68話 天才鉱夫誕生
「あー・・・最高30万のあの記録かあ。あれは無理だと思った方がいいぞ。」
「ええーーっ!?」
町の東側から出たらすぐ近くに案内の看板があって、その看板があったところから東北東の森へのびる細い道の先だと書いていたのでその通りに歩いたら15分ほどで鉱山の出入り口に着いた。
鉱山の出入り口にはガチガチマッチョの強面の見張りのおっさんがいて、ギルドで受けて来たとツルハシと採掘用のマジックバッグを見せたら中に入れてくれた。
鉱山はイメージ通りの洞窟で、崩落防止の木枠で穴は補強されている。
入ってすぐに「ご自由にどうぞ」という貼り紙とランタンが山積みに置いてあった。
一応1メートル間隔でランタンは吊り下げられて明るかったが、手元で照らして金を確認するためのやつかな?と思って1つ持っとくことにして奥に進み、適当なところで掘ってみているところだ。
そして鉱山にはすでに何人かの鉱夫かハンターかわからん男女が金を掘っていて、その中でもツナギ姿のおっさんの近くを掘ってるうちになんとなく会話を始めて、俺はとりあえず最高記録を目標に金を掘ってると話したら上のことを言われたのだ。
「昔は記録のあれくらい採れてたがな、それも何十年前のことだ。今では1日中掘って10万採れりゃあ十分ってとこだなあ。」
「えええっ!?・・・そんなあ・・・!」
「原因は昔からものすごい勢いで金を掘っちまったせいだ。金は純金でもまざりものでも高価で売れるし、何より紙幣と硬貨に使われているだろ?全世界的に人口増加や国の発展で紙幣と硬貨は昔に比べて増えたし、今作ってるところにいくら売っても足らねえくらいなんだと。だから一時期ものすごい人が殺到して、順番待ちをしながら掘ってたこともあったんだ。だがもう恐らくここの金はほとんど採ったんじゃねえかと思う。それでも一攫千金を求めて掘っちまうんだがなあ。」
おっさんはそう言ってがははと乾いた笑いをした。
「それにあんまり出なくなってからは掘る奴も激減してな。土埃で体や服は汚れるわ崩落の危険と常に隣り合わせだわで、辞めてった奴も多いんだ。ずーっと岩とにらめっこするより、貿易関係の仕事をやったら色んな国に行けたりするからそっちの方が面白そうと思われちまうんだよ。」
なんだか寂しい話を聞いてしまったが、正直俺はそれどころじゃない。
くそー!な、なんとか金脈を見つけ出して見せる!
やけくそ気味でそんなことを思いながら適当にガンガン掘ってみるが、岩ばかり。
因みに昔は爆発させて周りの岩を砕いてその砕いた岩の欠片の中に金の粒々が入ってたら、更に細かくツルハシとかで砕いてザルみたいなので水につけて流してみたら金の粒だけ重さでザルの底に残るって方法をやってたらしい。
これは砂金の取り方と同じだな。
でも現在は爆発は危ないってことでツルハシで岩壁をコツコツ砕いて岩の欠片の中に金の粒々があったら採掘用のマジックバッグに入れたらいいみたい。
岩の欠片から金を取り出すのはギルドが魔法でできるようになったからなんだってさ。
作業はだいぶ楽らしいけど、慣れないツルハシはちょっと重いから肩や腕にくるししゃがんでるから腰も痛いし、掘る度に手も痺れる。
俺の体力・筋力のなさってのも原因なんだけど、その割りに掘っても掘ってもほとんど出ない。
とりあえず夕方までがむしゃらに掘ってみたけど、純金の岩の欠片が1個にちっちゃい粒々の岩の欠片4個くらいしか採れなかった。
多分1万Gくらいにしかならないだろう。
や、ヤバい・・・!!
ヘトヘトで宿屋に帰ると、宿屋の前でばったり双子に遭遇した。
「「!?ど、どうしたの!?イオリ!そんな汚れて!?」」
俺は全身見事なまでに土埃で汚れていた。
「ちょっと鉱夫になっただけだよ。」
「「こうふ?」」
双子は首を傾げていたが疲れていたのでさっさと風呂場に直行した。
宿屋はだいたい沐浴部屋なんだが、ここの宿屋は珍しく風呂場があった。
なんでも他国の人が泊まったりした時に潮風を浴びて体がベタベタだから風呂に入りたいって人が多いらしいから風呂場を作ったらしい。
やっぱり日本人の俺としても風呂は入りたいよね。
そして夜。
明日も1日鉱夫をするのだが、今日と同じように壁を掘ってても埒が明かないなと部屋で1人で考えた。
金脈さえ見つけられたらどうにかなるとは思うんだけどなあ。
金脈・・・。
金・・・。
うーん・・・、あっ!
俺にしかできない方法で金脈見つける方法あるわ。
そして・・・アレをしたら・・・!
よし!そうと決まれば明日朝から行動しよう!
スヤア・・・。
そして翌日。
またまた朝は精霊に叩き起こしてもらった。
「むにゃ・・・。おはよー。」
『『おはようイオリ。』』
今日の俺の担当?は火の精霊に土の精霊だった。
「あ、ふたりともちょうどよかった。頼みたいことがあってさ。」
『ん?なんだ?』
俺はふたりにあることを話して、ふたりとも頼み事を快諾してもらった。
そして皆で朝食を食べてそそくさと俺は宿屋を出た。
皆それぞれお土産買うとか昨日に引き続き思い思いに過ごすようだ。
俺はお土産は夕方に買いにいこうと思いながら町の東側から外に出た。
鉱山に続く細い道をしばらく歩いて、適当に道を外れて森の奥へと移動した。
そして誰もいないであろうところまで来ると、立ち止まって一応辺りを見回した。
よし、誰もいないな。
俺は喉に魔力を溜めて、ある精霊を「呼んだ」。
『この近くにいる金属の精霊、ちょっと来てくれない?』
しばらくして遠くからひょっこり精霊がやって来た。
「視て」みると、黒い石の回りを銀色の粘液が包み込むように動いていて、その粘液に眠そうな目がついている。
『はじめましてイオリ。呼んでくれてありがとう。私は金属の精霊だ。』
なんか粘液なのに胸を張って偉そうにしゃべってる声だ。
「よ、よろしく金属の精霊。金属の精霊に頼みたいことがあって呼んだんだ。」
『ふふん、なんだい?なんでも言ってくれたまえ。』
「魔力いくらでもあげるからさ、この近くのでっかい金脈を見つけてくれないかな?」
そうでーーす!
