72話 やらかしたかな?
ノヴェーラに帰って来た俺たちはウルーノさんの店に馬車の荷物を運び込んで、ウルーノさんとはそこで別れてハンターズギルドに移動して完了報告をして報酬をもらった。
「道中お前のおかげでサクサク魔物は倒せたし飯にも困らなかった。また機会があったら一緒に依頼をやろうぜ。」
「とても楽しかったぜイオリ!今度なんか食べに行こう!」
「絶対行きましょうね!」
3人はそう言ってくれて、俺もお礼を言ってギルドの前で解散した。
俺としても3人もウルーノさんもいい人だったし道中のおしゃべりは楽しかったし、ずっと笑顔でいた気がする。
個人的にもハインツの町は面白かったし金をとって儲けたし「契約」して収納は無限になったし。
護衛やってこうやって集団で移動して、色んな町に行ってみるのもいいかもなあって思えたんだよね。
さて、そろそろ夕方かなって時間帯だし、孤児院に帰ろっと!
皆どうしてたかなあー。
お土産買ってきたから喜んでくれるかなあ?へへへっ
俺はルンルン気分で孤児院に帰った。
「たっだいま~!」
玄関を開けてそう叫んで広間のドアを開けると、子供たちが突撃してきた。
「あ、イオリが帰ってきた!」
「おかえりー!」
「おかえりなさい。」
珍しくアンまで駆け寄ってくるなんて!3人ともかわいいぜ!
「へへへっ!ただいま!元気してたか?これお土産。」
そう言ってマジックバッグからリンクで3人にそれぞれお土産を出して渡した。
ロックには革でできたサッカーボールっぽいボールを、インカには熊の魔物っぽいぬいぐるみを、アンには挿し絵がたくさんの本を買ってみたのだ。
「すげえ!ボンボン跳ねておもしれえ!」
「熊の表情がニヒルでかわいいー!」
「世界各地の昔話がいっぱい・・・!」
皆気に入ってくれたようだ。
子供たちがそれぞれ夢中になっていると、ローエがキッチンから顔を覗かせた。
「あ、おかえりなさいイオリ。あら、子供たちにお土産買ってきてくれたの?」
「ただいまー。ハインツの町って色々売っててつい買ってきちゃった。ローエにもお土産、はいこれ。」
そう言って俺は巨大な塊肉を出した。
マジックバッグの幅ギリギリの大きさで、8キロくらいのでかさだ。
「ええぇぇっ!?ど、どうしたのそんな大きなお肉!?」
「実はハインツの町から帰ってくる道中ででっかい牛の魔物と戦ってさ。」
それはハインツの町を出て2日目のこと。
夜の見張りを交代でしていて、俺の番の時に精霊が急に話しかけてきた。
『イオリ、魔物がこっちに向かって来てるよ。』
それで精霊があっちから来ると方向を教えてくれてしばらく待ってると、体長2メートルくらいの水牛みたいなでっかい角の牛が現れた。
「モオォォッ!」
牛は夜中だっていうのに俺を見つけるなり興奮して声をあげた。
鼻息を荒く角を向けて突進してきたが、俺は【武術超越】が発動して余裕で避けた。
「牛なら夜寝てなさい!」
俺は魔剣を抜いてそんな決めゼリフ?を言いながらさっさと首を切り落とした。
「ど、どうしたイオリ!?・・・うおっ!?こりゃワイルドバッファローじゃねえか!?」
戦闘音を聞いてレイドが慌ててテントから出てきて、目の前で首を切り落として死んでる魔物を見てそう言った。
「人間を見ると突進する牛の魔物でな、肉がめちゃくちゃうまいんだよ。」
「―――・・・ということで、その後ハンター仲間のレイドが剥ぎ取りして、いっぱい肉がとれたんだよ。これ以外は依頼人のウルーノさんが欲しそうにしてたから売ったんだよ。これだけあればしばらく大丈夫かな?」
「だ、大丈夫どころか!ありがとうイオリ!!これでしばらくはお肉に困らないわね。あ、でも皆で食べるには大量過ぎるからすぐ使わないと痛んじゃうわね。」
「あ、その心配はいらないよ。いるとき俺に言ってくれたら出すからさ。」
「え?痛む心配いらないの?それに出す?」
「まあ、詳しくは後で話すよ。・・・ところでグランは?」
俺はそう言いながら肉をバッグに戻してキョロキョロした。
「グランは今日の昼に緊急の依頼を受けたみたいで、北の山に行ってるみたいよ。もうそろそろ帰ってくると思うけど・・・。」
「へえ、緊急の依頼?」
「なんでも北の山にレベルBの魔物が出たそうなの。その討伐依頼みたいで、グランの他に何人かのハンターが向かったみたいよ。レベルBの魔物を倒すのと、周辺にまだ他の魔物がいないか捜索しに行ったそうよ。」
ふうん・・・。
そういえば試験があったのもマンティコアがいたのも北の山だったな。
あの山は強い魔物が出たことがないって誰かが言ってたが、また出たのか。
どうしたんだろう?なにか天変地異の前触れかなあ?
