第2話 悪の組織の下っ端には信用がない
外道連合の本部近くの小さな公園では、平日午後の陽だまりの中、鳩たちがくるっぽーくるっぽーと鳴いている。
俺達は、雑用が一段落した合間に息抜きと称して、固くなったパンを袋に詰めてやってきた。
ベンチに並んで座り、鳩の群れに向かってパンを砕いてはそのくずを撒く。
鳩たちがわらわら寄ってきて、足元でつつき始めるのを見て下卑さんは頬を緩める。
「……へへっ、鳩って俺たちみたいだなァ…誰かが投げたパンくずで喜んで、
必死に食って…浅ましくてもそうやって生きてくしかない」
「……ま~、でも、何匹も一緒に同じ境遇で暮らしてるなら、案外楽しいのかもしれませんよ?俺達みたいに」
そう言うと、下卑さんはこっちを見て、またへへっと笑った。
ホスト崩れの褪せた金髪が午後のお日様に透けて、あったかい空気をまとわせる。
卑屈に、だけど穏やかに笑いあう、大切な時間。
ーそれは、突然崩された。
「おい、そこの二人。ちょっと待て。ここで何してる?」
思わず肩が震えた。鳩が一瞬で飛び立つ。
震えながら顔を上げると、そこには二人の警官。年上と同年代、どっちも嫌な感じの雰囲気をまとわせてる。
「へ、へへっ……ただ……鳩に……餌やってただけっすよォ!可愛いから楽しんでただけっす」
「そ、そっすよ!なんも変なことしてないっす!」
下卑さんに合わせて無害アピール。だけど警官は疑わしそうな目で見てくる。
確かに俺たちは悪の組織だし、そこそこ悪いことの手伝いもしてるけど、今に限ってはマジで何もしてない。
「不審な動きだな。身分証出せ。
最近、この辺で変な薬の取引があったんだよ」
「はぇ!?」
下卑さんは顔を青くして、本当に思い当たる節が無いと慌てるが、俺にはちょっとだけ心当たりがあった。
ー下劣さんか、下衆さんか、下品さんか、外道さんか…上司や先輩の姿が思い浮かぶ。
誰かしら関わっててもおかしくない。
でもそれを言ったら今度こそ放してもらえないだろう、誤魔化すしかない。
取り敢えず、表の生活用の身分証などを出していく。
「名前は? ここに住んでるのか?なんでこんな時間に鳩に餌なんかやってんだ?」
「へ、へへっ……!仕事の息抜きっすよ、上司おっかねーから鳩に癒されたくってェ…」
「そ、そっすよ、フツーのことしてただけです」
中年警官が目を細める。
「二人とも挙動不審だな。ポケットの中見せろ。
薬物持ってないか確認する」
「本当にもってないのにぃ…へへっ、ほら、わかったでしょ?」
「…そうだな、変なものは持ってないようだ。次からは怪しまれるようなことすんなよ」
ようやく若い巡査がカードを返してきた。
「……っはぁあ~…」
思わずベンチに座り込んだ下卑さんの頭に、通りすがりの鳥がぷりっと糞。
「げ、下卑さん…!洗いましょう!」
「へへっ…運がついたかもしんねぇ…競馬でも行くか。下馬評通りに賭けりゃあそこそこ稼げんだろ」
「やめときましょうよ…」
全くしぶとい人だ。
でも、俺も見習いたいと思う。




