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英雄は約束を守るようです  作者: ショボン玉
第一章 二人の騎士
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第五節 期限つきの平和⑥

研究室回想かと思ったらたどり着きませんでした。

 二人がまだ城にきて数日だった頃。

 定時上がりの今日は夕食まで稽古をしようと一階へ下りてきたら、どこからともなく苦しそうな声が聞こえたような気がしてリョウが足を止めた。


「……いま、声が聞こえなかったか?」

「いや、気がつかなかったが」


 あたりを見回したギルガメシュが集中しても分からなかったのだが、音を拾うように耳に手を当てた彼はこっちだと人気のない通路に向かいだす。


「……れか………」

「やっぱり聞こえる。搬入口のほうからだ」


 そのまま城の裏手に行ってみると、薄暗い廊下の突き当たりで一人の執事が、一抱えもある木箱にもたれかかって苦しそうにあえいでいた。


「誰か、誰か…うっ! あいたたた」

「大丈夫ですか、持ち上がらないんですか?」


 ここは城に大きな荷物を持ち込むための搬入口で、食料品から日用品、届け物などが第一騎士団による厳重な内容物確認を経て一時保管される場所である。


 城内の配送は手の空いている執事やメイドの仕事なのだが、荷車や台車を使えないためにすべて人力となっており、重量物が届くと一苦労なのだ。


 十七時を過ぎているため外に繋がる大扉は閉じられていて、残っているのはこの木箱と白髪交じりの執事と、ぽつんと置かれたランプだけ。


「たた、助かりました……!」


 声をかけられて、やっと人が来てくれたと安堵の男性は木箱に両手をついたまま言ってくる。

 どうやら腰を痛めているらしく、動けないわ大きな声は出せないわでにっちもさっちも行かない状況だったらしい。


「実は腰をやってしまいまして。どなたかは存じませんが執事を何人か呼んでいただくか、この木箱をポタス様の研究室へ運んでくださいませんか」


 ポタス、というのはあのセッケンを復活させたという宮廷魔導師長兼、宮廷練金術師長であるカッツ=ポタス子爵の事だろう。


 あいにく二人ともまだ顔合わせを済ませていないのだが、頭の中の城内地図では宮廷錬金術師と宮廷魔導師の部屋に挟まれた場所だったはずだ、と確認したリョウは任せてくださいと頷きつつ、同じ階層にある宮廷治療師の部屋に執事を連れて行くことにする。


「ええ、任せてください。ギルは執事さんを治療師の所へ」

「分かった」


 ほんの一瞬だけ、訓練の時間が減ってしまうから人を呼んでやればいいじゃないかと思ってしまったギルガメシュであった。

 しかしすぐに人助けこそ騎士の本分、いくら修行とは言え利己的な考えはよくないと思い直して執事に歩み寄る。


「すみません、ありがとうございま……ヒエッ!?」


 肩を借りて体を起こした男は、今更ながらに少年二人が一角獣(ユニコーン)の記章を付けていることに気づいて飛び退ってしまう。

 しかし腰に力が入らず、折れ曲がるようにへたり込んでしまった。


「アイタタタ!!」

「ぎっくり腰かな。はやく診てもらった方がいいですよ」


「ととととんでもない! 親衛騎士の方々に荷運びなどお願いしたら懲戒されてしまいます!」

「大丈夫ですよ、困ったときはお互い様じゃないですか」


「行きますよ」

「あっ。おやめください、放してください」


 気持ちは分かるギルガメシュが苦笑いで立ち上がらせると、執事は気の毒なぐらい恐縮してしまっている。


「そっちの箱は君に任せても大丈夫だな」

「どれ……ああ、これは重い。一人で運ぼうだなんて無茶だ」


 身体を鍛えに鍛え、操気技術にも熟達しているリョウだからひょいと持ち上げてしまうが、割れ物との注意書きが張ってある箱は本当なら大人二人がかりで運ぶぐらいの重さだった。


