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美鈴からのプロポーズ

5月下旬ローズのデビューが6月5日の東京競馬場での新馬戦に決まる


調教師の佐々木さんをはじめ主戦の美鈴さんも調教に力が入る


そんなある日俺は調教が終わり厩舎の馬房に戻ってきたローズを労いながら

いつもの馬体の手入れをする。


ローズに体にどこか異変がないか体調は万全か会話しながら

優しくブラッシングする


「パパ そこ気持ちいい もう少し強めでもいいよ」


馬ではいくら痒いところがあっても

自分でかくこともできない いいとこ砂場に寝転び体をこすりつけるくらい


ローズの場合は俺がいるからこのように痒い所に手が届く


「ここか ここがいいのんか?」


俺はローズの指示した場所である

背中のタテガミをわしゃわしゃするとローズがうっとり顔になる


そんな二人でじゃれあいしていると美鈴さんから声がかかる


「天馬さん愛娘と歓談中のところお邪魔します」


念話でローズと話をしているためほかの人から見た場合は

人間と馬がただじゃれあうようにしか映らない


「いいですよ、ブラッシングしながらでいいなら」


ローズも首を上下に振りながらいいよと答えてくれる


ローズも体が出来上がり2歳牝馬のなかでは1頭だけ3歳馬が混ざっていると

思われるくらい成長している これはローズの成長が早熟だからかもしれないが

2歳馬としては成長が早いほうがレースでは有利で勝てると言われている


ほんと最近のローズは母親のメリーローズに似てきましたね

マスコミが取り上げているのでデビュー前でも

2歳馬では人気実力とも上位とのことです。


「私も若輩者でありながら優秀な先輩を差し置いてローズに騎乗できるのですから

父と天馬さんにほんと感謝しています。」


佐藤美鈴さんも競馬学校を卒業して騎手免許を取得してから

経験と勝利数はベテランの騎手には及ばないがそれでもG1ジョッキーとして

また女性であるためマスコミにも日ごろからよく取り上げられている

いわゆるアイドルでありDRAの広告塔として日々活躍している


「俺としても男性のジョッキーよりもローズに騎乗するのは

  女性のほうが親として安心できます

  これからもよろしくお願いしますよ」


「私としてもこれからもローズの主戦騎手でいたいですね

騎手は馬を選びます。お手付きの馬が同じレースに2頭出走するとき

ジョッキーは勝てる馬を選びます。

馬主さん先生とのしがらみはありますけど競馬関係者なら

誰でも理解していますからね」


「わかります。そういえば気が早い話なんですが、

美鈴さんの将来の夢はなんですか?

こういってはなんですが美鈴さんはなりたかった騎手にもなれて

騎手の目標で夢でもあるG1レースも既に勝っている

となればやはり調教師ですか?」


「その話は、父から聞きましたね?

そうですね、騎手引退後は調教師を目指すつもりです

父も賛成してくれました。牧場のほうは姉が見てくれ

ますから私は幸せ者です」


美鈴さんは優しく微笑みながらローズを撫でる


「夢と言えば、天馬さんは静内に土地を購入して

引退馬の養老牧場を作るのが夢と聞きましたけど」


「ははは、情報源はお父さんですね」


「佐藤さんにはご無理言いましたけど

土地は放牧地を5区画ほど譲り受けて

取得済みです。牧場である以上広い放牧地と厩舎は最低必要ですから

それと余生も静内で過ごすので小さい家も建てないと

いけませんね」


「でも天馬さん購入の費用はどうされたのですか?」


天馬は24歳で今はDRAの職員だが、20歳のころから毎日

競馬場に通い ウマの会話を盗み聞きしたおかげで

負けたことがない DRA職員になってからは

馬券を購入できないが、給料以外にも天馬は馬主からの依頼報酬を

特別にもらえることになっている


美鈴さんはDRA職員の稼ぎだと普通は無理だと

考えているようだが


「まあ、そうですよね 年齢24歳のDRA職員で莫大な土地の購入費用

普通はありえないことですから疑う気持ちも理解できます

これはオフレコでお願いしますけど今の貯金残高は、○○億あります。」


大卒生涯年収の数十倍の金額を言われて驚く美鈴


「え、冗談ですよね いくらなんでもそんな大金 ギャンブルでもしないと

ギャンブル、競馬の勝ち馬投票券… 馬と会話ができる能力」


「天馬さん それはいかさまなのではないのですか?

