58話 それからしばらく
もうひとつの小説をネタを考えるためにしばらくお休みすることにしました。
これでこっちの小説にしばらくは集中できます。
新章だし、これから様々な出会いもありますから頑張って書いていこうと思っております。
面白いと思っていただけるとうれしいです。
グランたちに俺のアレコレがバレてから1週間くらいして。
俺の生活に変化があった。
「おはよー、イオリ。朝だよー。」
ロックが俺の部屋のドアを叩く音で目が覚めた。
相変わらず朝が弱くてベッドでゴゾゴゾしていると、精霊に頭をペシペシ叩いてきた。
『ほらイオリ!起きろ!』
「むにゃ~・・・。わかったよう・・・ふあぁっ」
俺は欠伸しながら目に魔力を集中させた。
そして精霊の声のした方を「視た」。
「おはよー、色の精霊と雷の精霊。よろしくな。」
『へへっ!よろしくな!』
『はじめまして、よろしくね。』
雷の精霊は前にネフィーの馬車を助けた時にいたな。
色の精霊は初めましてだ。
白い涙型の顔と体に足はなく、両手の先がパレットになっていてパレットの上に色んな色の絵の具のようなものがのっているという姿だ。
俺が「視る」のを解いて、のそのそ起きてよろけながらドアを開けると、ロックが明るく挨拶してきた。
「おはよーイオリ!相変わらず朝弱いなあ。」
「おはようロック。しょうがないんだよ体質だもん。」
「ローエ姉ちゃんの朝ごはん、早くしないと冷めるよ。」
ロックはそう言って俺の腕を掴んで引っ張って、広間まで移動した。
「おはようイオリ。相変わらず朝弱いのね。はい、朝ごはん。」
ローエはにこやかにそう言って、広間のテーブルにパンとスープとサラダを置いてくれた。
「おはようローエ。いただきまーす。」
俺はさっさと座って、食べ始めた。
うーん、ローエの作る朝飯はいつもうまいなあ。
「な!な!今日はなんの精霊がいるんだ!?」
ロックは俺の隣の席に座ってキラキラした目で聞いてきた。
「んー、色の精霊と雷の精霊がいるよ。」
「雷!かっけー!」
男の子は素直だね。
色の精霊をガン無視して雷の精霊に興奮するなんてね。
色の精霊に失礼だよ君。
『僕だってかっけーよ!』
ほら、色の精霊が言ってるぞ。
とかなんとか言っておりますが。
そうです!
俺は孤児院いまーす。
泊まったのかって?
違う違う。
実は、孤児院に部屋を借りて住むことにしたのでーす!
まあ、こうなったのは話の流れがありましてね。
バレた後もしばらく宿屋で部屋を取ってハンターやってたが、孤児院に来る頻度が格段に上がった。
というのも、孤児院では精霊と気楽にしゃべれるし異世界から来た事情を知ってくれてるというので、この孤児院にいる間は俺はとても安心して過ごすことができるようになった。
もしかしたら人間の誰にも言ってなかったから、バレたらいけないと無意識に気をはってたところもあったのかもしれない。
それが孤児院ではしなくてよくなって、俺は数日に1日は孤児院に通うようになった。
ハンターのレベルを合格したアレコレで勧誘も宿屋に来るほどになっていたからしんどくなったのもある。
ここならハンターたちは子供たちに気を使ってわざわざ来ることはないし、来たとしてもグランがいるときはグランが問答無用で追っ払ってくれるし。
グラン、門番扱いしてごめんね。
子供たちにはバレた数日後にグランたちに言った内容をそのまま話した。
さすが子供たちというか、3人は「イオリすごい!」とすぐなって俺の話をすぐに信じてくれた。
精霊が日替わりで俺についてる話もしていたので、さっきロックは今日の俺の担当?の精霊のことを聞いてきたという訳。
そうしてちょくちょくここに通っているうちに誰ともなく、「イオリが泊まってた部屋が空いてるからそこに住んじゃえば?」となって、月いくらか払って賃貸してもらうことになった。
とりあえず宿屋の相場が1泊2000Gだったから、2000G×一月が30日=60000Gを払うこととなってハンターのレベルが上がって報酬の高い依頼を受けられるようになったら金額を上げていくということになった。
ローエは悪いからと無料でと言ってくれたが、そうしたら俺が悪いし経営がヤバイのに部屋を貸してくれるのだから、経営に協力させてくれと説得したのだ。
グランも俺の意見に賛成してくれて一緒に説得してローエが折れてくれて、早速一月分をその場で支払った。
おかげで蓄えもあんまりなくなってしまった。
あの上級薬草が20万で売れて、それからハンターしながらちょっとずつ使ったのでもう7万くらいしかないや。
早いところ報酬の高い依頼をやりたいな。
「おはよう、皆。」
俺がモソモソ食べていると玄関側のドアを開けて広間にアルが入ってきた。
「おっ、おはよー、アル。」
「おはよう!アル兄ちゃん!」
「おはようございます、アル様。」
俺、ロック、キッチンから顔をのぞかせたローエの順で挨拶した。
っていうか、子供たちはグラン・ローエ・アルには「兄ちゃん姉ちゃん」つけるのに、俺は呼び捨てじゃね?