 カチャカチャと瓶のようなものがぶつかり合う音がする荷物には、逆さま厳禁とか冷暗所保管などの札も張ってあり、送りもとは錬金術協会付属工房となっている。

 おそらく何かの薬品でも入っているのだろう。


「重量物注意の札もあった方がいいですね。小さい荷物とか見た目は軽そうなやつで油断すると腰痛めますし」

「確かに、年に何人か配送でやらかす者がおります。まさか自分がやってしまうとは……」


 リョウが搬入口を出ながら言うと、ひょこひょこと歩く執事は油断していましたと反省しきりであるが。

 注意喚起の他に根本的な重量対策も必要だと考えた彼は、ちょうどいいので他の宮廷従事者へ協力を依頼してみることにする。


「重い物は騎士団に運んでもらうとか、魔法使いに浮遊の魔法(レビテーション)をかけてもらえるようにかけあってみるか」


 浮遊の魔法は浮かせた物体を術者の任意で上下させられるものであり、浮いたものを押してやれば横方向へも簡単に動かせる。


 逆に強い風に押されてとんでもないところに流されてしまうこともあるため、屋外での使用には注意が必要だ。


「そうか、魔法と言う手もあるんだな」

特定身体能(フィジカル)力強化の魔法(・エンチャント)とかでもいいかな。せっかく宮廷魔導師がいるんだし、防衛以外に手を借りても良いと思うんだ」


 魔法のことはさっぱり分からないギルガメシュは、同様らしい執事と顔を見合わせてしまった。

 彼らは宮廷魔導師のいる理由を詳しく知らなかったのである。


「そう言えば、どうして魔法使いを城に常駐させているんだ?」

「国によっていろいろ理由はあると思う。古代魔法文明の遺物を集めて管理させたり、騎士団同様に外敵対応だったり」


 理想の導師の教えにより、学院および所属の魔法使いは国家間の戦争に関与しないとされているが、いざという時の防衛、対抗手段として備えておく必要があるし、怪物や邪竜などの外敵対応にも大きな戦力となる。


 また魔法の武具や魔符(スペルカード)といった単純戦力ではなく、遠見や天候操作など、戦術級以上の力を持つ遺物は封印指定として学院が厳重に管理しており、古代遺跡から発見された場合は買い取ることもあった。


「指揮系統の集中はわかるけど、常駐必須かと言われると微妙だな」

「本命は俺たちと同じ王族警護じゃないか。魔法使いじゃないと、魔法使いの襲撃は防ぎにくいから」


「魔法使い相手か…」


 戦士相手とは勝手が異なるのだろうとしか分からなかったギルガメシュも、確かに魔法使いのことは魔法使いに任せたほうがいいのだろうと感じてしまった。


 戦士と魔法使いのどちらが強いのかという問題についても、多くの場合において魔法使いが圧倒的に有利と言われており、過去には高位の妖術師によりどこかの国の騎士団が壊滅させられた例もある。


 なにしろ超遠距離、遠距離では一方的になぶられるだけで中距離から戦技でどうにか賭けになる程度。


 腕のいい戦士が近距離から奇襲してやっと五分とまで言われているのは、術者を守る障壁のおかげで魔法使いが自分を中心とした範囲魔法を使えることと、操魔技術を要する高位戦技の多くが魔法防御力に減衰させられてしまうからだ。


 リョウのように全身を魔法の武具で固めているならともかく、同じ魔法使いによる対応のほか、司祭の加護や回復、弓士による狙撃や精霊魔法による詠唱妨害など、冒険者のパーティのように多様性がないと対抗が難しいため、いまや防衛目的で城に常駐させておくのは必須となっている。


「熟練の魔法使いは周囲のマナの動きに敏感なんだ。理力魔法や操魔技術を使うような戦技が城の敷地内で使われたらすぐ分かる」

「なるほど、警戒網の意味もあるんだな」


「あとは精霊魔法の姿隠し(インビジビリティ)を使って侵入されないように特定精霊制圧サプレス・エレメンタルの結界を張っていたり。これは気配探知に長けた戦士を配置することで代替とすることもあり、ギュメレリーは後者みたいだな」


