整備屋のオファー
「はぁ〜〜〜〜〜〜、クソが」
40通を超えてから数えるのを辞めたお祈りメールを閉じる。
ベンチに座る俺は項垂れていた。――整備士になるって決めたのに何してんだ俺。
「プルルルルルル―――」
最近は憂鬱しか運んでこないスマホから久しぶりに音が鳴った。画面には日坂の文字、龍之介は渋々電話に出た。
「久しぶり。1年半ぶりだな、元気してんのか?」
日坂はこちらの気も知らず陽気な挨拶をしてきた。
「当ててみてくれよ」
俺は自嘲気味に答える。
「その様子じゃ、からっきしみたいだな」
感の悪い日坂も今の俺の声色位はわかるみたいだ。
日坂は専門学校時代の友達だ、空気が読めず、ノリで生きているところがあるが明るくていいやつだ。
「聞いたよ、おやじさんが経営してる竜車のディーラーを継いだんだろ?今じゃ社長ってわけだ。」
「見習い社長だがな」
日坂の謙遜ですら今の俺の耳には皮肉に聞こえる。
「それにしても学校卒業してから1年半も何してたんだよ」
「母さんがボケちゃってさ、バイトと介護で忙しかったんだよ。」
「今は?」
「お金が貯まったから施設に入れさせて貰ってる」
「そら大変だったんだな」
そこから近況報告や雑談を行なった。ある程度はなして、そろそろ終わろうかと思い。
「じゃ、俺もそろそろ」
言いかけた時
「あ!ちょっと待ってくれ、本題があるんだ」
今更本題に入るのか、実に日坂らしい。
「お前竜の整備士になりたいんだよな」
整備士―――
30年前この世界に4体の龍が現れた。
それを皮切りに世界中で竜が出現するようになり、それからの数年間、人類は混乱に陥った。
しかし今では竜と人は共存を果たし今では竜は人々の生活に欠かせないものとなっていた。
整備士とは各地域での竜の問題を解決する、言わば竜の便利屋さんだ。
「あぁ、そうだよ。で?お前が俺の仕事を見つけてきてくれんのか?」
性格が悪いと思いながらも就活のイライラをぶつけてしまう。
「まぁ、そう言ってもいいかもな」
「は?」
危うくスマホを落としそうになった。
「な、何言ってんだよお前は竜車屋だろ?」
「最近新しい家に引っ越してさ、前の家が空いてんだよ。そこで個人経営の整備士をするのはどうだ?」
最近は個人経営の整備士もいるらしい、しかし所属していない整備士なんてまともに仕事が来るのだろうか…
「お前はいいのか?家をもらって。」
「面白そ…友達のためを思えば当然だろ?」
こいつは本当に――
だが提案自体はありがたい
「…」
「…」
「はぁ、このまま就活してても仕事につける確証もないしな。」
「わかった、その部屋を貰ってもいいか?」
「もちろん!家賃は破格の月々1万でいいよ!」
「金は取るのか、」
とにかく日坂には感謝しよう。




