エピローグ
なんとか4人全員の魂を補完し終えた僕は、あの邪悪な聖剣のせいで、はっきり言って瀕死の状態だった。山羊子の相手をする気力もなく、ただ必死でありったけの魔力を注いで身体の傷を癒し、眠りについた。
目を覚ますと、僕は天国、いや地獄と言うべきか、にいた。死んでしまっていたという意味ではなく、ハーレム的な意味でだ。
「おはよ、お兄ちゃん。やっと起きてくれた」
最初に襲いかかってきたのは、萌々香だった。丈の短いピンクのフリフリワンピース姿の萌々香は布団をひっぺがすと、ベッドの上の僕に飛び乗ってきた。
「全然起きてくれないんだもん、心配しちゃったよぉ」
猫撫で声でじゃれついてくる。可愛いけど、完全には傷が塞がっていない身としてはかなり痛い。
「こら、そこ、許可なくわたくしの下僕に触らない!」
闇子が萌々香を僕から引き離し、乱暴に投げ捨てる。今日の闇子は、本職の看護師が決して着ないような、超ミニのピンクのナース服姿だ。胸元にも切れ込みが入っていて、ばっちり谷間が見える仕様だ。
「まったく、怪我人の上に乗るなんて常識のない。わたくしが怪我人への接し方の手本を見せてさしあげますわ」
言って、右手にゴム手袋をはめておしぼりを取り出す。
「どんな常識よ!? くたばりなさい、痴女!」
奈莉栖のハイキックが綺麗な孤を描いて闇子の後頭部にヒットする。奈莉栖は初めて会った時のブレザー姿だ。僕はこの格好の奈莉栖が一番好きかも知れない。チェックのミニスカートの下はスパッツで、下着は見えなかったけど、それはそれで風情がある。
「って言うか、あんたもなんで下半身がそんなことなってるのよ。けだもの、節操無し、最低男!」
口早に罵られて初めて、僕は朝の生理現象に気付いた。
「いや、さすがに起きたてなんだし、仕方ないだろ……」
「猛けるモノの鎮め方を知っている分、まだスズキミヤコの方がオトコを理解しているわね」
山羊子が奈莉栖を嘲る。
「その点については同意するが……私としてはお前を狩っておきたいな」
片足だけがホットパンツになったジーンズにYシャツを羽織ったラフな格好の杏樹だ。柄と鞘が白木でできた居合刀を携えている。これが例の御神刀だろう。見るからに霊験あらたかだ。
「あら、怖いお姉さまに鎖に繋がれて死にかかっていた癖に、勇ましいことね」
山羊子の挑発に、杏樹は頬を赤らめた。自分でも情けないのだろう。言い返すことはせずに、杏樹は無言で御神刀を居抜いた。
「な、ナニするのよ、危ないわね。こんな狭い部屋で刀抜くなんて正気なの?」
これには山羊子もびびったらしい。ベッドの上の僕の後ろに逃げ込む。
「ちょっと、山羊女! わたくしより胸が小さいくせして伊吹に胸を押しつけないでくださる!?」
「お兄ちゃん、どいて! そいつ殺せない!」
「あんたらぜんいんいっぺん死ぬれー!」
「悪魔退散!」
……そして繰り広げられる美少女たちの阿鼻叫喚……。
なぜ彼女たちは全員一度に来るのだろうか? 一人ずつ、別々の時間に来てくれれば、全員ときゃっきゃうふふできるかも知れないのに。僕のそんなまっとうな心の叫びを無視して、少女たちは狭い部屋で縦横無尽に暴れまくる。
「ねぇ、ちょっといいかな?」
僕が声を掛けても、誰も反応しない。最早僕のことなど、誰も気にしていないのではないか。彼女らは一体何をしに来たのか? 丸きり本末転倒じゃないか。
「えーっと、ちょっと、静かにしてもらえるかな?」
流石に耐えかねて、僕はみんなを強制的に黙らせた。簡単なことだ。いつもやっている妄想に、ほんの少し魔力を注げばいい。あっという間に亀甲縛りと猿ぐつわをされた美少女達の出来上がりだ。
『ん゛ーーーーー』
4人の美少女が縛りあげられ、悶える様はなかなか壮観だ。
「なかなかイイ趣味してるわね。これから、どうするの?」
一人だけお縄を免れた山羊子が、うふふと笑いながら尋ねる。
「さて、どうしようかな……」
結局、魔女になってどうするか、何をするかは僕自身の判断に委ねられているのだ。山奥に隠居して、誰にも迷惑を掛けないようにひっそりと暮らすのか、異端審問官達と派手な殺し合いを演じるのか、逆に魂を求めて悪魔を狩る、裏切りの魔女なんて呼ばれるのも楽しいかも知れない。これから僕がどうなってしまうのかは僕次第、前に山羊子の言った通りなのだろう。
だから僕は、少なくとも暫くは、甘美な堕落と頽廃に満ちているらしいこの魔女としての生活を、ただ刹那的に享受しようと思ったんだ。
この物語はこれでおしまいです。読んでいただき、ありがとうございました。