「イグザート様は魔法にもお詳しいのですね」

「うむむむ、剣の腕や仕事のほかにそういう知識を増やす時間もとらなければ……」


 執事が噂の新人の博識ぶりに感嘆してしまったため、もう一人はまだまだ勉強が足りないと肩身の狭い思いである。


 ただこれは、物心つく前から凄まじい教育であれこれ詰め込まれた彼と比べる事に無茶があった。

 二人は同じ年齢とは言え、生きてきた密度があまりにも違いすぎるのだ。


 ギルガメシュとてリョウと出会ってからは成長と言うより進化の方が相応しい速度で変わり続けているのだから、決して悲観する事はないはずである。


「親父が何でも知っておけと言う人だったので。特に理力魔法には厳しかったなぁ」

「魔法使いの方々も常々仕事が欲しいと仰っていますので、重量物の配送に手を貸してくださるのではないでしょうか」


「そうなのですか?」

「ええ、国王様は錬金術のほうに力をいれていますし……」


 国営に関わる各機関については国ごとに予算のかけ方、力の入れ方が違っており、周辺各国との関係が良好なギュメレリーなどはどちらかと言うと軍事色の強い魔法学院よりも、国民の生活水準向上に役立つ錬金術協会に力を入れている。


 最近では国王の一存で決めるやり方から、機関の代表者による予算折衝会議にて昨年度の実績と今年度の目標、それから中期計画を発表するやり方に変更されており、今年はセッケンを復活させた錬金術協会の評価が一番高かったとのことだ。


 そのため学院、協会、大学、神殿といった主要四機関の予算配分が二対四対二対二となっており、削減が続く魔法学院などは嘆いているらしい。


「私の姪が見習いとして学院に入っているのですが。兼務であるポタス様が少々練金術に傾倒しているところがあり、魔法使いたちに不満が溜まっているそうです」


「そうか、ポタス子爵は宮廷錬金術師長であり、魔導師長であると同時に協会長で学院長か」


 いち研究者としてとんでもなく優秀なのは疑うべくもないが、機関の長としては少々心許ないのだろう。


 階段を上りながら二人の会話に耳を傾けていたギルガメシュなどは思わず、うちの父上と逆かと何とも言えない表情で呟いてしまう。


「きゃっ!? なぜイグザート様が荷運びを!? すぐ代わりを集めますので……」

「いや、手が空いてましたし、かなり重いので任せてください」


 荷運びと急病人搬送をしている自分達を見かけて驚いているメイドに、問題ありませんと微笑んだリョウは、一般的な機関の仕事内容を思い浮かべて学院は大変かもなと呟いていた。


「文書転位を別にすると、学院の主要顧客はおなじ魔法使いか魔法の道具が欲しい冒険者ぐらいかな? 一部、魔法の道具入れホールディング・バッグの初期化とか魔法鑑定とかはあるにしても」


「毎夕、町の街灯に魔法の灯りを灯して回ったり、氷を配ったりしているじゃないか」


 ギルガメシュは色とりどりのローブを着た彼らが立派に働いている姿をよく見ていたのでそう言ったのだが、それらが奉仕活動だと知っていたリョウが違うんだと首を振る。


「違うんだ。あれは古代魔法文明期に魔法を使えない者を下級民族として虐げ、人を人とも思わない実験やらなんやらを繰り返してしまった理力魔法使い達の信用を取り戻すべく、千年ぐらい前に『理想の導師』が提唱した奉仕活動なんだよ」


「ええっ? あれ無償なのか?」

「人々の暮らしに溶け込み、怖がられないようにってな。それが定着するまでは魔力を持つ者は問答無用で妖術師扱いされたり、怖がられたりと大変だったそうだ」



 彼の言うとおり理力魔法は複雑な歴史と背景があり、もともと数千年も昔の鋼の時代から古代魔法文明崩壊後二百年ぐらいまで、魔力をもつ者がマナを原動力として行使する魔法は『物理魔法』と呼ばれていたそうだ。


