84話 騎士団
遅くなってすいません!
「うん?どうかしたかい?」
俺の突然の叫び声にロディオータは首を傾げて見てきた。
俺は慌てて自分の口を塞いでなんでもないですよと念を送りながら首を振った。
ロディオータはあまり気にすることもなく、ギルマスが話しかけてきてのでそちらを向いて話し出した。
「おい、どうしたんだ?アホみたいな声だして。」
横にいたグランが小声で聞いてきた。
「ロディオータってどっかで聞いたことあるなって思ったら、エティーの好きな人だ。」
「は!?・・・つーか、お前あのお嬢とそんなこと話すくらい仲良かったのかよ。」
「うん。一緒に依頼もやったことあるし、レベルC試験で一緒だったし。」
「ふうん・・・。あのお嬢がねえ・・・。」
どうやらグランはエティーの評判(依頼の横取りしたりすること)は知ってるみたいだけど関わったことがないみたいだ。
ちょっとハンターのルールは無視するけど悪い子ではないんだけどなあ。
マンティコアに殺された女性のために泣けるくらいいい子だし。
・・・うん?
ロディオータの背中辺りがなんか気になる。
なんか、よくわかんないけどロディオータの背中に背負ってる長い剣が気になる。
ロディオータはこっちに正面を向いているから剣全体は見えないけど・・・あれ、多分魔剣だな。
しかも・・・クープーデンが乗ってた魔道具「天吹嵐珠」と似てる気がする・・・。
「グラン、ロディオータの持ってる剣って魔剣なんだな。」
「おう。あいつは若いのにめちゃくちゃ剣術に優れていて火魔法も得意で【神の火を持つ者】って言われてるからな。あの魔剣は「天照炎剣」といって、その証みたいなもんだ。」
【神の火を持つ者】か。
確かエティーにも前にそう教えられたような気がする。
んで、クープーデンも【神の風を持つ者】と言われてるって言ってたっけ。
異名を持つくらいだからすげえ強いってことだろうな。
まあ、20代で騎士団長やってるなら強いか。
そんなことをこそこそしゃべっていると、ロディオータはギルマスと話が終わったようだ。
「あ、騎士団長殿。一応紹介しときます。」
ギルマスはそう言って俺を指差した。
「こいつがマンティコアを倒したレベルCのイオリです。」
その瞬間、ロディオータだけでなく待機していた騎士たちや馬に乗った騎士たちや馬までもが俺に視線を向けてきた。
なぜに馬まで!?
一身に視線を浴びてひえっと思っていると・・・。
「「「あはははははは!!」」」
騎士たちがどっと笑いだした。
ロディオータはほうっという興味があるような視線だけだが、ロディオータ以外の騎士は腹を抱えて笑っている者までいる。
え?俺ってそんな笑いを誘う見た目だったか?
首を傾げる俺に対してギルマスやグランや他のハンターたちはますますイラついた目付きになっている。
「くくく・・・、ギルマスともあろう方がそんなご冗談を言うなんて。」
ロディオータの斜め後にいた騎士がそう言ってきた。
50代くらいの灰色の髪を後ろに撫で付け灰色のチョビヒゲの鋭い目つきのおっさんで、ロディオータの後ろからずっと見下すような目を向けていた騎士だ。
「副団長殿、冗談ではないのですが。」
ギルマスが口元をひくつかせて言ったが、副団長と言われた男は鼻で笑った。
「こんな青臭い子供がマンティコアを?ギルマスは嘘がお好きなようだ。」
わー、嫌な言い方!
