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第7話 悪の組織の下っ端には守るものがない

「馬鹿ね……っ!あんたなんて、あっという間に取り込まれて終わりよ!

 体勢を立て直すのが先に決まってるじゃなぁい!?」

「ぐずぐずしてたらあっちだって力つけるっすよ!今なら向こうだって隙があるはず……っ」

「ほんっとに、馬鹿じゃないのぉ……!?しょうがないからっ、心中してあげるわよぉ!」

「うっし!あっ、よしよし、来い!こっちこっちー!クソボスー!」

「はっ、分かりやすい挑発に誰が乗るって言うのよ……」

「……ふんっ、何を企んでいるか知らんが……♪」

「思ってたより馬鹿だったわ」


 途端。がごぉん!と大きな音を立てて、シェルターが閉まっていく。


「しまっーーー……」

「閉まっちゃいましたねぇ」


 下らないダジャレを返して、下卑は、下賤と実験体達数名を通路の一部に誘導、隔離することに成功した。


 実験体達の魔手を潜り抜け、アジトを脱出した闇夜の残党たち。

 皆、下卑に続くように、外道連合本部へと破れかぶれの電撃侵攻を仕掛けていた。


「へへっ、あとはここを行くだけっと!」


 警告音と重苦しい不気味な轟音を立てながら、ルービックキューブの如く組み替えられていく地下通路を、下卑は前のめりに突っ走る。

 まるで坑道のカナリアの如く、初見の罠をひょいひょいと避けながら進んでいく。

 スズメバチから逃げまどい、警官にビビり倒す下卑だが、ここぞという時の逃げ足だけは早い。

 けれど、今回は逃げて避けるだけじゃない。

 確実に、一歩一歩、目的に向かって突き進んでいるのだ。


「ふん、意外とやるじゃなぁい……♡すぐに死ぬかと思ってたわぁ♡」


 暗守はその後ろをつかず離れずついてくる。


「はんっ、死んでたまるかっての!億万長者になって!下賤と札束風呂入るまではよ!」

「やっぱり馬鹿過ぎるからすぐ死にそうね」

「そんなぁ!」






 ガゴンッ!

 重厚な非常扉を爆破し、下卑達はアジトのコア空間へと躍り出た。


「っ……なんだ、これ……」

「……っもぬけの空じゃない……!」


 そう。機械自体はそこにあった。だが、肝心の、思考を司るコアの部分が、何者かに持ち出されていた。

 その瞬間。通信で繋がっていた、闇夜アジト側の通信が途切れる。


『暗守様!駄目です!こっちに、『本体』が―――……!』

『いやぁぁぁあ!!!』


「ちっ……!」

「……暗守サン。ここに、脱出経路、本当にあると思う?」

「あるでしょう!?でなきゃ、なんでこんな……」

「俺は、ない方に賭けたい。だって、ないと確信して、来た道をそのまま戻る俺たちを、隠れ潜んでた外道サンが闇討ちするほうがずっと簡単でしょ?」

「……!じゃ、じゃあ、この通信は!?」

「通信ジャックされてる可能性ありますよね。頭に血、上りすぎっすよ。リラックスリラックス」

「ー……あなたも、あのクソ外道に負けず劣らず苛立たせてくれるじゃなぁい」

「誉め言葉として受け取っておくっすわ」



「……みーっけ」


 下卑の顔に、いつもの薄汚い笑みが戻ったのは、数十分後のこと。


「……っ!」


 ごちゃごちゃした部屋の中に隠れ潜んでいた、本体。細い蜘蛛のような手足が生えている。


「はい、暗守サン。これやるから、下賤を解放してやってくださいよ」


 ぽいっと下卑が暗守にそれを放り投げる。


「……分かったわよぉ」


 暗守が暴れるそれを押さえつけ、カチャカチャと外付けの操作装置を挿し、ハッキングを開始する。


「あっ、通信も再開したっすね!大丈夫っすか!?」

「ひ……下卑……さん……?」

「!?」


 聞こえてきたのは、下賤の声だった。


「ぼ…僕…俺……何を……なんてこと、しちゃ……僕、うう……」

「おいっ、どうした!?この通信装置持ってたやつはどうなったってんだよ!?」

「……うううっ……が、ああああっ!!!」


 ずん、と、重力がかかったような音が向こうから聞こえて―――――――


 そうして、永遠に、静かになってしまった。


「……は……?」

「ちゃんと、解放してあげたわぁ。この世から」

「っ……!てめぇ……っ!」

「手術で言うなら、異常細胞と正常な細胞が完全に癒着しちゃってたようなもの。

 片方を始末するなら、もう片方も、さよなら。

 それしかないのよ。恨まないでよねぇ♡」

「っ……クソッ、くそぉ……っ!!!」


 慟哭する下卑を尻目に、暗守はかつかつと、優雅に立ち去って行った。



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