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片腕の王  作者: _______
第1章 「我、在らん世に...」
9/100

第9話

男「...」受像機に目を向け朝食を摂る屈強な男。

生物「ぎょひっ...」その視界に、突如現れる不気味な生物。

「ガッ...」男は棍棒を手に取り、その生物と窓越しに対峙する。

「コツン!」窓硝子を棍棒で小突く男。

生物「ぎょひぃいいーーー!!!!」不気味な生物が奇声を上げる。

「ガシャン!!」不気味な生物目掛け、男は棍棒を突き出す。

生物「...」割れた窓硝子とともに不気味な生物は階下へと転落する。

女「...」突如落下して来た生物を目にして女は言葉を失う。

 「...」女が上を見上げると此方を見下ろす屈強な男の姿が。

生物「ぎゅっ...ぎゅぃ...」落下の衝撃で瀕死の生物。

「ムグッ...ムググッ...」生物の壊れた体が異様に蠢く。

女「...」

「タッ...」瀕死であった生物が身を起こそうと地面に手を突く。

女「えっ...」瀕死の状態から急激に回復する生物の姿を見て動揺する女。

生物「...」不気味な生物の口が開き、大量の唾液が零れ落ちる。

「ササッ...」その余りの不気味さに、女は生物から距離を取る。

生物「ぎゅる...!」上体を起こした不気味な生物の目が女を捉える。

女「ひっ...!」

生物「ぎゅひぃーーー!!!!」

女「きゃぁあああーー!!!!」早朝の貧民窟に、奇声と悲鳴が鳴り響く。

武器になる物を手にした住人たちが一所に群がっている。

上階の屈強な男も棍棒を手に下りて来る。

這いずり「ぎょひっ!!」

住人たちの中心に、這いずり動く不気味な生物の姿。

女「噛まれた...噛まれたっ!」足から血を流し泣き叫ぶ女。

住人「わくわく...」何事かと上階から高みの見物を決め込む貧民たち。

這いずり「ぎゅるるっ...」誰彼構わず食らい付こうとする這いずり。

住人たち「おおおっ...」一定の距離を保ち周囲を取り巻く住人たち。

「ドスッ!」寄せ付けまいと棒で突く住人。

這いずり「ぎょひぃーーっ!!」

男「わわっ!!」這いずりに棒を掴まれつんのめる男。

這いずり「ぎょひゅっ!!」這いずりが、透かさず男に飛び掛かる。

しかし男の側に立つ老爺が、這いずりを鉄棒で打ち払う。

這いずり「ぎょひっ!」撥ね上げられ仰向けに転倒する這いずり。

「ガッ!」転倒した場所の間近に立つ青年に手を伸ばしその足を掴む。

青年「ぎゃああーーーー!!!」這いずりに腕を齧られ悲鳴を上げる青年。

住人たち「此の野郎!!」

青年を救おうと、次々這いずりを打ち付ける住人たち。

這いずり「ぎょふっ!ぎょふっ!」

    「ぎょふっ...ぎょっ...ぎょっ...」

    「ぐっ...」打ちのめされて息絶える這いずり。

住人「はあ、はあ、はあ、はあ...」

「グイッ...」陥没した頭部を掴み引き上げる住人。

住人たち「ううっ...」這いずりの悍ましい顔面を凝視する住人たち。

住人「こりゃあ酷ぇ...」

住人「ああ、悍ましい...」

住人「本に何ちゅう醜い顔じゃぁ...」

住人「一体何処から涌き出て来居った...」

住人たち「...」

住人「果たして此奴は人間か...?」

住人「服を着とるけ、当然人じゃろ...」

住人「だがよ見よ、此の面ぞ...」

  「此の手なんぞ...人とは思えぬ見て呉れじゃ...」

「ビリッ...!」血に塗れ、赤黒く染まった衣服を剝ぎ取る住人。

露となった這いずりの背中一面には、無頼特有の入れ墨が。

妻「えっ...貴方...」躯を見下ろすひとりの女。

 「いや...!!」入れ墨を見て、それが自分の夫であると知りへたり込む。


孤児「おい爺、捕吏じゃ!」

「タッ、タッ、タッ、タッ...」

捕吏たちが走り行く様を窓から身を乗り出し眺める商人と孤児たち。

商人「何じゃ、朝から騒々しいのう...」

「スルスルッ...」

コステロ「あっ...」

包帯を解き、膿み爛れの消え失せた腕を見て戸惑うコステロ。



玉座の間...

