Lの言ってた切り札なんてものは全く心当たりがなかったのだが解呪できる時点で本来ならその切り札とやらに気づけるものなのだろう。
まあぶっちゃけ切り札とやらが分からなくてもただ強くなって固くなるだけならそれ以上に強化してしまえば良いだけなので問題などない。
それにあの一件以降深雪は今までポーションが必要になるような激しい訓練を長時間できなかった問題がなくなり、急速に成長をはじめだした。古傷を治さないようにポーションを使わずに自然回復に頼る回復では訓練には限界があったのだ。
娘達も以前にも増してスペシャルモードでの訓練に熱心になった。
ラスボスがどんなにちょっかいをかけてこようが俺達のすることは変わらない。
ラスボスはきっと俺のような脇役ではなく本物のヒーローが倒してくれるだろう。
だってこのゲームは女性の為に作られたゲームなのだから。
きっとこのラスボスを倒すのは女性プレイヤーの誰かのはずだ。
だからそれまでは今できることを1つずつやっていこう。
きたるべき決戦の時がくるまで
作者一言
最も書きたかったシーン書けたので打ちきりにしても良いのですが伏線残り過ぎてるので止まるまで書きます。
↓軽いネタバレ有り。
H∧Lさんは決して短気な訳じゃありません。実はかなりの時間待っていたのです。ただし認識に齟齬があることに気づいてないだけです。