後で聞いたら「孤児院に来たのが自分たちより後だからイオリは後輩」なんだと!一応俺って年上だよ?
「今日も色々持ってきたよ。」
アルはそう言って片手で持っていた袋をローエに渡した。
「いつもありがとうございます。」
ローエはすまなさそうに受け取っていた。
「ん?それなに?」
「古着よ。アル様はお菓子や寄付もしてくださるけど、こうやって古着もくれるの。子供はすぐに汚したりするから助かるのよ。」
ふうん、確かにロックとインカはいつも原っぱを駆けずり回って遊んでるもんな。
因みに来客時は玄関をノックして玄関先で応対するのが一般的だが、アルは週に1回は来るし昔から来ているということで、ノックなしでズカズカ孤児院に入って来ても問題ないとなっている。
そして俺も町の宿屋に泊まって週に1回くらいここに遊びに来る時はズカズカ入ってきてオーケーだったのでそうしていた。
「ロック、これ3人で分けて食べな。」
アルはニコニコしながら懐から飴をいくつか取り出してロックに渡していた。
「わっ!やったー!!」
ロックは両手で大事そうにもらうと外に飛んでいった。
どうやら外の原っぱにインカとアンはいるようだ。
そうしているうちに俺は食べ終わって、キッチンに食器を持っていって広間のテーブルにまた戻って座った。
アルは俺の向かいの席に座った。
「イオリ、今日はハンターするのかい?」
「昨日やったから今日は休みにするつもり。」
「だったら、ちょうどよかった。君に聞きたいことがあってね。」
「聞きたいこと?」
なんだろう?やっぱり俺のいた世界のことかな?
「精霊のことを詳しく聞きたいんだ。個人的趣味として。」
ガクッ、なんだ・・・精霊のことかよ。
『この人間、俺たちに興味持ってるみたいだぞ!』
『うれしいね。』
精霊たちは面白そうにしてる感覚がする。
「個人的趣味?精霊のこと調べてるのか?」
「実は魔法のことを前から調べていてね。」
アルによると、魔法は大昔からあってこの世界の人たちはいつの間にか普通に使えていたんだそうだが、意外に細かいメカニズムはわかってないらしい。
アルはそこに惹かれて小さな頃から魔法の本を読み漁ったりしていたそうで、今でも論文などを読んで自分なりに調べているんだそうだ。
「んでまあ、魔法といえば精霊、というくらい魔法と繋がりがある精霊のことも一緒に調べててね。難しい魔法を使わないと精霊と話したり見たりすることができないこともあって、精霊のことはなかなか解明されてないことだらけなんだ。だからイオリに聞いてみたくてね。」
ふうん、魔法や精霊のことで謎なんてあるんだ。
・・・そういえば、図書館で見た精霊の本は内容がアレだったしイメージ絵も全然違ってたもんな。
「わかった。わかんないことは精霊に聞くし、なんでも聞いて。」
「ありがとう。早速だけど今、君の側にいるのは何の精霊?」
「色の精霊と雷の精霊だよ。」
「へえ!どんな姿をしているんだい?雷の精霊は確か・・・雷を纏った勇ましい大男で、色の精霊はパレットと筆を持った美少年とされているけど。」
雷を纏った勇ましい大男!?
パレットと筆を持った美少年!?
やっぱりアレか!
あの精霊の本の絵を見て精霊ってこんな姿してんのかって信じたクチか!?
・・・なんでも聞いてと言ってしまったからにはしょうがない。
アルには申し訳ないけど、現実を目の当たりにしていただこう。
「アル、そのイメージは全然違うよ。ええと・・・」
キョロキョロ・・・あ、ちょうどいいところに子供たちのお絵かきセットが。
広間の片隅にあった子供たちの道具箱からお絵かき帳と鉛筆っぽいペンがはみ出ていたのでそれを取って、お絵かき帳に精霊の絵を描いた。
俺って小さな頃から漫画読んでたおかげで絵はそれなりにうまいんだよなー。
・・・よし、描けた。
「これ、雷の精霊ね。んでこっちが色の精霊。」
俺は描いた絵を指差してアルに見せた。
『うわあ!僕たちの姿うまく描けてる!』
『おお、うめえな!イオリ。』
よせやい、褒めたって魔力しか出ねえよ?
「えっ・・・・・・。」
あ、長年の期待や理想がガラガラと音をたてて崩れていく瞬間が見えた。




