1話 プロローグ
―ドラゴン―
トカゲに似た、あるいは蛇に似た強くて恐ろしい伝説の生物。
巨大な体には鋭い爪や牙、とがった角、太い尾を持ち、多くは翼を備えて大空を飛ぶことができる。体表は非常に硬い鱗に被われており、並大抵の剣では傷をつけることすらままならない。そのうえ寿命は長く、千年を超えるものも存在する。知能も非常に高く、中には人間の言葉を解するものまでいる。また体には強い魔力を秘めており、体内で生成された炎や冷気などを吐いたり、放つことができる。高位のものになれば、自らの意思で魔力を操り、魔法を放つことができる。その力は強大で、過去には世界を支配する程の力を持ったドラゴンが現れたこともある。そのため、その姿や咆哮は、見る者、聞く者の恐怖の象徴とされていた。
しかし、その強大な力に対し、果敢に挑み、ドラゴンを退治するものが現れた。彼の者は、その勇気と実力を称え『ドラゴンスレイヤー』と呼ばれるようになり、英雄として称えられるようになった。そこから弱者であった人間たちは希望を見出し、力を付けるようになった。力を付けた人間にはドラゴンに挑み、退治する者が増えるようになり、ドラゴンも数を減らしていった。そして時代が進むとともに力を付けた人間たちは自分たちの領土を広げ、世界にその数を拡大していった。一方でドラゴンたちは人間たちの前に姿を見せなくなった。そのことに安堵する者がいれば、不気味に思いに不安を抱えるものもいた。
そして人間の歴史からドラゴンが消えてから千年近い月日が流れたある日、二匹のドラゴンの旅が始まった。
「なんで爺やもついてくるのよ。」
青い空の広がる真昼の平原、街道に黒い物体が動いていた。頭に小柄な体には合わない黒く大きいとんがり帽子をかぶり、体は黒を基調とした服とスカートを身につけ、さらにその上にはこれまた黒いローブを羽織っていた。その黒い服装から伸びる白い四肢と長くて白い髪が際立っており、不気味な雰囲気を醸し出していた。その上、首や左手首にはジャラジャラと宝石の付いたアクセサリーを身につけており、人を寄せ付けにくい格好をしたひとりの少女だった。
『ですから、姫様お一人だけで行かれるのは大変危険であるため、お護りする為に爺はここにいるのですと、何度おっしゃればわかるのですか!」
「だからってこんな古びた杖に化けなくてもいいじゃない。どうせ化けるなら、わたしにぴったりなもっと可愛らしいのが良かったわ。」
そう言いながら腰にある杖を手に取り、杖に向かって話しかける。竜の頭をかたどった古びた杖は、正直彼女には似合わなかった。
『何をおっしゃいますか!?この姿は姫様のご先祖様が世界を支配された時に、我先祖はこの姿でお供していたのですぞ!!それを侮辱するとは如何に姫様であっても許しませんぞ!!』
彼女の持っている杖から、老齢の男性の荒げた声が聞こえてくる。
『それを言うなら姫様こそ何ですかその格好は!!皇族の身でありながらそのような格好するなど。それにいくら姫様でもお歳をお考えください。もう百を超えているのですぞ。人間でいえばババアと同じでぶっフォッ!!』
ズドーンッ!!
強い衝撃音とともに、少女を中心に大きなぼみが地面に出来ていた。原因は少女が持っていた杖を思いっきり地面叩きつけたのである。
「誰がババアよ!!それにこれは正式な魔法少女の格好なの。馬鹿にすると、いくら爺やでも許さないわよ。」
そう言いながら地面にめり込んだ杖をスポッと抜き取る。強く叩きつけられたはずの杖にはヒビはおろか傷一つ付いていなかった。
「まったく、爺やは魔法少女の偉大さをまったく分かっていないんだから。」
『ごほっ、ごほっ…、何が魔法少女ですか、このおてんば娘が。』
「何か言った?」
『…。』
「まあいいわ。それで、これから私たちはどこに向かえばいいの?」
少女が手に持っている杖に尋ねると、杖の方から深いため息のような声が聞こえてきた。
『まさかここまでノー天気だったとは…、むしろ今までどこに向かって歩いていたのですか。』
「うーん…、たぶんあっち。」
そう言って適当に指差す彼女の姿を見て、今日一番深く重たいため息が漏れ出たのであった。
読んでいただきありがとうございます。
書き始めたばかりなので、至らない点などあるかもしれませんが、最後までお付き合いいただけると幸いです。今後週1であげる予定でいますので、よろしくお願いいたします。