それから部屋に荷物を置いて、子供たちに護衛をしてきた話をしていたら、グランが帰ってきた。
「ふぅ・・・、ただいま。お、イオリ帰ってきたのか。」
「おかえりーグラン。」
「「「おかえりグラン兄ちゃん!」」」
グランは疲れた様子で空いている椅子にどかりと座った。
俺たちの声を聞いてローエがキッチンから出てきた。
「おかえりなさいグラン、なんか食べる?」
「ああ、軽くなんかあるか?」
「すぐ出すわね。」
ローエはそう言ってすぐさまパンとスープを出してきた。
「疲れてるね。緊急の依頼行ってたみたいだけど、強かったんか?」
「まあ、そこそこってとこだったな。だが他に高レベルの魔物がいないか山全体を探索し回ったからそれで疲れたんだ。・・・まったく、騎士がいたのにあいつら全然動かねえし・・・。」
うん?騎士?
「騎士って?」
「なんか知らんが、先々週ぐらいから北の山を警備してんだってよ。ほら、お前が北の山でマンティコア倒しただろ?北の山はすぐ南にローワン城があるってんでもし魔物が城に来たら大変だってことで、それで騎士が北の山に広範囲に広がって警備してんだと。」
「え、だったらレベルBの魔物が出たら、その騎士たちが対応するんじゃねえの?なんでハンターズギルドに緊急の依頼が?」
途端にグランが苦い顔をした。
「騎士副団長が「レベルBごとき、我が騎士団で対応する価値もない。荒くれどもが相手しろ」と言ったらしい。それで騎士たちは見て見ぬフリだ。俺たちのレベルBとCの数人で倒したが、その後の念のための見回りも騎士たちはなんもせずにトランプしてた。」
ええっ!?
それってもしかして・・・。
「もしかしてさあ・・・。騎士団って、ハンターのことあんまりよく思ってないのか?」
「ああ。まったくもって俺たちのことは認められてない。元々ハンターは数十年前まで荒くれ集団って思われてた歴史があって、それが各国の騎士団ではいまだに残ってんだ。ハンターが生まれる前まで、困り事は全部騎士団がやってて絶大な信頼と人気とそれなりの地位があったんだが、ハンターができてからは騎士団より手軽に頼れるってことで、信頼と人気のほとんどはハンターに行っちまって、騎士団としては横取りされたと思われてるみたいでな。それで今でも睨まれてんだよ。」
うわあ・・・。
ハンターを荒くれどもってラノベでよくある、騎士のプライドで冒険者は認めませんって奴じゃん。だっさ!
騎士もそうだけど、特に副団長って人はそんなダサい人なんだあ。
そんなダサい人には会いたくないな。
「まあ、騎士のやつらの話はどうでもいい。そんなことより、護衛はどうだったんだ?ちゃんとできたんだろうな?」
「おう!ちゃんとできたよ。一緒に護衛したハンターたちも依頼人の商人もいい人たちでさあ。」
するとすかさずロックが声をあげた。
「グラン兄ちゃん、イオリすごいんだよ!金脈掘り当てていっぱい金をとったんだって!」
「は?」
次にインカが声をあげた。
「それ売ったお金で35万G分大人買いしたんですって!」
「はあ?」
そして大人しいアンが珍しく声をあげた。
「精霊と話して無限に荷物が持てるようになったって。」
「はああ??」
グランが帰ってくる間にぜーんぶ子供たちに話しちゃいました。
だって子供たちがすごいすごいとキラキラした目で言って来てくれて調子に乗ってさあ。はははっ
「・・・イオリ、後で詳しく話せよ。・・・まったく、お前はやっぱりなんかやらかしたな?」
グランは頭を抱えていた。