出走馬が八百長したデキレースですよね」


「美鈴さんそんなに興奮しないでください

競走馬から情報を聞いて馬券購入してはいけないと法律で禁止されていません

それにDRA職員になってからは一度も馬券購入してませんから

正当な財産です」


天馬から真実を聞かされても


「最初から順番が決まっているレースなんて

私たちは何のためにいるのよ…」


落ち込む美鈴を慰めようと


「美鈴さんこの話は佐藤さんと伊藤さんにもお話しましたけど

馬たちが着順を最初から決めて走るレースは

ほとんどありません、馬たちも皆真剣ですからね

順番を決める理由があるときだけです。」


天馬から着順を決めて走るレースはほとんどないと言われて

多少は落ち着いた美鈴さんは着順を決めるレースが知りたくなった


「天馬さんその馬たちが順番を決める理由は何ですか?」


「そうですね、馬により理由もまちまちですが

最優先は、引退レースですね

馬にとって引退後の身の処遇は重要ですからね

美鈴さんもご存じのように繫殖牝馬と特に種牡馬になれる

馬は、競走馬の一割もいません」


美鈴も牧場の娘であるため 内情も知っている

繁殖牝馬は多少融通が利くが種牡馬は生涯成績が

優秀で血統がよくないとなれない

繫殖牝馬より種牡馬になるほうが難しいかもしれない


※芝の適性で距離は長距離よりも短距離やマイルがいい

 スタミナよりスピードを重視されダート馬は種牡馬に

 なれない場合が多い


馬の引退レースであればどの馬でも勝てるわけでもありません

それまでの馬の成績とほかの馬との親密度と友好関係

トレセン仲間とか派閥が存在しますからね


「いくら引退レースだから1着にしてくれと要求しても

普段の行い次第では賛成してもらえませんので

その場合はガチンコ勝負になります。

まあ嫌われてる馬だと最後は馬郡に飲まれその場を

去ることになるでしょう」


「美鈴さんもご存じのように競走馬の世界は

ほんと厳しいですよ、未勝利で終わる馬なんて

中央引退後は地方へ行くか乗馬クラブ行き 悪けりゃ…まあこれは

ローズの前で言いたくないです。

それ以外の道だと競馬場の誘導馬になれる運のいいのがいますけど

性格が大人しく従順じゃないと採用されませんから

プラチナには無理でしたね」


ほんとプラチナは優秀な馬でよかったな人にはあまり

なれないが、馬の世界では親分肌として後輩に

慕われていたからね メリーのような綺麗な

牝馬に好かれていたからなあいつ


「まあ、引退レースが一番重要ですが、それ以外だと

負ければ引退確定レースか賞金額により

クラスが下がる降格を回避するときでしょうか

それもみな馬たちの会議で決められますから

毎回優先されて1着もらえるわけではないですから

忘れないでくださいよ、」



「最後にもう一度いいますが、レースでの騎手の役目は重要です。

優秀な騎手がいないとレースはできませんよ

だから俺は美鈴さんを信頼しています

どうかローズを勝たせてください 貴方のその力で」



「天馬さん ありがとうございます 私少し自信を失うところでした

レースで騎乗している馬が勝つのは私の努力ではなく

最初からデキレースではなかったのではないかと

それでは馬に失礼ですよね

あんなにみんな頑張って走るのに」


その話を聞いていたローズが俺に


『今年デビューするみんなは自分が一番だと信じているよ

誰もが頂点を目指して走るんだよ

ローズも頑張って練習したからね

パパとママのためにローズ走る』


ローズから聞いた念話を美鈴さんに聞かせると

美鈴さんは、


「そうよね、誰もがみな 真剣に走っているのね

自分を信じて頂点を目指す

騎手も馬たちも考えは同じ頂点を目指す」



「それでね、天馬さん 私が騎手を引退したら厩務員として

天馬さんの牧場で雇ってくれませんか」


「天馬さんといっしょに引退馬と仲良く暮らして年を重ね

老後も天馬さんと二人なら楽しくなりそうです

それに調教師を目指すよりわたしには向いているような

気がします」



美鈴さんとはトレセンで出会ったばかりだが、この短期間で

天馬は美鈴さんに惹かれていた

どうやら美鈴さんも同じだったようで、どちらかといえば

美鈴さんのほうが、押しているかな


覚悟を決めた天馬



「美鈴さんが宜しければ喜んで引き受けますよ

 俺に美鈴さんの生活の面倒も見させてください」


なんか2人の会話がプロポーズにしか聞こえない



「これで、私の未来は安泰ですね

これからも私のことよろしくお願いします

私の愛しの旦那様」



ローズのデビュー前に俺は将来の伴侶も手に入れた

美鈴さんは俺の婚約者になりました。


これで佐藤さんは俺の未来のお義父さんになる


「パパ パパまた浮気なの ママ 可哀そうなの」


メリーは馬で一番好き 人間で好きなのは美鈴だと

ローズに説明するとローズは


「じゃあ私は2番目でいいから

ママの次でいいから愛してね」


年頃の娘が使う言葉じゃありませんよ






天馬の引退馬繋養牧場を作るという話に共感を覚えた

美鈴は思わず 天馬に告白してしまいましたね

父親として佐藤さんはどうお考えなんでしょう?

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