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第二十五話 挿入短編:虎は死して皮を残す
迦楼羅 遊虎は、桜がきらいだ。
日向の呪いを全て解いて、日向が死にかけたとき。
世界が終わるかと思った。
いや、世界を終わらせようと思った。
全てを真っ暗にすれば、日向がいてもいなくても、変わらない。
神守が治療するとき、なぜか、見ていられなかった。
どうにもできなくて、部屋を出て、庭を歩きまわった。
遊虎は、桜がきらいだ。
まだ蕾すらつけていない、冬の桜の樹を、一人、睨んだ。
桜は、大事なものを、とっていく。
だから、消さないと。
「大丈夫。龍ちゃんは、きっと最後はおれのものになる」
遊虎には、波が読める。
これからの世の波が。
でも、空に浮かぶ灰色の雲に覆われたように。
いま、波が、うまく読めなくなっている。
日向が死にかけることも、読めなかった。
「大丈夫。大丈夫。虎はね、そっと忍び寄って、獲物を襲うんだ。
虎の毛皮の色は、風土の違いで大きくかわるから、バレないように」
遊虎は、日向以外の、すべてがきらいだ。




