暗殺者達
複数の忍び装束の者たちが木の陰に隠れて二人目の行動を見ていた。その行動の成否によって三人目が武力行使になるか暗殺の続行か判断するためだ。
しかし、我らは恐るべきものを目にした。
それは仲間が馬の上で寝そべる男に攻撃を仕掛けた瞬間の出来事だった。
相手はどう考えても気を失ってぐったりとしていた。
本来ならば暗殺が失敗するはずなどなかった。
気を失っている人間を殺し損ねるなど暗殺を生業とする彼らが犯すはずがないのだ。
何せ彼らの本来の役割は、強大な力を持つ者を背後あるいは一瞬の虚をついて瞬殺することなのだから・・・
しかし、彼らの予想に反して事態は起こった。
なんと、馬上の男を殺すことはおろか返り討ちにあったのだ。
おまけに、敵に襲撃がばれてしまった。敵の中の一人がこちらの襲撃を全員に広めてしまったため、全員が一気に退却へと動き出した。
本来なら、それを見て即座に退路を塞ぎ襲い掛かるところだが、それをすることができない。
(見られている・・・)
潜伏している者達、全員がそう感じた。
姿をさらしてはいない。まだ木の上で気配を消して待機しているにもかかわらず、そう感じるのはなぜか。
見てみれば、先ほど地面に倒れた男の眼が開いているではないか。
その瞳はどこを見ているのか悟らせない虚ろな物だったが、男達はその眼に得体のしれない恐怖心を抱いた。
(こいつはヤバい・・・)
疲れ切った。地面に身を預けるような無様な姿をさらしているにもかかわらず、近づくことを戸惑わせる何かがある。
優秀な忍達はそのことを即座に理解した。
だが、彼らに撤退の二文字はない。
そもそも、彼らがここにいるのは作戦の指揮官たるレーヴェに無理を言ってのことなのだ。
ここで逃げることは敵前逃亡。結局のところ、軍罰での死刑が待っている。
それならば、最後まで足掻こう。
そんな思いが彼らの中を支配する。
「目的は姫レイチェルのみ。それ以外は後回しだ。行くぞ!」
忍を率いる男が皆に号令を出す。
カルキオの敵襲の知らせを聞いて逃げ出したレイチェル一行を追う。
この場に残るあの不気味な男のことは放置する。
もともと、打ち取れるとは思っていない。
彼らの目的は姫レイチェルの身柄のみ。
それ以外はどうでもよいものなのだ。




