75話 召喚
「まず、僕の調べたことなんだけど。」
そう言ってアルが1冊の本を出してきた。
アルは俺が魔法を使った時に出た魔法陣の読めない文字について調べてきてくれたんだよな、確か。
アルの出した本は、茶色で金色の装飾の施されたちょっと古くさい感じの薄い本だった。
「これは言語の研究者が書いた本なんだ。僕は前に、魔法の名前の言語について調べたことがあってね。その時にこの本を読んだことがあったんだよ。」
「魔法の名前の言語って?」
「例えば火魔法のファイアだったら、どうしてファイアという名前なのかとか思ったりしてね。この世界の言語は一種類しかないのにファイアなんて言葉は火魔法でしか使わないから、もしかしたら昔は他の言語が存在して、その言語の影響でファイアと名前がついたのではないか、と調べたりしてたわけさ。まあ、調べた結果としては、わからず仕舞いだったけどね。」
俺がこの世界で聞いてる言語としては、普通の会話は日本語で魔法名は英語になってるから別の言語だと俺はわかる。
アルたちにもどうやら別の言語として魔法名は聞こえてんのか。
つうかそんなの調べたことあんのかよ。
アルってホント魔法オタクなんだなあ・・・。
「まあ、それはさておき。この本はこの世界の言語について書いてるものなんだよ。もっとも、この世界の言語は一種類しかないから、書くことは多くなくてこんなに薄いんだけどね。でもこの中に"読もうとしても読めない文字"についてちらっと書かれていてね。・・・・えっと、あ、ここだ。」
アルはパラパラとページをめくって見せてくれた。
この世界には読もうとしても読めない文字が存在する。
読もうと目を凝らしてみてもぼやけて読めないのである。
こういった文字は神に関係する品に書かれていることが多く、"神の文字"ではないかといわれている。
また、天界の神は強力な魔力を有するために神が魔法を使うときは神独自の魔方陣を使うという。
その魔方陣は太陽のような絵に周りを読めない文字が囲んでいるという。
「か、神の文字・・・?それに魔方陣って、これ・・・。」
「うん。イオリの魔方陣と似てるように思う。神様の魔方陣は太陽に周りを読めない文字が囲んでいるらしいけど、イオリは太陽と月が真ん中にあって、その周りを読めない文字が囲んでいると、月以外は同じ特徴だ。」
「つまり、イオリは・・・神様?」
ローエは信じられないという顔で俺を見てきた。
俺も信じられないわ!
「うええぇっ!?ちょっと待って!俺、異世界人で向こうではごく普通の一般人だぞ!?神様なわけないって!」
「だが魔方陣の特徴が似てるだろ。イコールにするのは月がなぜあるのかわからないから難しいがな。・・・もしかしたら、お前がこの世界に来たのは神様が関係していて、その影響の可能性もあるんじゃないか?」
な、なるほど。
俺が神様の可能性よりそっちの方が可能性ありそうじゃん。
あ、そういえば・・・。
「・・・もしかしたらその可能性あるかも。」
俺はポツリと呟いた。
確か俺は人間界に来る前に狭間の世界に1度行ってるらしいが、俺はその時の記憶がないんだった。
狭間の世界は神様と人間が会う時に使われる空間でもあると、前に空間の精霊が言ってたから、人間界に来る前に狭間の世界で神様に会ってるかもしれない。
その可能性を話したら、3人とも賛同してくれた。
「・・・でも、申し訳ないけど僕がわかったのはそこまで。神の文字の解読法とかはその後、いくら調べても出てこなかった。」
「そうか・・・。ありがとうアル。わざわざ調べてくれて。」
「ううん、どういたしまして。」
「次に俺なんだが・・・。」
グランは確か、俺がこの世界に来た謎について独自に調べると言ってくれてたが・・・。
「まあ、端的に言うと・・・お前はこの世界に召喚魔法で来たんじゃないかと思う。」
「え?召喚魔法で?・・・え、でもでも、図書館で調べたら召喚魔法はこの世界の中でしか使えないから、異世界から召喚する魔法はないって、書いてたよ?」
「そこは俺もそう思った。だが、情報屋が勿体ぶって教えてくれたよ。"召喚魔法はこの世界の中でしか使えない"という常識が昔から魔法使いたちの間ではあるんだと。」
へえ、そんな常識があるんだ。
・・・うん?
