67話 突然の出会い
「あばばばば・・・!!嘘だろ!?な、で!こここここ!?」
(訳:あばばばば・・・!!嘘だろ!?なんでこんなところに米味噌醤油があんの!?ここファンタジーの世界だよね!?俺の目がおかしくなったのか!?「真眼」し過ぎて幻覚が見えたのか!?)
「どうしたの!?イオリ!?」
「イオリが発狂した!?」
双子が俺の突然のパニックに頭がおかしくなったと狼狽えて、レイドはなんだコイツみたいな目で見てきて、ウルーノさんは驚き過ぎて声も出してなかった。
でもごめんね!それどころじゃないんだよ!!
なーんでこんなところに米・味噌・醤油があんの!?
俺は皆の視線を無視して慌てて店頭に置かれてある3つにかけよって中身をじっくりと確認した。
米は確かにどこからどう見ても生米で、しかも精米されている状態で大きな袋に入っている。
ざっと10キロ以上はありそうだ。
味噌は臭いを嗅いでみたが、確かに味噌で茶色で赤みがかかった一般的な味噌だ。
それが壺に入ってて中身は3キロくらい入ってそうだ。
そして醤油は瓶詰めされていてさすがに開けて臭いを嗅ぐことはしなかったが、色的にも醤油っぽい。
細長い透明の瓶に入っていて中身だけでも2リットルはありそうだ。
「う、嘘だろ・・・!?米・味噌・醤油がある・・・!!」
「おや?イオリはコメ・ミソ・ショーユを知っているのですかな?」
俺の呟きにウルーノさんが反応した。
「これらを知ってるとは、イオリはなかなか通ですなあ。コメ・ミソ・ショーユはこの国から1番遠い国ツインクゥの特産品なんですよ。」
「えっ!?ツ、ツインクゥ?」
これらが特産品の国があるのか!?
ツインクゥって聞いたことない。というか、これらは日本のじゃないのか?
ツインクゥの名を聞いて双子が反応した。
「ツインクゥって聞いたことある。結構独自の文化が根付いてる国で、食文化もだいぶ違うって。」
「ブシという特殊な職業の人たちがいて、刀で戦うって噂も聞いたことあるわ。刀はすごく切れ味がいいって評判になって今ではどこの武器屋でも作られてるわ。ノヴェーラの武器屋でもちょこちょこ売ってるわよ。」
なんですと!?知らなかった!
武器屋巡ったりしたことあるのに全然気付かなかった・・・。
しかしながら米たちに武士に刀・・・。
明らかに日本の、しかも江戸時代を連想できるんだが・・・。
だがここは異世界のはず。
日本と関係ない・・・はずなのになぜ似たものがあるんだ・・・?
・・・はっ!
やっと落ち着いたぞ!
「す、すいませんウルーノさん。レイドやアルスにルナも、急に取り乱してごめん。ちょっと思ってもみなかったものがあったから。」
「イオリはこれらを知ってるの?」
「え、ああ、うん。小さい頃によく食べてて、美味しかったから覚えてたんだよねー。」
小さい頃によく食べてたのは本当だ。
両親が洋食好きで家ではそこまで和食は食べなかったが、外食した時やじいさんばあさんちは和食が必ず出てたからね。
「小さい頃に食べていたとはかなりの食通のご両親ですなあ。実は私もこれらは好きなんですよ。」
まさか異世界に来て和食好きに出会うとは!?
「なのでここでいつもいくつかを買っていくんですよ。ローワン王国はツインクゥと地理的に1番離れてますから、輸入されるのも月に1回あるかどうかなんですよ。ただ、これらを知らない方が多いのでなかなか売れないのですがねえ。」
ま、まあ、この国は完全に洋食だからなあ。
どうしても得体の知れないものと思われるのかもしれない。
「だ、だったら!俺買います!全部!」
「えっ!?ぜ、全部ですか!?結構な額しますよ?」
しまった!!
俺あんまりお金持ってなかった!!
「い、いくらするんです?」
「この大きさでしたら・・・コメは10万G、ミソは5万G、ショーユは5万G、合計20万Gってとこでしょうなあ。」
ギャフン!!
高い!高過ぎる!!
それからその雑貨問屋に入ってみるとあるわあるわ和食関係のものが!
煮干し・昆布・みりん・料理酒・酢などなど。
調味料だけでなく、食器やお箸なんかもあったりなんかした。
や、ヤバい!全部揃えたい!!