 四つの浮遊大陸を飛ばし、召喚した神族や魔族を支配下に入れ、魔像(ゴーレム)兵団で地上の王国を蹂躙した上級民族は主物質界の支配に飽きたらず、天界や魔界にまで攻め込もうとしたのである。


 異界へ繋がる門を作ろうとしたところで現れた神竜と眷属である竜種によって滅ぼされたのだが。


 通貨統一、言語統一、総歴制定のほかに製紙や印刷、ガラス製造など様々な知識や技術を残したとは言え、魔力を持たない者を人として扱わなかった虐待、圧制は人々の心に大きな傷跡を残した。


 さらには、先に述べたように戦力面でも一人の魔法使いの影響が大きいことから恐れる者が後を絶たず、魔力を持つ者はすべて殺すべきという風潮ができあがってしまったのだ。


 貴族や平民、男女によらず突発的に発生する先天性の才能の有無で殺されてはかなわないと、人に害をなしたことのない魔法使いたちは人里を離れたり抵抗したり、親は我が子かわいさになんとか隠そうと苦心したという。


 そんなふうに魔力を持つ者が恐れられ、憎まれ、魔力をひた隠して生きなければならない状況を憂えたセイアー=ヘルデライトが、どれだけ迫害されてもこつこつと理想を説き、人々の生活の役に立とうと地道な努力を積み重ねていった結果、賛同する魔法使いが増えていって少しずつ状況が改善されていくことになる。


 もちろん活動の中心となる彼を捕らえて処刑しようとする者は多く、新しい時代の権力者達も執拗に付け狙ったが、大魔導師であるセイアーは決して相手を傷つける事無く難を逃れ続け、何十年もかけてシアード大陸中を回ったそうだ。


 その後、一番最初の魔法学院を作った彼は善なる魔法使いとして『理想の導師』と讃えられるようになり、物理魔法は理力魔法と呼ばれるようになった。


 他の三大陸にその動きが波及して魔法使いの立場が復活したのはさらに数百年後のため、遺失となった技術や魔法の復活にもそれだけの差がでているらしい。



「知らなかった。てっきり国からお金が出ているとばかり」

「それで予算も削られたんじゃ、学院は大変だ」


 奉仕活動が主体というのもそうだが、他の機関と比べて商売の幅が狭いのも学院の課題の一つに違いない。


 たとえば神殿は治療によるお布施が恒常的に期待できるし、大学は学生から学費を取っている。

 練金術協会はセッケンや精油、練り歯磨きに発火の粉など生活や冒険に役立つ雑貨を手広く扱っているために金回りは悪くなかった。


 いっぽう、魔法鑑定にしろ道具入れの初期化にしろ道具の販売にしろ、一つ一つがべらぼうに高い魔法学院はというと。


 新しい魔法を覚えるのに使う魔法書は魔法使い以外に需要がないし、一回使い捨ての魔符(スペルカード)や魔術行使時の消費代替となる魔石も値が張るために霊薬(ポーション)同様いざと言う時の切り札となっているせいか、あまり客が来ないのである。


 各町にある転移施設を使った文書や小物の配送などはいい値段なのだが、これはもともと施設の維持費が高いせいであり、利率の高い商売というわけではなかった。


 宮廷魔導師や学院の導師など、比較的高給な定職の席は少なく、無所属の魔法使いが一山当てようと冒険者になる例は少なくない。

 また理を忘れて野盗に組したり商人を襲ったりして、妖術師として賞金首になってしまう例もある。



 そのような詳しい状況までは知らないものの、新しい仕事が増えれば魔法使いも喜ぶのではないかと執事は言った。


「ですから荷運びでも何でも、新しい仕事の話はきっと喜ぶと思うのです」


「そうですね。さすがにこれ以上は奉仕活動じゃなくて良いと思いますし。町間の荷物運びを請け負う冒険者は言わないだけでやっているはずですから、それを町中でもできるようにするだけかと」