そうか、この副団長というのがギルマスが言ってたアレか。
もうこの発言と態度でわかったよ。
相当プライドがアレでらっしゃるようだ。
「そもそも、本当に倒したのはマンティコアだったのですか?マンティコアに似た魔物では?」
「確かにマンティコアでしたし、体毛と牙をギルド本部に送りましたが、本物と証明されました。倒したのは現場に自分もいましたし、他に目撃者も多数います。」
「その目撃者は全員がハンターでは?全員がハンターなのでしたら怪しいもんですな。目撃情報を操作できますからな?」
「は!?そんなことはしていません!」
「ハンターというのはそうやって短絡的で野蛮で敵いませんな。そうやって大きな声で町民を怖がらせているのでしょう?」
ギルマスは歯を食いしばって副団長を睨んでいた。
するとたむろしていた騎士たちも次々となんか言っていた。
「あんな細腕のガキにマンティコアは絶対に無理だろ?」
「ハンターズギルドってすげえな。ああやってマンティコア倒したことにして、功績上げてんだ。」
「そんなにまでして町の信頼ほしいかね?」
「まあ、俺たち騎士と違って後ろ楯がないからな。誰も後ろ楯にならないらしいぜ。」
「まあ、あんな野蛮で怪しい組織なんて誰も後ろ楯になりたかないもんな。」
「ヒヒヒーン」
なぜ馬まで加わっている!?
騎士とハンターは仲が悪い悪いとは思ってたけど、さすがに偏見がすごい。
嘘つきガキ呼ばわりされてちょっとむっとするけど、むしろ偏見がすごすぎて逆に冷静になった。
ここまでハンターのこと言われたらそんなことないぞと言いたいけど、言ったところでそれ以上の言葉が続かないと頭が判断して反論しないでいた。
つーか、隣のグランがブチギレの顔しててそれ見て冷静になったというか。
ゆら・・・とグランが武器を持って騎士たちを殺りに行こうとしていたので、慌てて止めようとしたら【武術超越】が発動してゆっくりになったので腰にグーパンした。
グランはハッとして俺を見てきて、発動が解けた俺はダメ!って顔をしたらすごすごと武器をおさめてた。
なんだよグラン・・・普段クール系ツッコミ担当なのに怒ってさ。
短気な気がしてたけど、やっぱり短気だった・・・。
あ、どうやらオレがグーパンで止めてたのは俺の行動が早すぎて他の皆は気付いてなかったのに、ロディオータは気付いたみたいで興味深い視線を俺に向けてきた。
あ、そんなことより。
グランよりめっちゃ怒ってるのがいる。
『イオリのことバカにしてた~・・・。』
『嘘つき呼ばわりはいかんのう。誠にいかんのう・・・。』
騎士たちの後ろの木がメキメキ音を立てて形を変えて串刺しにしようと枝が伸びだして、異常なくらい真っ黒な雲が空を覆ってきた。
あ、あかーーーん!!
穏やかそうな木の精霊と雲の精霊が笑顔で怒っている感覚がひしひしと伝わってくる!
「な、なんだ!?急に雨雲が・・・。」
「わっ!?尖った枝がこっちに向かってくる!?まさかトレントか!?」
それからは騎士たちが慌ててメキメキ蠢く木をトレントと勘違いして切り倒していて、そうしていたら今度は雷雨が降ってきた。
皆アワアワと木の下に避難していたけど、よく見たら騎士たちが避難していたところだけ特によく雷が落ちてたような気がする。
俺は木の下に避難しつつ、ちょっと他のハンターたちと離れて小声で精霊に話しかけた。
「ちょっと木の精霊と雲の精霊!機嫌治してよ!このままじゃあ森林伐採が続いて天変地異が起きて「魔物の大群」どころじゃなくなるから。」
『え~、だってあの人間たちイオリの悪口言ってたよ~。』
「俺は全然気にしてないから大丈夫だよ。なんか俺、ああいうの逆に冷静になるんだよ。他人事に聞こえるというか。」
『本当に大丈夫なんじゃな?』
「うん。せっかく怒ってくれたのにごめんな。ありがとう。」
そうしたらメキメキいってた木は元に戻って、雷雨は止んで真っ黒な雲はさーっとどっかに行ってしまった。
「ふう。急にトレント来たり天気が悪くなったり、これも「魔物の大群」の前兆現象なんだろうか?」
「こんな事例は聞いたことないですが・・・もしかしたらそうかもしれませんね。そうでなければトレントとか雷雨とか急すぎてあり得ませんから。」
ロディオータとギルマスは冷静に分析していたが、違うんだよな。
すいませんね、俺の連れていた精霊のせいです。
「魔物の大群」関係ないです。
「・・・おいイオリ、もしかして。」
グランはピンときたみたいで俺は曖昧に笑ってごまかした。