だが値段は全部高くて総合計で40万Gを越えていた・・・。
どうやら国同士が1番離れているからか、貴重ってことで値段もつり上がっているってことか。
くそぅっ!無理だ・・・俺には高過ぎる・・・。
ウルーノさんがちょこちょこ買い付けている横で俺は落胆していた。
そして買い付けは終わって、明後日の朝まで解散となった。
双子は早速海にまっしぐらでレイドはブラブラしながら買い物するとか言ってどっか行ってしまい、ウルーノさんは知り合いに会いに行くと去っていった。
俺はとぼとぼとなんとなく肩を落として歩いてあてもなくさ迷っている。
『おいおい!しっかりしろよイオリ!あれらは高いけどほしいんじゃねえのか!?借金してでも買っちまえよ!』
なんて乱暴な提案でしょう?
「俺、借金はしない主義なんで。」
『そうは言っても明後日の朝にはこの町を出んだろ!?だったらそれまでに稼げる仕事を探すしかねえな!』
「なんだよそんな高額の仕事なんてあんの?臓器とか売るとかではなく。」
『人間の臓器売ってどうすんだよ!?』
あ、この世界には臓器売買はないようですね。
移植がないからないか。
「まあ、こっちのこと。はあーっ、どうすっかなあ・・・。」
とぼとぼ・・・。
おや?
こんなところにハンターズギルドが。
そういやあ全世界にあるらしいもんな。
ここの町にあってもおかしくないのかあ。
俺はなんとなく、ギルドに行ってみた。
ノヴェーラの町のハンターズギルドよりこじんまりしていて、簡素な待合所に簡素なカウンターが2席あって、壁には掲示板があった。
昼頃なのでハンターたちはほとんどいなくて、カウンターの受付の職員も欠伸をするほど暇なようだ。
掲示板には何枚か依頼書が張られていたが、やはりノヴェーラの町と違って依頼書は多くない。
何気なく見てみた掲示板に、衝撃的な依頼があった。
「レベル不問:金鉱山鉱夫を随時募集!」
近くの金鉱山で金を採掘する依頼だ。期間は不問。
採掘用の道具は1日500Gでレンタルでき、掘った金は採掘用マジックバッグに入れてギルドのカウンターに持ってったら、中身の金によってお金がもらえるということだ。
相場としては、純金は1gあたり5000G、まざりものの金は1gあたり1000Gで取引しているそうだ。
そしてこれまでの最高は1日で純金50gにまざりもの50gで合計30万Gなんだと!
頑張ったら30万G狙えるかもしれないってことだ!
それだけあれば米味噌醤油だけじゃなく煮干しや昆布も買えるぞ!!
すげえいい依頼じゃねえか!
俺は喜び勇んで依頼書を受付に持っていった。
「あ、この依頼受けるんですね。ありがとうございます。・・・見たところ、この町のハンターではありませんか?」
受付の若い男性職員はにこやかに受け取ってそう聞いてきた。
「あ、はい。そうなんす。よくわかりましたね。」
「だいたいが顔馴染みのハンターばかりなんです。この町は貿易で栄えてますから、そういった関係の仕事が人気でハンターや鉱夫になりたい人が少ないもんですから。」
そう言いながら男性職員は依頼の受付作業をスラスラやっていた。
「この、近くの金鉱山ってどこにあるんです?結構でかい鉱山なんすか?」
「あれ?知りません?この町の金鉱山は結構有名なんだけどなあ。町の東側出入り口から出てもらったら案内の看板があるんでその通りに行ってもらったらありますよ。ここから歩いて15分ほどで着くと思います。はい、受領しましたので採掘用のマジックバッグお渡ししますね。道具のレンタルはどうします?」
「お願いします。今日明日の2日間で。」
「はい、どうぞ。ツルハシです。もし掘っててツルハシが壊れたら追加300Gで交換しますので。」
「わかりました。ありがとうございまーす。」
ツルハシと採掘用のマジックバッグをもらってレンタル料を払ってギルドを出た。
ツルハシはちょっと重いので俺のマジックバッグに入れた。
それから町の飲食店でサンドイッチをパパッと食べて、東側出入り口に向かった。
よーし!金を掘りまくるぞー!!
『ははは!面白そうだからそのツルハシに「衝撃激増効果」付けてやろうか?』
「やめてください。」




