表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

50/73

50話 秘策


「作戦って言ったって‥‥」


 いつもは元気で前向きな冒険者たちだが、今回ばかりはみな暗い顔で俯いている。特に火竜討伐に加わっていた者は、四天王の恐ろしさを知っているだけにかなり完全に意気消沈してしまっているようだ。


 無理もない、四天王一体でさえ厳しいというのに同時に二体も来たのだ、正直俺にもどうすればいいかわからない。


「北の街にいった人たちに連絡はつかないのか?」


「はい‥‥北の街にある通信用の魔道具は領主様が持っていたはずなんです。四天王がその領主様に化けていたというなら、おそらくもう…‥」


 職員も沈んだ顔でそう答える。どうやらS級パーティーやルゥフに助けを呼ぶことは難しいようだ。


「じゃあ転送用魔道具で直接助けを呼びに行くのはどうだ?」


「転送用の魔道具が使えるのは、四天王を討伐した彼らの帰還用にあと一回だけです。ですからそれを使っても、危機を伝えられはするけどこっちに来ることはできないという元も子もないことに‥‥」


「くそ、救援は無理か‥‥」


 そもそも、北の街に行った彼らが四天王に勝てるという保証もないのだ。もちろん、勝てるものと信じたいが。


 『紅蓮の刃』の二人とジェシカ、そして可能ならヒートを俺の力と皆の魔法で強化し、全員で四天王を一体ずつ対応する。その間にもう一体に襲われるかもしれないというリスキーな作戦ではあるが、考えつく限りでは、これが最も可能性のある方法だろうか。


 俺は、皆にその作戦を提案しようとする。が、


「四天王のうちの一匹は、俺が何とかしてやるよ」


「…‥ソードレットさん‥‥?」


 ギルドの端の席に座っていたソードレットが立ち上がる。その顔には妙な自信が見て取れた。


「なんとかするって…‥四天王の恐ろしさはお前が一番よく知ってるはずだろ? 何か作戦でもあるのか?」


「ああ、とっておきのがな。あの悪魔に負けてから、勝つ方法を探し続けてたんだ。そしてついに作戦を思いついた。でもこれは俺にしかできない、しかも一回しかできない方法なんだ。だから俺は一匹しか倒せない。だが、その一匹は確実に倒せると保証する」


 それを聞いた冒険者たちは互いに目を見合わせる。どうするか決めかねている様子だ。

 するとそれを見たソードレットが再び口を開く。


「俺がお前らに嫌われてんのは知ってる。だが頼む、俺だってこの王都を守りたいんだ、今回ばっかりは俺を信じてくれねえか?」


 そういってなんとソードレットは頭を下げた。どうやら本気のようだ。


「‥‥わかりました。ではソードレットさん、お願いします」


 職員がソードレットに頭を下げると、彼は力強く頷く。冒険者たちも異論はないようだ。


「じゃあもう一体の方はA級の上位の人数人とジェシカ…‥あれ? ジェシカはいないのか?」


「あれ‥‥そういえば見てませんね。北の街の救援の時にはいたのですが‥‥」


 俺は冒険者たちの中に目を走らせて彼女の姿を探すが、どこにも見当たらない。まああの性格だし、招集に応じないと言われても違和感はないが‥‥。しかしこんな時くらいは真面目に──


「あの──私のパーティーの一人もいないんですけど‥‥」


「俺の所も、二人いないな‥‥」


「あいつ、こんな時にどこで油売ってるんだ?」


 どうやら他にもいない人たちがいるらしい。緊急の招集だし何かトラブルで来られなかったのだろうか。それこそ、遠くの見回りをしていた者なんかは聞こえなかったりする可能性も──


「‥‥‥職員さん、彼らの見回りの担当は?」

 

 俺が嫌な予感がして聞くと、職員は慌てて確認した。そしてその顔が青ざめていく。


「‥‥北の雑木林…」


「…‥くそっ!」


 嫌な予感が的中してしまった。北の雑木林までは距離があるからたまたま警報が聞こえなかっただけかもしれないが、もし悪魔と出会ってしまっていたら‥‥。


「皆さん、今すぐ強化魔法の準備をしてください! ソードレットさんは南の森を頼みます。雑木林に行ってくれる人は──」


「俺が行こう」

「わ、私も──!


 俺が聞くと、何人かの冒険者がすぐに名乗り出る。火竜討伐の時にも見た人だ。


「お願いします。あと、俺も行きます。俺の加護はきっと役に立ちますから」


 そう言うと彼らも頷いてくれた。俺たちはそのまま簡単な話し合いをし、そしてギルドの外に向かおうとする。ほとんどの冒険者はすでに外で魔法の準備をしていた。流石は冒険者、行動が速くて助かる。


 俺も彼らに続き外に出ようとすると、誰かに引き留められた。振り替えって見ると、ヒートが俺の服をつかんでいた。


「サイさん、私の加護をできるだけ強くしてくれませんか?」


「え‥‥? でもそんなことしたら‥‥」


「大丈夫‥‥です。多分。短時間なら。それより、嫌な予感がするんです」


 彼女は不安そうにそんなことを言った。


「嫌な予感‥‥? 俺たちのことか?」


「いえ…‥その、ソードレットのことで」


「ソードレット? あいつがどうしたんだ? もしかして、作戦ってのが通用しないとか?」


 俺も作戦の内容はよく知らないが、とにかく今は彼を信じるしかない。そう思っていたのだが…。


「そんなことじゃないんです‥‥。それよりももっとひどい‥‥私、アレと、ソードレットと長い間一緒にいたからわかるんです。アイツは‥‥何かとんでもない、取り返しのつかないようなことしようとしてる…‥気がするんです」


「…‥わかった、ヒートの予感を信じるよ。でも、無理だけはするなよ」


 俺は彼女の加護を強化する。彼女の力はみるみるうちに強大になり、途轍もない輝きを発し始める。

 ‥‥今までは押さえつけたり弱めたりばかりだったけど、強化するとここまで強くなるのか──


「ぐ、うぅ‥‥」


「おい、大丈夫か?」


 再び体から魔力による光を放ち始め、苦しそうに頭を抱える彼女に声をかける。肩に触れようとすると、ジュっと肉が焼けるような音がして、手のひらに鋭い痛みが走る。軽く火傷したようだ。


「ふう‥‥ふぅー…‥すいません、大丈夫です」


 彼女は深呼吸をして息を整える。加護の光も、比較的安定してるようだ。


「私はソードレットを追いかけます。サイさんも気を付けて」


「ああ、それじゃ‥‥行こう!」


 そして俺はギルドから出て強化を受け、数人の冒険者たちと共に北の雑木林へと走ったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