神官たち「...」王の到着を待つ3神官。

社長「...」その後方で畏まって控える社長。

幼女中「御成ぃー!御成ぃー!」

玉座の側に控え立つ幼女中が、王の御越しを告げる。

「カッ、カッ、カッ、カッ...」

王「...」玉座へ向かい歩く最中、神官たちに視線を向ける王。

神官たち「...」王に向け首を垂れる神官たち。

「スッ...」王は玉座に腰掛け直様、神官たちの挨拶を制する。

王「前置きは要らぬ...用向きを申せ...」

ワーカジュ「んんっ、昨今...此方、御城内で...」

     「研究を名目とした殺戮が、罷り通って居ると聞く...」

王「...」

パボワ「人倫に悖る斯様なる蛮行...神は看過致しませぬ...」

リコイ「何故陛下は此の件を、諒と為されて御出でであるのか...」

王「ふん、成程...」

 「恐らくは其れ...錬金術師の仕業であろう...」

神官たち「...」

王「ふふっ...漸く奴らが身を入れて、職務に励んだ所以かの...」

ワーカジュ「...」

     「錬金術、不老不死...永遠の生など絵空事...」

     「生を享けし全てのものに...死は、等しく訪れる...」

王「...」

ワーカジュ「如何に王とて...逃れ得る事、決して叶わぬ...」


王子「おい、アタム...」玉座の間へ向かう術師たちの姿を認める王子。

  「彼れは若しや、錬金術師の...」

アタム「はい...恐らくは、新たな師長...」

   「又候懲りずに陛下の元へ...」

王子「何と愚かな...!」再度の凶行を防ぐべく、王子は術師の後を追う。

アタム「殿下...?」


王「不死を成さんとする事を...何故、然様に阻まんとする...」

ワーカジュ「...」

王「其方...我が死を望んで居るか...」

パボワ「なっ...!」

リコイ「...」

王「不死が成り...神に服ふ事をせぬ...」

 「我が統べる世の連綿たるは、確かに不都合此の上無かろう...」

神官たち「...」

王「ふん...もう良い、充分じゃ...」

 「傅く主の元へと帰れ...」

ワーカジュ「陛下...!」

幼女中「...」

ワーカジュ「此れ、神よりの御託宣ぞ...!」

王「其の神とやらに申すが良い...そう恐れずとも噛み付かぬとな...」


「ドンッ!」玉座の間の大扉が音を立てて打ち開かれる。

神官たち「...」怒気を孕んだ形相で玉座の間から退出する3神官。

社長「...」その後に、無言で従い歩く社長。


術師「...」玉座の間へと向かい歩く術師。

看守「...」その背後には虜囚を連れた看守の姿。

師長補佐たち「...」更にその後方に師長補佐たちが続く。


神官たち「...」向かい来る術師たちと視線を交わす事無く擦れ違う。

    「...」その後方から来る王子の姿を認め、足を止め待つ神官たち。

王子「ぺこり...」神官たちに気付き頭を下げる王子。

神官たち「スッ...」王子に御辞儀を返す神官たち。

ワーカジュ「おお、此れはアタム様...!」

王子の後に続く長老アタムの姿を目にし驚きの声を上げるワーカジュ。

アタム「ワーカジュか、久しいのう...」

王子「...」ちらりと長老に目を向けた後、視線を戻し大扉へ向かう。

アタム「御主が下山致すとは...」

社長「...」

アタム「陛下と御会いに...?」背後の社長の様子を目にし状況を察する長老。

ワーカジュ「はい...」

アタム「して、首尾は...」

ワーカジュ「...」

アタム「そうか、うむ...殿下も今の有様を、大層憂えて御出でじゃ...」

   「ではの...」王子の後を追うアタム。

ワーカジュ「暫く見ぬ間に御立派に...」

神官たち「...」王子の背を見送る神官たち。

「ドンッ...」

王子「...」眼前で閉ざされる大扉をじっと見詰める王子。


「スッ、スッ、スッ、スッ、スッ、スッ、スッ、スッ...」

術師「...」王の御座す玉座へと、目を伏せ歩く術師たち。

衛兵「スッ...」

術師「...」衛兵に制され足を止める。

幼女中「ひそひそ...」来訪者が何者であるか王に伝える幼女中。