 街灯係や氷配りで雑用みたいな扱いには慣れているし、転移文書の配達だってお手の物なのだから、魔法による重量物配達だって修行の一環として苦にならないに違いない。


 過去に同じことを考えた者もいるはずだが、公的に奉仕ではなく商売としていいと位置づけられないとやりづらいのだろうと思ったリョウは、魔法使いの奉仕と商売の分割は大きな課題として認識しておくことにする。


「そんな事をしなくても、君が持っているような鞄をいくつか用意すればいいんじゃないか」


 ギルガメシュはもっと便利な道具があるのだから流行らないのではと思ったのだが、容量と携帯性という意味では最高効率を誇る魔法の道具入れホールディング・バッグにも制限や注意点があるんだと、これまでに二つ壊したことのあるリョウが言った。


「いや、魔法の道具入れホールディング・バッグも万能じゃない。変なものを入れようとすると壊れてしまうから、中身には関与しない輸送依頼とかで素性が分からない荷物を入れようとする人は少ないと思う」


 特にバッグにバッグを入れようとすると受け側が壊れてしまうことから、商売敵を減らそうと悪意ある者が大荷物の一部に魔法の道具入れホールディング・バッグを仕込んで輸送依頼をかける事もあり、ひっかかった冒険者や商人がせっかくのバッグを壊してしまう事もあったりする。


 先に入っていたものが全部消失したうえにバッグ自体も壊れてしまう大損害になるため、自分達の荷物以外は保管しないか、中身をしっかり確認できない物は入れないのが保有者の自衛策となっているのだ。


「みんながみんな持っているわけでもないし、バッグに入れられない生き物……たとえば急病人や動かしづらい重傷者を神殿に運ぶときとかも需要がありそうだ」


 それなりに慣れていれば拡大なしの基本消費のみで百キロぐらいを浮かせられるようになるため、工事現場の手伝いだっていいだろう。

 要は、魔法を使ってできる商売を少しずつ増やしてやればいいのである。


 もちろん急激な参入は既存の業者への影響も大きいし、やりすぎるとまた魔法使いが怖がられる懸念もあることから、有識者による調整や国王による許可を経てからになるだろう。


「まずは荷運びぐらいかな。執事さん達も楽になるはずだ」

「ありがとうございます、そう考えていただけるだけでも嬉しいです」


 そんな事を話しながら宮廷治療師の部屋に行ってみると、幸いにも定時を過ぎたためかベア師はおらず、夜番の一人が執事の手当を請け負ってくれた。


「本当にありがとうございました」

「いえいえ。では箱はこのまま研究室に届けますね」


 繰り返し頭を下げる執事に気にしないでくださいと首を振った二人はそのまま四つとなりの研究室に行ってしまい、後には執事と治療師の二人だけが残される。


「今の、噂の新人様ですよね? 荷運びなんかしてもらって良かったんですか?」

「私もそう思ったのですが気にするなと仰ってくださいまして。ずいぶん気さくな方のようでした」


 急病人の搬送はともかく、荷運びを親衛騎士にやってもらう必要はなかったのでは、と治療師は良くないことを見てしまったと言わんばかりだが。

 執事の方は、元冒険者という一人の人柄に少し触れられたような気がして感激しきりだった。


(あの方は私の不注意を責めるどころか、改善や負担軽減まで考えておられた……!)


 これがとても貴族的な相手だったら、腰を痛めた不注意を罵られ、他の執事を呼びつけてもらうのがせいぜいだったはず。

 もしくは搬入室に助けを求める者がいると気づいたところで、面倒ごとには関わらないと立ち去られても不思議ではない。


 自分の知る貴族像とかけ離れた少年に衝撃を受けた執事はその後、執事仲間やメイド達にこのことを話して回った。


 荷運びをさせている現場を見られていたため事情を説明しなければならなかったのだが、受けた感激そのままに気さくで平民にも分け隔てのないお方だと誉めちぎったのである。


 それがまた、城内の平民における彼の評判に繋がっていったと言うわけだ。

次回こそ研究室回想編(´・ω・`)

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