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28話 虚飾頭脳戦


「取引…?」


 俺の提案を聞いたラグニアは怪訝な表情を浮かべる。


「人間は、悪魔とは取引しちゃいけないと思ってたけど?」


 流石は四天王、いきなり核心を突いてきやがった。


「そりゃもう。ここにいる誰かが告げ口したら俺はこんがり焼かれちまう。ま、そんな危険を冒すくらい重要な話ってことだ」


 まあ状況が状況だし、ここにいる冒険者達なら告げ口はしないでくれるだろう。ソードレットが気絶してて本当によかった。紅蓮の刃の他の人は──まあ、後で考えよう。


「…ふふ」


 俺がそんなことを考えていると、ラグニアは静かに笑みを浮かべた。だが、目が笑っていない。不意打ちでも疑ってるのだろうか?


 やれやれ、警戒なんて無駄なことを。俺がその気になれば、俺なんて一瞬で殺されてしまうというのに。


「とりあえず、聞くだけ聞いてあげるわぁ。どんな話なのかしら?」


 話を聞く気になったらしい。…さて、ここからが勝負だ。

 俺はなるべく余裕っぽく見えるように振舞いながら、取引の内容を話し出す。


「まあ簡単な話だよ。一言で言うと、今日のところはお開きにしませんかってこと」


「…へえ? なんで?」


「…俺は勇者なんて言われてるがね、力は強いが、まだ若造だ。ぶっちゃけ魔王軍四天王と戦うのは正直避けたい」


 俺はあえて隙を曝け出すように、ラグニアに背を向け、冒険者達の方に振り返る。


「それに、今日は彼らもいる。満身創痍の彼らは、協力者どころか足手纏い、いや、もう人質っていっても過言じゃない」


 そう言って俺は再びラグニアの方へ顔を向ける。

 後ろ向いてる間に攻撃されたらどうしようとか思ったが、よく考えたら正面向いてても多分攻撃避けられないし、だったらわざとらしく隙を作り、もしかして何かの作戦か…!? とか余計な深読みをしてくれたらいいな。


「でもそれでも戦うとなれば──俺も仮にも『勇者』だ、あんただって、ただじゃあ済まないだろ?」


 大袈裟にジェスチャーをし、やたら大声を出しながら、俺は話を続ける。…なんか大の字になって体を大きく見せて威嚇するアリクイみたいな気分になってきた。


「そこで、だ。今日のところは互いに引こうじゃないか。俺は危険な橋を渡らずに済み、仲間も守れる。アンタも怪我をしなくて済む。みんなハッピーだ」


 どうだ? といった感じで俺は問いかける。彼女は依然として警戒を緩めないながらも、少し逡巡してるらしい。

 やったか!? と、俺の心に希望の光が差し込むが、


「確かに、あなたと戦えばただじゃ済まないでしょうね。でも、あなたも自分で言っていた通り、この状況は私にとっては有利なのよねぇ。それに、勇者に会って何の収穫もなしなんて、私が魔王様に怒られちゃう」


 彼女はそう言うと、腰を落とし、構えをとる。


 ──やべえ、死ぬ。なんか本能的な奴がビリビリ来てる。


「──ま、まあ待てよ。手ぶらじゃ帰れないってのは分かってる。アンタにも立場があるだろうしな。そこで、だ」


 俺は少し後ろに下がり、地面に突き立てた安物の剣を引き抜き、差し出す。


「これをやるよ」

「…それは?」


「知らないのか? 勇者が持ってる剣と言えば、聖剣に決まってるだろ」


 聖剣(偽)は、俺の手に握られ鈍く煌めく。


「…私の知ってる姿とは随分と違うようだけど?」


 …え? やべえ、こいつまさか本物の聖剣を見たことがあるのか? それともブラフ?

 心臓が跳ね上がり口から出ていきそうになるが、おれはなんとか平静を保ち続ける。


「…‥そりゃそうだ。これは歴史の闇に葬られた『もう一振りの聖剣』だからな」


 俺の脳が再び爆速で回りだし、よくわからない嘘が飛び出してきた。


「──へえ、そんな物があったなんて、知らなかったわ」


 …納得した? 意外にちょろい? …まあ、本当に納得したのか、それとも納得したふりをしているのかはわからないが、とにかく俺は話を続ける。


「これが存在を抹消された理由は、人間の歴史を変えかねない力を持ってたからだ」


「へえ、どんな力なの?」


 ラグニアの質問に対し、俺は息を深く吸い込み、意を決したような、深刻そうな顔をして、言った。


「──周囲の人間の加護の力を、自由自在に操れるのさ」


 それを聞いたラグニアは、呆れたように笑う。


「ふふ、笑わせないで。そんな力、あるわけ──」


「アンタ、感じてるんだろ? 俺がこの剣を地面に刺してから、冒険者達の加護が強くなってるのを」


「──っ!!」


 悪魔には加護を感知する力があり、当然彼らの力が強化されてきているのもわかっているはず。まあ本当は俺の加護の効果なのだが、真相を知らなければ剣に特別な力があるようにしか見えないだろう。


「正直これを手放すのはかなりリスキーなんだけどな。でも命には代えられない。アンタも、勇者から聖剣を奪ったとなりゃ、魔王さんも喜ぶだろうよ」


「…‥!!」


 ラグニアの中に、かつてないほどの迷いを感じる。俺は一呼吸置き、再び尋ねる。


「さて、改めて取引だ。──今日のところは、ここまでにしとかないか?」


 悪い条件ではないはずだ。さて、どうする。

 ラグニアは迷ったのちゆっくりと口を開く。


「──やっぱり、ダメよ。今ここでヤっておかないと、あなた、確実に厄介な存在になるもの」


 交渉決裂、ラグニアは再び構えを取る。俺とルゥフは慌てて後ろに飛びのく。


「ああそう、それじゃ──」

 

 次の瞬間、俺の背後、冒険者達から魔力が吹き上がり──


「「「ここで死ね!!」」」


 大量の魔法がラグニアに突き刺さり、爆発した。


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