俺は金属の精霊に金脈を探してもらおうと考えたのでーす!
俺にしかできないけど、これぞ他力本願もいいところだ!
でも和食を手に入れるためだ。背に腹は変えられないよね!
そして金属の精霊に事情を説明した。
『なるほど!金を手に入れるために金を掘ると。喜んで協力しよう。ちょっと待っていてくれ。』
そう言うと金属の精霊は森の中を飛び始めた。
ものすごくめちゃくちゃな動きで地面を見ながら飛び回り、それが1~2分ほどすると、俺に近づいてきた。
『あったぞイオリ。案内しよう!』
「お、おう。ありがとう。」
なんだか尊大な案内だなあ。
森の奥に飛んでったので追いかけてしばらく進むと拓けた丘のようなところに出た。
その丘の中腹辺りの地面を粘液の矢印で指していた。
『この真下10メートルほどのところにでっかい金脈があるぞ!』
「ホントか!ありがとう!んじゃ土の精霊。お願いできる?」
『・・・うむ。』
ズズズ・・・という音がして、金属の精霊が指した地面に直径20センチほどの穴があいた。
『・・・10メートル下まで穴をあけたぞ。』
「ありがとー!んで、火の精霊。この穴にアレ頼める?」
『ああ!お安い御用さ。イオリは危ないから離れたところに避難しな。』
「イエッサー!」
俺は急いで丘から離れて見ていたなかで1番でっかい木の陰に隠れた。
「オッケーでーす!」
俺はそう火の精霊に叫んで体をできるだけ丸くして両手で耳を塞いだ。
その瞬間。
ドオオオォォォンッッ!!
丘は半分吹っ飛んで辺りは爆風と音と土の塊に襲われた。
ものすごい勢いで土の塊が俺の横をビュンビュン飛んでって、木は衝撃にバキバキいっていたがなんとか折れることもなく俺は少し耳がキーンとしながらも無傷だった。
「おー、火の精霊ありがとう。すげえ衝撃だったなあ。」
『10メートルを吹っ飛ばすならこれくらい火力がねえとな。』
そう。俺は昔の金脈の取り方だった爆破を取り入れて使った。
ただ、地中10メートルをいきなり爆破はできないので、先に土の精霊に穴を開けてもらって酸素を取り込んで大規模な爆破をやってもらったのだ。
でかい木から顔を覗かせて様子を見たら、あーらものすごい大穴!
と、足元に転がっている岩の欠片を何気なく拾ってみたら・・・うわあ!ものすごいキンキラキン!
半分以上金だ!やった!
よく見たらそこらじゅうに転がってる岩の欠片がほとんどキンキラキンだ!
俺は目につく欠片を採掘用のマジックバッグに放り込みながら大穴へと向かった。
すげー!!見渡す限りキンキラキンの岩だらけ!
土の精霊に頼んで大穴の横に下に行ける土の階段を作ってもらって下に降りて、ツルハシで特に金が多いところを掘って掘って採掘用のマジックバッグに入れていった。
1時間ほど掘って入れてを繰り返してたら・・・おや?
採掘用マジックバッグがパンパンになった。
しょうがない。
まだまだキンキラキンの岩だらけだけど、これがいっぱいになるほどなら、俺の目指してる30万以上いってるだろうし。
・・・うん?
なんか穴の上が騒がしい?
階段で上に登ってみると、丘の下で昨日の鉱山にいたおっさんたちや見張りのガチマッチョがいて騒ぎながら周りに落ちている岩の欠片を拾っていた。
「おれ?おっさん?」
「あ!お、お、おまえ!」
俺を見つけるとおっさんは慌てて近づいてきた。
「こりゃどういうことだ!?鉱山で掘ってたらものすごい地響きがして出てみたら見張りは爆発音がしたって大騒ぎしてたから爆発音がした方向に来てみたら、こんな大穴はあいてるわ金の入った岩の欠片がゴロゴロ転がってるわで・・・。」
どうやら鉱山にまで爆発音と衝撃が伝わったようだ。
聞いたらここは昨日の鉱山から北に20分しか離れてなかったみたいだ。
そりゃ爆発音と衝撃いくわな。そりゃあごめんね。
穴を覗きこんだおっさんは目を剥いて驚いた。
「なんじゃこりゃ!?金脈じゃねえか!?お前どうやって見つけたんだ!?」
「えっ?・・・あー、なんとなく勘で。」
さすがに「精霊に協力してもらいました」なんて言えない。
「どうやってこんな爆発させたんだ?」
「ま、魔法で。土魔法で地中深くまで穴あけて、穴の底を火魔法で爆破させたんだよ。その方が採りやすいかなって。」
おっさんは俺の説明を聞いてワナワナしだした。
「て、てんさいだ・・・。」
「え?」
「天才が現れたーーーー!!」
天才鉱夫誕生の瞬間である。
本来は砂金が採れる川の上流を辿っていくと金脈が見つかるらしいです。