「え、ちょっと待って。なんでそんなの常識になってんの?そんなに召喚魔法って魔法使いの中ではポピュラーな魔法なの?」
俺の知り合ったハンターの魔法使いは誰も召喚魔法なんて使ってなかったはず。
「いや。城に勤めるようなすごい魔法使いくらいしか使えないレアな魔法だ。」
だったらおかしいよね。
そんな珍しい魔法なら知れ渡るほど常識にならないはずだし、誰もが知ってる常識にする必要もない。
「しかも・・・この世界の中でしか使えないって・・・他の世界があることがわかってないとこの言葉にはならないよね?」
グランは頷いた。
「そうだ。そして、昔からそう言われてきたということは、その前の大昔は?」
俺とアルとローエは目を見開いた。
アルが素早く考えたようで、口を開く。
「それは図書館の本と辻褄が合うかもしれないね。図書館の本はだいたい500年前後の本までしかないはずだ。つまり、500年より前の大昔の召喚魔法についての本を調べてみたら、もしかしたら異世界からの召喚魔法について書かれているかもしれないということだ。」
大昔の本か・・・!
「あ、でも、そんな大昔の本なんてどこにあるんだ?図書館にないなら?」
「城の図書館に行ったらあるかもしれないね。」
へえ、あの城の中に図書館があんのか。
遠くからしか見たことないけど、かなりでかいもんなあ。
テレビだったら東京ドーム○個分とか言われそうなくらいでかいもんな。
東京ドームがどんだけでかいかわからないからいまいちピンとこない、で有名な表現方法だけどね。
でもあんだけでかけりゃ、そりゃ図書館くらいありそうだ。
「んじゃあ、その図書館に行ったらなにかわかるかもってことか?」
「そう・・・なんだけど・・・。」
アルはなんだか苦い顔をした。
「本の中には貴重なものもあるってことで図書館に入るには許可がいるんだよ。しかもそれとは別に、城自体に出入りするにも許可がいるんだ。どうしても防犯のためにね。」
ええっ、許可が2つもかよー・・・。
「図書館に入る許可は王族か高い役職の者の許可がないといけないし、城に出入りするには事前の申請をしないといけないんだよ。特に図書館の許可は本当に難しいんだよ。」
それだけ貴重な本があるってことか。
だったらなおさら行って調べてみたいなあ。
「うーん・・・、あ。」
しばらく考えごとをしていたローエが声をあげた。
「もし城に出入りできたなら・・・、あの方にお会いして訳を話したらもしかしたら図書館の許可をしてくれるんじゃない?」
「ああ・・・そうか、あの人ならいけるかもしれないな。」
「うん、そうだね。」
ローエの提案にグランとアルはピンときたみたいでコクコクと頷いている。
「あの方?え、誰?」
「ローワン王国の国王直属で、世界最強の魔法使いクープーデン様よ。」
世界最強の魔法使い!?
なにそれ強そう!
クープーデン?なんかその名前どっかで見た気がするなあ?
・・・まあ、結構前な気がするからいいや。
俺が誰それ?と首を傾げていると、アルが教えてくれた。
「数百年生きてるっていう魔法使い様で、世界一の魔力と世界一の魔法知識を持つという方だよ。この国の国王直属の魔法使い様で【神の風を持つ者】という特別な称号を持つ、魔法使いなら誰もが憧れる存在さ。」
【神の風を持つ者】?
・・・あ、それって前にエティーに聞いた、優れた能力を持つ人たちのことをそう呼ぶんだよな?
確かエティーが好きな・・・ナンチャラ様もそれだったような。
「そのクープーデン様にイオリのことを話したら多分・・・というか絶対興味を持つと思うのよ。なんたって世界一の魔法知識を持ってると言われてるんだし。もしかしたら助言もしてくださるかもしれないわ。」
なるほど!世界一の魔法知識を持ってるから、もしかしたら召喚魔法についても知ってるかもしれないしもし知らないとしても図書館の許可をくれるかもしれないってわけか。
「わかった。とりあえずそのクープーデンって人に会って話して、わからないなら図書館の許可もらって調べると。」
「そうそう。でも、問題は・・・城の出入りの許可ね。防犯面が強いからイオリがハンターというのだけでも入れてくれないかも。」
それくらい厳しいのか?
ゲームならあっさり入れてくれるんだけどなあ・・・。
ううむと皆が考え込んだ。
「うーん、どうするかな・・・?城に知り合いでもいたらな。」
グランがそう、呟いた。
知り合い・・・
・・・・・・あ!!
「知り合いいる!!!」
俺はリンクして、荷物からブレスレットを出した。
名前だけ出たりしていたクープーデンとやっともうすぐ会えます。