王「面を上げよ...」

術師「...」ゆっくりと頭を上げる術師。

王「其方が新たな師長とか...」

術師「はっ...御初に御目に掛かります...」

  「私奴、名をケルビン・ビャカンと申します...」

王「斯様な折に手を上げるとは...」

術師「...」

王「だがしかし、愚者に非ざる者の目ぞ...」

術師「此れまでは、僻地に追われて居りました故...」

  「成果を示す機会が得られず...」

師長補佐たち「...」

術師「此度、漸く此の様な場で、陛下に御覧頂けます事...」

  「大変光栄に存じます...」

王「ふふっ...面白い...」

 「では見せよ、如何なる成果を持参した...」

師長補佐1「...」術師に木箱を渡す師長補佐1。

紐を解いた木箱から平壷を取り出し蓋を外すと中に多数の丸薬が。

王「...」幼女中に何やら指示する王。

幼女中「ひょこ、ひょこ...」押し出し置かれた平壷を幼女中が取りに来る。

王「...」幼女中の手にした平壷の中の丸薬に目を向ける王。

術師「今、此処に...控えましたる虜囚共...」

  「此の者たち皆、事前に其の丸薬を食させて居ります...」

王「何っ...」

 「おい貴様...我を愚弄して居るか...」

術師「愚弄などと、滅相も...」

王「此の丸薬に偽り無くば、其の身を以て効果を示せ...」

術師「申し訳御座いません...」

  「実は未だ...完成には至って居らず...」

王「おのれ下郎、然様なる言い逃れ...突き通せると思うて居まいな...」

術師「陛下、暫し...今暫し...」

王「...」

術師「未完成であれど猶...」

  「其の効果は...既に至宝の境地であります...」

王「...」

術師「私奴の言の葉に...若し、偽りが御座いましたら...」

  「此の命など...如何様にでも...」

王「ふん、良かろう...」

虜囚たち「...」目隠しをされた3名の虜囚の姿。

術師「ひそひそ...」控え立つ衛兵たちに何やら指示する術師。

衛兵たち「...」虜囚を横一例に並ばせる衛兵たち。

王「...」平壷から丸薬を一粒手に取り、じっと見詰める王。

 「ほれ、食うてみよ...」側に控える幼女中の口にその丸薬を差し入れる。

幼女中「もぐもぐ...」躊躇なくその丸薬を咀嚼する幼女中。

王「如何じゃ...?」

幼女中「美味で御座りましゅる...」

術師「其れでは...」術師が衛兵に合図を送る。

王「...」

「グジュッ!」虜囚1の胸部を剣で突く衛兵1。

虜囚1「うぐっ...!」膝を突いて倒れる虜囚1。

王「...」

「スッ、スッ、スッ...」虜囚1の側へと向かい歩く術師。

術師「さあ陛下、どうぞ此方へ...御越しになって御覧下さい...」

王「...」立ち上がり術師の元へと向かう王。

師長補佐たち「...」

術師「...」術師は目を伏せ、向かい来る王を待つ。

王「...」剣を胸に突き立てた儘、仰向けに倒れた虜囚1を見下ろす王。

 「如何した、死んで居るではないか...」

術師「はい、陛下...」

  「通常であれば、此の状態からの蘇生など望めぬ事...」

  「ですが...」

「グジュリ...」術師の合図を受け、虜囚1の胸から剣を抜く衛兵1。

王「...」

「ヌチャッ...」懐から布を取り出し、虜囚1の傷口から血を拭い去る術師。

王「んっ...?」虜囚1の傷口が塞がり行く様を目にする王。

 「何と...傷が塞がり居るではないか...」

虜囚1「んっ...んぐぐっ...」

師長補佐たち「ななっ...!?」

虜囚1「くはああああーっ!」息を吹き返す虜囚1。

王「おお、おおおおっ...!」

虜囚1「はあ、はあ、はあ、はあ...」

術師「此の様に...死に至る程の深手を負っても...」

  「跡形残さず其の傷一切...即座に癒し完治する...」

  「此れぞ...私奴の成しましたる、丸薬の効果で御座います...」

王「おおおおおっ...」

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