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気まぐれ将軍

ケネスぅ。

また考え事してるな。

考えたって出兵は決まったんだから、作戦考えようぜっ!

とその気になって俺・国王軍総大将コールタ・ド・デメチは満面の笑顔で話しかけようとした。

が、悪寒が走ったので止めた。

でも今回は勝算が高い。”皇国の御旗”があるんだぞ。使ったところ見たことないけど。

サクッと勝って帰ってくりゃ俺様英雄で女の子にもてまくりじゃん。

あぁめくるめく夢のハーレム生活が始まるじゃん。

とりあえず笑顔を抑えて真面目な顔にしてから

「決定事項だ。俺たちは従うのみ。」と肩をたたく。

それから歩兵・騎馬隊それぞれの隊長に声をかける。

こいつらは戦闘大好きすぎて会議が終わった今生き生きと復活した瞳で

「我々の真価を皇子の前でお見せいたします!」と張り切っている。

こいつ等健気で上司としてうれしい限り。何よりこいつらと戦えるのを自分が一番楽しみにしている。

さて、そうと決まれば・・・メシだ。祝杯じゃん。

と3人で会議室を後にした。

その様をケネスとその側近2人は恨めしそうな目で見送っていた。

いつもこの3人がメインで事前の情報整理と基本方針の立案を行っているから

何日か参謀室にこもることになる。多分5日間くらい徹夜だと思う。

差し入れくらいはしてあげよう。なんたって俺は今気分が良い。

ケネスの好きなクッキーでも差し入れしてあげようじゃん。


3人で呑みも悪くないんだが、ケネスに怒られそうなので

練兵場に向かった。訓練の視察を行い、戦場を思いながら汗をかく。

と言っても10分くらい、これはケネスへのアリバイ工作である。

訓練は日が暮れるまでみっちりおこなった・・・と練兵記録に記入させておき

あっさり街へ繰り出し、ムフフなお店へ。

部下2人と練兵中だったものの中から前途有望な騎士含めて7人くらいで宴会を始める。

「わっはっはっ、今日は呑めー---そして、戦いに備えるぜっ」上機嫌この上ない。

日が暮れるまでそのままどんちゃん騒ぎ。アリバイ工作はばっちりなのでひたすら騒いだ。


いやーもりあがった。

家路へと急ぐ。実は酒で酔ったためしがない。

呑んでも呑んでも呑まれないが、騒ぐ。それが大将の器のでかさ・・・な訳無いか。

公爵家が見えてきた。実家なんだがおれ専用の馬車はない。3男なんてこんなもんよ。

衛兵が俺に気づいて開門準備をする。

酒場の匂いに気づいたのか、またですかという表情で「おかえりなさいませ」と言われた。

気の合う仲間で呑んでた気分がちょっとそがれたが、それでも

「おう」とだけ言って中に入る。

一応軍属としては出世した訳だがこの家ではそんなコトは関係無い。我が公爵家は内政・外交を司る名門で軍属の俺は脳筋扱いで汚らわしいとすら言われる始末。兄弟は当然そっちの方に進んで親父のご機嫌取りである。俺ともう一人を除いて。

自室に戻って装備を片付けた後酒を抜くためフロに入り貴族らしい服装に変えて厨房へ。いつも通り入り口で「あいつの分はあるか?」と言って粗末な食事を受け取る「あ、今日は俺の分もくれ」

もうひとつ受け取った俺はメイドからワゴンを借りてガラガラ走らせる。着いた先は庭を超えて、今にも崩れそうな窓の無い小屋。相変わらず陰気くさい。


「入るぞー、じゃーん!」という声とノックを同時にして覆っているだけのドアを外す。暗い奥から、「お酒臭い」と明るいツッコミが返ってきた。その頭からは小さなツノが3本出ている。それ以外は何処にでもいる12,3歳のあどけなさが残る少女だ。

この子は公爵家末子・・・なんだが呪われた忌み子だ。公爵家は政敵も多い。この子はそのうらみを一身に背負って生まれた。そして家族の殆どから見捨てられ、存在すら許されない。檻のなかでただ生きているだけだ。親父が殺さないのは母上の面影があるからか、それとも最後の願いだけは叶えてやりたいという慈悲なのか。

「飯、俺もここで食うぞ。」

「その感じじゃ隊長さん達と騒いで宴会してたんでしょ。よく食べられるね。」

「お前は余計な心配すんな。お、今日はじゃがいもにバター乗ってるぞぉ」とテーブルにのせる。

粗末とはいえ厨房のアイツらはこの子の事を考えてバランス良く料理を揃えている。パンをちぎってスープにつけて先に食べ始めた。この食べ方はこの子の好きな食べ方だ。慌てて椅子にやって来ると、

「いただきます」と言って同じくスープをひたしたパンを口に運んだ。「で、演習サボってお酒呑むほど良い事でもあったの?」

相変わらずそういうところはするどい。

「出兵が決まった。今度こそ魔界だ」

忌み子にとっては重い響きなので極力明るく言う。

「心配すんなよ。何もお前のせいじゃねーし。今回は王子様直々のご出陣だから俺は護衛だ。」

「そんな事心配してないし。」とぶっきらぼうに言われた。分かってる。"魔王ならお前の呪いを解ける。"と言って抱きしめてやりたかった。だが、あの超絶我儘で悪名高いバケモノ女王がそんな事してくれるだろうか?

しばらく沈黙が続く。


あの後全く関係ない話をしていたがお互いに上の空だった。食べ終わってワゴンに空の食器を乗せてると

「お土産はお菓子でいいよ。いつものやつ。長期遠征だろうから3箱は欲しいなぁ。それで許してあげる。」今できる精一杯の笑顔で言った。

「おう」しか言えなかった。


いつもは能天気な脳筋きまぐれ将軍だけどここだけは家族を思い、僅かな希望を持つ兄貴でありたい。

そしてこんな家ぶっ壊してやる。だからもう少し待ってろ。



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